混迷の時代を生きる私たちが観るべき “必須科目” 「機動戦士ガンダム」。その「ガンダム」シリーズの最高傑作が『めぐりあい宇宙(そら)編』なのだ!!
2017年1月23日 更新

混迷の時代を生きる私たちが観るべき “必須科目” 「機動戦士ガンダム」。その「ガンダム」シリーズの最高傑作が『めぐりあい宇宙(そら)編』なのだ!!

『めぐりあい宇宙(そら)編』は、アニメ史上、もっともリアルに人間と戦争を描いた「機動戦士ガンダム」の劇場版完結編である。その大きなテーマを丁寧に描きつつも “人の革新” について問う本作は、「ガンダム」シリーズの最高傑作といって過言ではない。人間の愚かさも美しさも何もかもを描いてみせた「ガンダム」はここに完結をみるのだ!

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続いて、『めぐりあい宇宙(そら)編」のオープニングを!

前のページの『哀戦士編』の特報映像と、このオープニングで「ガンダム」という物語の全体像はなんとなくつかめるんではないでしょうか、はい。

▼名シーンレビュー<2>「やはり大佐は宇宙(そら)のほうがお似合いですな」

1作目から観ているファンなら、このオープニングの後のドレン(昔の部下)の登場にニヤリとするかもしれない。シャア(昔の上司)とのやりとりがまたいい。そこらへんの会社の上司と部下のやりとりさながらだ。

「おー、ご無沙汰であります、大佐」(ご無沙汰なんて使うアニメがあるか?)
「元気そうだな、ドレン」(シャアの、このさわやかな感じもいい)
「また貴様の手を借りたいのだ」(この言い回しもニクイ。手を借りたいと言ったのは、泣く子も黙る“赤い彗星のシャア ”だ。シャアが昔の部下にそういう言い回しを使う。シャアの人身掌握術を見るようだ。なまじ、現場での実力があるタイプは部下の扱いがマズい。それがシャアは人を操る術も知っている。それが垣間見れるシーンだ)

「追いつけますか?」(軽口挟み~の)
「私を誰だと思っているんだ?ドレン」(笑いながら、俺さま節)
「申し訳ありません、大佐」(笑いながら~の)
「やはり大佐は宇宙(そら)のほうがお似合いですな」
(お世辞も忘れない、まさに良い部下)
「お世辞か」(シャア様のツッコミ)
「わっはっはっはっはっはっは」(ここで会話終了!)

このリアルさ、小気味良さがいい。ホント、いろんな意味で感心します。
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シャア・アズナブルの部下だったドレンは、いまやキャメル艦隊を率いる。そこにシャアから協力要請が来るという場面なのだ。
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「やはり大佐は宇宙(そら)のほうがお似合いですな」(ドレンはお世辞も忘れない)
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ただ、この登場のすぐあと、ドレン率いるキャメル艦隊は、完全に覚醒しつつあるアムロの乗るガンダムと、ホワイトベースにせん滅される。個性派ドレンはあっけなく宇宙の藻屑になってしまうのだ。ああ、ドレン。

さらに、ここで『めぐりあい宇宙(そら)編』の劇場予告編も!

これでだ~いぶ、わかった気にはなります。同時にもっと観たい気持ちになります。昔観た人ももう一度観たくなります。

「君は生きのびることができるか」
こちらのラストのひと言はこれ!
こっちも いいですねえ。

ちなみに冒頭で、ガンダムの攻撃で、「ウワー」と叫んでいるジオンの将校がドレンです。まったくもって寂しい最後です。

▼名シーンレビュー<3>「宇宙の片隅で連邦とジオンが戦い続けるのです」

このシーンは、まさに予言的ですらあった。
公開は1982年だが、いま観るとその数年後の湾岸戦争のテレビ中継を想起させるものがある。

中立コロニーであるサイド6を飛び立ったホワイトベースとジオンの戦いをテレビ局が中継するシーン。サイド6の人々は街のあちこちでそれを目にする。

「これはドラマではありません。実戦です。宇宙の片隅で連邦とジオンが戦い続けるのです!」

1991年、私たちはアメリカのミサイルと
イラクの高射砲が飛び交う光景をテレビで見ていた。
暗い中東の空を光の筋が駆け抜けていく。
そこにあったのは確実に本物の戦争だった。
でも、私たちにはそれがどうもリアルに感じられなかった。
遠く離れた地で、中東の片隅で繰り広げられる戦争を傍観者として見ていたのだ。
まるでゲームを見ているような感覚で。

「これは本当の戦争です。この事実を目撃した我々は戦火に巻き込まれないために何を…考えるべきでしょう」

そう、私たちは何を考えるべきなのだろう。
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ちなみに、こちらはそのテレビ中継をに食い入るように見ている酸素欠乏症になってしまったアムロの父、ティム・レイ。自分の開発した時代遅れの装置によってガンダムが圧倒的勝利をおさめたと思い込んで歓喜するあまり、2階の階段を踏み外し1階に落ちてしまう。おそらく、生きてはいないだろうと誰もが思ったシーン。ここにもなにやら言いようもない寂しさがある。

熾烈を極める最後の戦場ア・バオア・クーで私たちの見たものは?

はじめにも触れたが、しっかりと人間と戦争が描かれている。
世界の歴史をなぞるように。

権力闘争の末に身内が殺し合う権力者。
母親や恋人の名前を叫びながら、死んでいく兵士。
戦場(宇宙空間)では爆発音が鳴り響き、
いたるところに死体が漂っている。

この『めぐりあい宇宙(そら)編』の
最後の戦場ア・バオア・クーでの戦いはまさに熾烈を極めた。
ホワイトベースは両方のエンジンを失って、ア・バオア・クーに沈む。
ガンダムは片手と顔を失い、シャアへ最後の一撃を放つ。

最終的には地球連邦軍が勝利する。
だが、誰が勝者で誰が敗者だというのは関係がないように思える。
最後にそこにあるのは、死と沈黙でしかない。
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四方八方からの攻撃。
生き延びるためにはただ戦うのみだ。
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父デギンを殺した息子ギレンを
その妹キシリアが撃つ。

そのキシリアはジオンの創始者ジオン・ズム・ダイクンの息子である
シャア・アズナブルあらためキャスバル・レム・ダイクンに殺されることになる。

哀れなジオンの権力者ザビ家の末路である。
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かつて主人公の乗るマシンが
ここまで朽ちていくシーンがあっただろうか。
ガンダムはこのあとシャアのジオングの攻撃で、
右手も右足も失い、崩れ落ちていく。

▼名シーンレビュー<4>「ニュータイプの独善的な世づくりをすることはいけないわ」

シャアとセイラがテキサスコロニーで出会うシーン。
その会話は子どもじゃ、いやいやアホな中高生でも、なかなか理解しずらい内容だ。

「私のたちを育ててくれたジンバ・ラルはデギン・ザビ公王が父を暗殺したと言い続けていた。父の死因となった心臓発作はデギンが仕掛けたのは事実らしい。それを悟られぬためにデギンは公国性を敷いたとき、父の名のジオンを国の名に使ったわけだ。宇宙移民者の独立主権を唱えた父は、宇宙の民をニュータイプのエリートだとしたところにデギンのつけ込むスキがあったのだな。宇宙移民者はエリートであるから地球に従う必要がない、という論法にすり替えられたわけだ」(公国性? 独立主権? 論法のすり替え? いやいや、ホント、子どもの映画ではないですな)
「けど、この戦争で、いえ、この以前から人の革新は始まっていると思えるわ」
「それがわかる人とわからぬ人がいるのだよ。だからオールドタイプはせん滅するのだ」
「でも、オールドタイプがニュータイプを生む土壌になってるのではなくて。古きもののすべてが悪しきものではないでしょう」(土壌ってドジョウ?)
「それはわかっている。しかしな、アルテイシア。体制に取り込まれているニュータイプが私の敵になっているのは面白くない。それは私のザビ家打倒を阻むものとなる」

とまあ、よくできたお話しです。というかよくできたセリフ。
この大きな物語の在り様が多くの世代をガンダムに引き付けた理由でもあるのだろう。

「兄さんは一人で何かをやろうとしているようだけど、ニュータイプひとりの独善的な世づくりをすることはいけないわ」(独善的? 世づくり?)
「私はそんなにうぬぼれていない。ニュータイプがニュータイプとして生まれ出る道を作りたいだけだ」(生まれ出る道?)

まったく・・・子どもの知らない言葉を連呼してますなあ。
子どもの観るものじゃあ、ありません、ホント。
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