”銀幕の女王”と呼ばれたエリザベス・テイラーのよもやま話
2018年7月24日 更新

”銀幕の女王”と呼ばれたエリザベス・テイラーのよもやま話

1940年代後半から50・60年代はハリウッド映画の黄金期でもあり、この時代の銀幕を飾った映画女優達は、星の数ほどあれど、何人かのレジェンド達が君臨していた。クールビューティからモナコ公妃になったグレース・ケリー、実生活も権力スキャンダルの衝撃があったセックスシンボルのマリリン・モンロー、美人ではあるが個性的な顔立ちでファニーフェイスと呼ばれたオードリー・ヘップバーン、ヨーロッパでも活躍が著しく、一時は女優生命を擲ってまで愛を求めたイングリッド・バーグマン、線の細さがどこか親しみや共感を呼びやすい美意識の象徴となったエリザベス・テイラー等等、他人には真似のできない魅力溢れる才能の持ち主達が群雄割拠していた。

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老けメイクにも挑戦して、大きな転機となった名作『ジャイアンツ Giant』(1956年)

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エリザベスにとって、大きな転機となった名作『ジャイアンツ Giant』(1956年)では、老けメイクにも挑戦してレズリー・ベネディクトという女の一生を力演した。テキサスの大牧場主の元に嫁いできた東部出身の女性レズリーと、その夫ビックの織り成す愛憎交錯する夫婦間の葛藤、レズリーに憧れる若き牧童ジェットを交えた複雑な三角関係を描き、やがて彼ら夫婦の間に生まれた子供が成長して巣立ち、孫の世代の世界となるまで、映画は約30年の長きにわたるテキサスのある一家の年代記を丹念に紐解いていく。

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嫁いだ美女エリザベス・テイラーにジェームス・ディーンが切なく片思い。そして長い長い30年。でも前半口論から始まるロック・ハドソンとエリザベスとの馴れ初めがいい。ほとんど映画の流れを語っているからね。前半は軽快だが、後半子供たちが成長するあたりからペースダウン。大河ドラマの冗長さはこの際我慢して見よう。10年後に見違える姿で現れたデニス・ホッパー。後に非業の死を遂げたサル・ミネオ。この時主演のエリザベスより年長だったキャロル・ベーカー。職人気質のジョン・スティーヴンスの味ある一品。

60年代中盤にかけてが、エリザベスの映画女優としての絶頂期

上記の作品以降から60年代中盤にかけてが、エリザベスの映画女優としてのキャリアの最大のピークであろう。MGMが『風と共に去りぬ』の二匹目のドジョウを狙う、エドワード・ドミトリク監督の『愛情の花咲く樹』(1957年)では、作品の内容自体は美しき男女の織り成す大仰なメロドラマに没する凡作であるが、狂気に陥り、南北戦争に翻弄される南部の美女を演じたエリザベスにはオスカー・ノミネーションのチャンスが巡ってきた。リチャード・ブルックス監督と再タッグを組んで挑んだテネシー・ウィリアムズの戯曲の映画化『熱いトタン屋根の猫 Cat on a Hot Tin Roof』(1958年)では、南部の名家の酒びたりの次男坊に嫁いだ、欲求不満でいっぱいの若妻マーガレットを怪演。エリザベスは自身のパブリック・イメージをかなぐり捨てる迫真の熱演を見せ、彼女はこの作品でもオスカーの主演女優賞にノミネートされている。以降、モンゴメリー・クリフト、キャサリン・ヘプバーン、マーセデス・マッケンブリッジと共演した『去年の夏 突然に』(1959年)、『バターフィールド8』(1960年)と4年連続でアカデミー主演女優賞にノミネートされ、最後の『バターフィールド8』でアカデミー主演女優賞を獲得した。
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エリザベスが初のオスカーを取ったメロドラマ。娼婦の汚れ役を演じたと言っても、過去の浮気女(『雨の朝巴里に死す』)や狂女(『愛情の花咲く樹』)あたりから既に賞狙いの複雑な役はこなしてきている彼女だ。そのねぎらいの意味もあっての受賞と言われた。グロリア(エリザベス)はモデルの正業は名ばかりで、バタフィールド8の電話番号で呼び出されるコールガール。NYのアパートに母と二人暮らしだ。たとえ娼婦であっても、心を許す男はいる。それは富豪の娘を妻にし、愛情のない結婚生活を送るリゲット(ハーヴェイ)と、何事も相談に乗ってくれる幼なじみの作曲家スティーブ(フィッシャー)だった。リゲットは妻との生活に疲れ酒に溺れる。そんな彼にのめり込むグロリアだが……。そして、悲劇はふいに訪れた……。

エリザベスがオスカーを得た作品の割には、面白くないと言う人が多いのも事実。エリザベスも後半は良いのですが、前半、特にオープニングの独演ではわざとらしい演技が気になる所だ。若い頃と変わらない彼女の美しさが演技を妨げているようにも思える。
晴れてオスカー女優の称号を得たエリザベスは、長期契約で縛られていたMGMを離れ、自由に作品選びが出来る立場になった。しかし皮肉なことに、ハリウッドにおける女優の賞味期限も容赦なく近づいていて、それは天下の美女リズといえども逃れようのない宿命であった。従って60年代後半は、女優リズにとって、爛熟の時代であったと同時に早くもキャリアの総まとめに取り掛からねばならない、ジレンマの10年間となった。一般的にはおそらく、ハリウッド女優として初めて100万ドルの出演料を得た『クレオパトラ』(業界的には、湯水のごとく予算を浪費したとブーイングの嵐らしい)や、この映画で出会ったリチャード・バートンとの2度にわたる結婚・離婚ドタバタ劇とからめ、バートンとの共演作『予期せぬ出来事』、『いそしぎ』、『バージニア・ウルフなんかこわくない』、『じゃじゃ馬ならし』、『危険な旅路』、『夕なぎ』などが総括されるだろう。
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紀元前48年、内乱の続くエジプトに侵略したローマ帝国の闘将シーザー(レックス・ハリソン)は、そこでエジプトの女王クレオパトラ(エリザベス・テイラー)の姿を見て一目で彼女の虜になってしまう・・・。歴史スペクタクル大作だけあって、その圧倒的な重厚感と豪華絢爛なセットには思わず驚嘆させられる。世界的に映画界が絶頂期にあった頃の代表的な作品。

CGがなかった時代にあれだけの装置を作り上げたのは驚異というしかない。エキストラも20万人を超えたとか。金と時間をかけただけあって、芝居よりもその背景の装飾や彫像、建物に目を奪われてしまった。
エジプトを統治するエリザベス・テイラー演じるクレオパトラがカエサル(レックス・ハリソン)、そしてアントニウス(リチャード・バートン)といった稀代の英雄と愛し合った経緯を史実に基づいて描いている。少々生真面目に作り過ぎた印象もあるが、さまざまなエピソードも忠実に挿入しているのでそれなりに面白いと私は思う。ネガティブな意見・感想が多い中、あえて私は肯定的な意見・感想を言いたい。

『バージニア・ウルフなんかこわくない』(1966年)で二度目のオスカー

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ニューイングランドの大学内に建てられた住宅。そこに住む教授夫妻ジョージとマーサのもとに、若い夫婦がやってくる。マーサが青年をベッドに誘おうとしても、ジョージは文句を言わない。すでに二人の間には、愛のかけらもなかったのだ。そして唯一の絆である、彼らの息子のことが語られたとき……。壊れかけた夫婦の、狂気に彩られた関係を描く。

Who's Afraid of Virginia Woolf? (1966) trailer Elizabeth Taylor

最初の夫婦のやり取りからきな臭い雰囲気が漂っていて、若いゲストの夫婦が登場したら更にエスカレート。まともな会話もややできるのが、キワの狂気のようで非常にリアル。ウソホントがが入り混じってのやり取りは鳥肌ものだ。
途中から一見普通に見えていたゲスト二人も巻き込まれておかしくなって行くさまは、人間だれでも狂気の扉を持っているということでしょうか?? エリザベスがこんな醜い”メス豚”を怪演しているとは!!まさにおどろきだった。

最後にエリザベスの私生活!!

マイク・トッド、エリザベス・テイラー夫妻と娘リザ 1957年

マイク・トッド、エリザベス・テイラー夫妻と娘リザ 1957年

エリザベスは生涯で7人の男性と8度も結婚と離婚をしたことでも知られている。彼女は自身の結婚の回数について、「人を心の底からとことん好きになったのなら、その人と結婚しなさい。」と教えられてきたことが影響していると語っている。

18歳のときに、パリス・ヒルトンの祖父の兄にあたるコンラッド・ヒルトン・ジュニアと結婚し、わずか9カ月でスピード離婚を経験したエリザベスは、その後、19歳で二度目の結婚をしたエリザベスのお相手は、20歳年上の俳優マイケル・ワイルディングで、この結婚は5年間続いたが後に破局。リズは彼とのあいだに二人の子供を授かる。好きになったらすぐに結婚したくなる性格なのだろうか。彼女は、マイケル・ワイルディングと離婚して1週間も経たないうちに、24歳年上のマイケル・トッドと再婚し、今度は娘を出産したが、1年後にトッドが飛行機事故で亡くなるという不幸に見舞われてしまう。
1965年の『いそしぎ』で夫婦共演したテイラーとバートン

1965年の『いそしぎ』で夫婦共演したテイラーとバートン

その悲劇から1年後、エリザベス27歳のときに、亡くなったマイケル・トッドの親友であるエディ・フィッシャーと世間の大反対にあいながらも再婚。ところが、同年『クレオパトラ』(63)で共演したリチャード・バートンとダブル不倫に陥り、1964年にフィッシャーと離婚。バートンを5番目の夫として迎える。しかし、バートンのアルコール依存症や、お互いに派手な生活を好んだことから次第に関係は悪化し、1974年に離婚。翌年またもや同相手と再婚をするが、やはり長続きすることなく、1975年(エリザベス43歳)に再び離婚。そして、1976年には7番目の夫・共和党上院議員のジョン・ワーナーと結ばれるが、この結婚生活にも6年で夫婦関係を解消。59歳のときにアルコール依存症のリハビリ施設で出会ったラリー・フォーテンスキーと8度目の結婚をする。こうして振り返るだけでも、彼女の恋のエネルギーはものすごいものがあるが、それだけ、自分に正直な女性だったに違いない。
8回の結婚を経験したエリザベスだが、生涯で1人の養子を含む4人の子供、10人の孫、そして4人のひ孫に恵まれている。

また結婚に至らずも多くの人と浮名を流しており、10代のエリザベスが俳優としても活動していたロナルド・レーガン米元大統領と関係を持ったことや、ジョン・F・ケネディ元大統領と俳優ロバート・スタックと同時に性交渉をしたことが明らかにされている。また、歌手フランク・シナトラや国務長官ヘンリー・キッシンジャー、富豪のマルコム・フォーブスなどもいたようだ。皆さん大物ぞろいですなぁ~!!

慈善活動も精力的に活動!!

生涯を通じてエリザベスは一貫して慈善活動に献身し、豊富な資金援助も行っている。HIVとエイズ関連の基金を創設し、総額2億7千万ドル以上の収益をあげたチャリティを主催している。彼女はエイズに関する見識がほとんどなかった時代から、積極的に支援活動を行った最初期の著名人の一人であり、1984年にエイズ基金を創設してエイズプロジェクト・ロサンゼルス (en:AIDS Project Los Angeles) に貢献した。エリザベスが死去した時に、これらの慈善活動について、前米国大統領ビル・クリントンが「エリザベスの遺志は、いつまでも世界中の人々の心に素晴らしいものとして生き続けるだろう。彼女はそれだけの業績を残し、たゆむことのない努力を続けたのだ」とコメントを寄せている。
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