ハリー・レイスに見る長期政権の極意
2016年11月25日 更新

ハリー・レイスに見る長期政権の極意

NWA世界ヘビー級チャンピオンに、長期に渡って君臨し続けたハリー・レイス。 プロレスファンは何をハリー・レイスに求めたのか? そして、ハリー・レイスは何をプロレスファンに与えたのか? ミスター・プロレスの秘密を多角的に分析してみた。

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チャンピオンになるための必要条件

ところで、なぜハリー・レイスはこのように長期に渡って
タイトルを保持出来たのでしょうか?

チャンピオンになれば、全米中を毎日のようにタイトルマッチ
を続けなくてはいけない。

怪我をしたり、病気で休む事さえ認められない。
休み続ける事は、プロレス興行に穴を開ける事と
であり、それはチャンピオンの座を明け渡す事を
意味します。

想像するだけでも、非常に過酷職業とも言えるだろう。
長期王座に君臨

長期王座に君臨

NWAチャンピオンにとっては、毎日のように各地で試合をこなさなくてはならなかった。
ただ、いくら鍛えられたハリー・レイスでも、連戦続きでは
身体が持ちません。

しかしながら、NWAの王座は、カウント3かギブアップで
負ける以外はタイトルが移動しないというルールがあります。

リングアウト負け、オーバー・ザ・トップロープでの反則
など、NWA王座を守る鉄壁なルールによって、レイス
は守られていたと言えます。

つまり、試合中苦しくなっても、チャンピオン・アドバンテージ
をフルに利用すれば、どんな相手であろうが王座を確実に
防衛する事が出来きた訳です。

NWA世界ベビー級チャンピオンになるための要素は、
強いからチャンピオンになれるのでは無く、
いかに観客を呼べるか? いかに観客を喜ばす事が
出来るか? が必要条件となります。

それに加えて、有力プロモーターの支持を得る事が、
NWA世界ベビー級の王座を長期に渡って維持する
絶対条件でありました。

客が呼べないチャンピオンでは、プロモーターとしては
必要がない。 

その点でハリー・レイスは、観客、プロモーターの両者
を満足させるレスラーであったのは間違い無いだろう。

ヒールとしてのチャンピオン

また一方で、地元のヒーローと対戦するヒールのチャンピオン
でなくてはならなかった。

観客は、NWA世界ベビー級チャンピオンを応援するため
に試合を見に来たのでは無く、地元のヒーローが
チャンピオンを倒すのを期待して会場に足を運ぶのである。

プロレスは勧善懲悪のストーリの中で展開されており、
善は地元のヒーローであり、当然チャンピオンは
悪という事になります。

そうです。 NWAのように広いエリアをサーッキトするには、
チャンピオンは、常にヒールでなければならないのです。

ただ、ヒールと言っても単純な悪役では無く、ある種の
尊敬の意が込められたヒールであった。

反則を繰り返すだけの単純な悪役では無く、憎たらしい
くらい地元のヒーローを追い詰めて、観客をハラハラ
させるも、最後はヒーローに逆襲の道を用意する。

観客は満足して、会場を後にするわけです。

それがNWA世界ベビー級チャンピオンに求められる技量
であり、課せたれた宿命であろう。

それが出来たからこそ、ハリー・レイスは長期政権を
築けたのであった。
NWA世界ベビー級チャンピオンベルトを巻くハリー・レイス

NWA世界ベビー級チャンピオンベルトを巻くハリー・レイス

ハリー・レイスが出場する会場は、常に観客でいっぱいであった。
お客が呼べるチャンピオンでもあった。

必殺技

チャンピオンは、代名詞となる必ず一撃必殺の技を
持っています。

アントニオ猪木の卍固め、ジャイアント馬場の16文キック。
必殺技が出たら勝負が決まります。

ところが、ハリー・レイスはダイビング・ヘッドバッド 
ブレーンバスター、インデアン・デスロックなどの技は有名
ですが、完全な代名詞とまではなっていません。

言い換えれば、それだけオールマイティなレスラー
であったとも言えます。

ハリー・レイスは対戦相手を叩きのめすのでは無く、
逆に相手の強さを最大限に引き出す技量に優れて
いました。
ブレーンバスター

ブレーンバスター

滞空時間の長いブレーン・バスターは、ハリー・レイスの得意技の一つでもあった。
多彩な技を持ち、誰もが認める最強レスラーが、
チャンピオンとして君臨し続ける事が出来なかった
例は多くあります。
神様カール・ゴッチ。  人間風車ビル・ロビンソン。

強さだけ見れば、カール・ゴッチやビル・ロビンソンは、
ハリー・レイス以上の実力を備えていたでしょう。

しかし、ハリー・レイスは彼らが成し遂げられなかった
NWA世界ベビー級チャンピオンとして長期政権を築き、
長年に渡り王座に君臨し続ける事が出来たのである。

ハーリー・レイスvsダスティ・ローデス - YouTube

オープン選手権開幕戦. ではダスティ・ローデスとの死闘を繰り広げた。
フィニッシュのダイビング・ヘッドバッドは、ハリー・レイスの得意技の一つである。

超一流の受け技

トップロープから登って攻撃をしようと思ったところを、
デッドリードライブで豪快に投げられるハリー・レイス。

もやは彼の定番スタイルであり、ジャイアント馬場
との対戦では幾度と無く見られたシーンでした。

「受身も超一流!」 とジャイアント馬場に言わしめた
ハリー・レイスの受身テクニックは超一流であった。
これはどんな対戦相手でも、そのスタイルに合わせて
プレーをする技術を指すことは言うまでもありません。
16文キックを受けるハリー・レイス

16文キックを受けるハリー・レイス

ハリー・レイスは、多彩な技を繰り出すのでは無く、多彩な技を受けるのが上手いチャンピオンであった。
そして、ハリー・レイスがすごいのは、対戦相手の
魅力を100%引き出すプレースタイルが出来た事
だろう。

観客が何を見たがっているのか?
何をすれば観客が喜ぶのか?

主役は自分では無く、あくまでも地元のヒーローである
事を十分に理解し、それをあらゆる対戦レスラーに
適応する事が出来た天才レスラーであった。

映画界で例えれば、アカデミー助演男優賞なみの
技量を持ち合わせていたと言えるでしょう。

尚、そのスタイルを継承したのは、ハリー・レイスと何度も
NWA世界ヘビー級タイトルマッチを繰り広げた、
リック・フレアーであった。

彼は、レイスから多くの事を学び、またレイスと同様に
長期に渡って、NWA世界王座に君臨したのであった。
狂乱の貴公子 リック・フレアー

狂乱の貴公子 リック・フレアー

ハリー・レイスから、ファイト・スタイルを多くを学んだリック・フレアー。  

プロレス殿堂入り

ハリー・レイスはNWAを去った後、WWFのリングで活躍
の場を移しました。
WWFでは、元NWA世界ヘビー級チャンピオンに敬意を
表し、キング・ハリー・レイスでファンの前に登場しました。

当時、WWFヘビー級チャンピオンであった、ハルク・
ホーガンとの戦いは、ファンを大いに楽しませた。

往年の動きこそは無いものの、長年NWA世界ベビー級
チャンピオンとして長年君臨した風格は、他のレスラーとは
明らかに一線を引くものであった。

WWFを去ったハリー・レイスは、再び日本のマットに
登場した。
1989年の事である。

往年のレイスを知る私にとっては、少し寂しいファイト内容
であったが、プロレスファンを大いに楽しませた。
結局、この来日が現役最後となった。
キング・オブ・ザ・リング

キング・オブ・ザ・リング

NWAを去った後も、伝説のレスラーとして敬意を表された。
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