映画『顔』15年もの逃走劇で有名な殺人犯・福田和子の実話を基に、阪本順治が描いた稀有な人生
2021年4月30日 更新

映画『顔』15年もの逃走劇で有名な殺人犯・福田和子の実話を基に、阪本順治が描いた稀有な人生

阪本順治監督、主演・藤山直美で描いた映画は『顔』。約15年にも及ぶ逃走劇で有名な福田和子の実話を基にしている。「日本アカデミー賞」や「2000年度の日本映画ベスト・テン1位」を受賞している。

33,359 view
1948年1月2日生まれ。愛媛県松山市出身。

幼くして両親が離婚、母親に引き取られ愛媛県川之江市(現:四国中央市)に移る。母親は自宅で売春宿を経営していた。
愛媛県内の高校に入学するものの交際中の同級生が事故死し、自暴自棄になり3年生の1学期に退学。
福田和子著「涙の谷―私の逃亡、十四年と十一カ月十日」

福田和子著「涙の谷―私の逃亡、十四年と十一カ月十日」

原著1999年8月。

【被害者となった福田和子】

18歳の時に同棲していた男性と高松市の国税局長の家に強盗に入った罪で松山刑務所に服役した。その服役中に衝撃的な事件に被害者として巻き込まれてしまう。

1966年、当時18歳だった福田は、第1次松山抗争で逮捕された郷田会の関係者が看守を買収し、女性受刑者を強姦するという松山刑務所事件が起き、その事件で被害にあってしまう。
さらに、福田は移監された高松刑務所でも同様の被害に遭っているが、いずれも被害届を出す事が認められなかったため、公訴時効により事件の責任追及は行われなかった。
福田和子著「涙の谷」

福田和子著「涙の谷」

原著2002年7月。
1999年刊行書の文庫化。印税の800万円は遺族に寄付されている。
出所後、キャバレーのホステスとして働いていた1982年、松山市内で福田の同僚だったホステス(当時31歳)の首を絞めて殺害する松山ホステス殺害事件を起こし、逃亡する(後に逮捕された夫は死体遺棄罪のみで有罪となった)。

長期間逃亡した動機は、以前に服役した刑務所で二度も強姦事件の被害者となった事である。

逃亡中は幾度となく偽名を使ったり美容整形を繰り返したりするなどして全国のキャバレーを転々とする生活をしており、美容整形をしていたことが判明した際には「7つの顔を持つ女」と呼ばれた。

【顔は変えられても、声は変えられなかった】

愛媛県警察が懸賞金をかけた捜査を行い、公訴時効が成立する21日前である1997年7月29日、福井市内で逮捕された。逃亡生活は5,459日間にもおよんだ。
逮捕のきっかけは大々的にワイドショーなどで報道され、社会的関心が高まった事にあった。

事実、逮捕につながる情報を提供したのは、顔なじみのおでん屋の店長からで、常連客を含め、テレビのワイドショーなどで流れる福田の肉声とそっくりであった事から通報に至っている。

逮捕後、松山東警察署で取調べを受けた後の1997年8月18日に殺人罪で起訴された。公訴時効成立まで11時間前の起訴であった。
パンフレット

パンフレット

その後、無期懲役の刑が確定し、和歌山県和歌山市の和歌山刑務所に収監された。
2005年2月に刑務所内の工場の作業中に、くも膜下出血のため緊急入院。意識の回復のないまま3月10日、入院先の和歌山市内の病院にて死去。57歳没。

強姦事件 その後

刑務所内強姦事件は第52回国会法務委員会にも取り上げられる大スキャンダルとなったが、刑事事件として立件されなかった。
また、福田を強姦した看守は事件直後自殺したため、仮に被害届提出があっても、被疑者死亡により不起訴となるケースであった。

15年間に及ぶ逃走劇

逮捕までの15年近く、日本各地を転々としていた福田。

石川県根上町(現在は市町村合併により能美市)では、和菓子屋の後妻(入籍はしておらず、事実上の内縁関係)になった事もある。その店には、家が近所で当時小学生であった、後のプロ野球、ゴジラ・松井も客としてよく菓子を買いに来ており、松井は福田逮捕後のインタビューで「きれいで愛想のいい奥さんだった」と語っている。

整形逃亡5459日・・福田和子の元同僚ホステスが告白!

金沢市のスナックで働いていた福田はその店の客だった和菓子屋の主人に見初められて同棲するようになり、店も手伝うようになる。福田は非常によく働き、接客も得意だったことから、店はたちまち評判となり、新しく改装するほどの繁盛店となった。

和菓子屋の主人は福田をたいそう気に入り、正式に結婚を申し込むが、福田は正体の露見を恐れ、結婚を渋る。

女性犯罪史 福田和子の秘密 やりすぎ都市伝説 友近

あまりに結婚を渋る福田の態度に不審を抱いた親戚が石川県警察に通報し、警察は福田の逮捕に向かう。しかし、当日、近所の葬式の手伝いに出掛けていた福田は警察の行動を素早く察知し、とっさの判断で近くにあった自転車に乗り逃走。これにより逮捕は失敗する。

この時、警察は福田が整形手術を行っていた事を初めて知り、この事実は当時の週刊誌でも取り上げられている。

福田和子を演じた女優

大竹しのぶ - 『実録 福田和子』 (フジテレビ・共同テレビ制作、2002年8月2日)
藤澤オリエ - 『ザ!世界仰天ニュース』(日本テレビ制作、2009年12月30日)
河合美智子 - 『日曜ビッグバラエティ ニッポン事件簿~犯人はなぜ逃げるのか~』 (テレビ東京制作、2012年3月18日)
寺島しのぶ - 実録ドラマスペシャル 女の犯罪ミステリー『福田和子 整形逃亡15年』(テレビ朝日系、2016年3月17日)
44 件

思い出を語ろう

     
  • 記事コメント
  • Facebookでコメント
  • コメントはまだありません

    コメントを書く
    ※投稿の受け付けから公開までお時間を頂く場合があります。

あなたにおすすめ

関連する記事こんな記事も人気です♪

ジョンベネだけじゃない!90年代~2000年に発生した平成の「未解決事件」まとめ!!

ジョンベネだけじゃない!90年代~2000年に発生した平成の「未解決事件」まとめ!!

社会を震撼させる大事件の数々。その大半は警察の尽力により解決するのですが、中には未解決で公訴時効を迎えてしまうものもあります。この記事では、90年代に発生した未解決事件をいくつかご紹介したいと思います。
となりきんじょ | 20,614 view
表現規制、市民団体の抗議、漫画家自身の不祥事…日本の漫画にまつわる事件を特集した『日本マンガ事件史』が発売決定!!

表現規制、市民団体の抗議、漫画家自身の不祥事…日本の漫画にまつわる事件を特集した『日本マンガ事件史』が発売決定!!

鉄人社より、日本の漫画界において発生した様々な「事件」について特集した書籍『日本マンガ事件史』の発売が決定しました。
隣人速報 | 15,046 view
少年マガジン「MMR」“キバヤシ”のモデル・樹林伸の関わった名作を人類滅亡の前に振り返る!

少年マガジン「MMR」“キバヤシ”のモデル・樹林伸の関わった名作を人類滅亡の前に振り返る!

90年代に人気を博したオカルト漫画「MMR マガジンミステリー調査班」の主人公・キバヤシのモデルとなった樹林伸について特集したいと思います。
市原悦子戦慄!?事件現場にありそうな「鈍器のようなもの」がカプセルトイになって登場!!

市原悦子戦慄!?事件現場にありそうな「鈍器のようなもの」がカプセルトイになって登場!!

株式会社ブシロードクリエイティブが展開するオリジナルカプセルトイブランド『 TAMA‐KYU(たまきゅう)』より、「鈍器のようなもの」が発売されることが明らかとなりました。
隣人速報 | 1,960 view
キツネ目の男はいなかった!?事件関係者の証言を集めた『昭和10大ミステリー新証言録』が発売決定!!

キツネ目の男はいなかった!?事件関係者の証言を集めた『昭和10大ミステリー新証言録』が発売決定!!

宝島社より、グリコ・森永事件をはじめとした昭和を代表する重大事件を特集した書籍『キツネ目の男はいなかった 昭和10大ミステリー新証言録』の発売が決定しました。
隣人速報 | 6,192 view

この記事のキーワード

カテゴリ一覧・年代別に探す

あの頃ナウ あなたの「あの頃」を簡単検索!!「生まれた年」「検索したい年齢」を選択するだけ!
リクエスト