映画『ラヂオの時間』生放送中なのに内容が二転三転!誰も結末を知らない!
2017年2月8日 更新

映画『ラヂオの時間』生放送中なのに内容が二転三転!誰も結末を知らない!

1997年公開の脚本家・三谷幸喜初の監督作品映画『ラヂオの時間』。ラジオ局を舞台にした三谷幸喜お得意の密室シチュエーション・コメディ。西村雅彦、鈴木京香、唐沢寿明、戸田恵子らが出演した。90年代を代表するドタバタ劇映画をまとめる。

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三谷幸喜初監督の映画『ラヂオの時間』

90年代屈指の脚本家・三谷幸喜。
「振り返れば奴がいる」(1993年、フジテレビ)、「警部補・古畑任三郎 第1シリーズ」(1994年、フジテレビ)、「王様のレストラン」(1995年、フジテレビ)などを手掛け、1997年当時、ドタバタコメディを描かせたら右に出る者はいない程の実力と人気を誇っていた三谷初の映画初監督作品だった『ラヂオの時間』。

本作は1993年に上演され、三谷が脚本・演出を担当したサンシャインボーイズの演劇「ラヂオの時間」を基に映画化された。
DVD『ラヂオの時間』

DVD『ラヂオの時間』

本作は三谷が得意とする密室シチュエーション・コメディであった。
ラジオドラマの生放送を控えた録音スタジオが舞台で、そこに居合わせた出演者、スタッフらの”自分勝手””ご都合主義””人間関係”といった要素が絡み合い、徐々にドタバタ劇の様相を呈していく。

三谷は本作で、同じく密室シチュエーション・コメディだった1991年の映画「12人の優しい日本人」に続いて2度目のキネマ旬報脚本賞を受賞している。
また、ベルリン映画祭にも出品され、その際、三谷は「ドイツ人がこれほど笑うところを見たことがない」とコメントした。

予告『ラヂオの時間』

予告内で西村雅彦演じる牛島番組プロデューサーが、夢を語るように「ラジオには無限の可能性がある。」と人間の想像力を喚起させるラジオドラマの魅力を語るが、この後自身がドタバタ劇に巻き込まれ、うっとりと語った夢をまるで否定するかのように、番組の進行と出演者、スポンサーへの根回ししか考えないヘッポコプロデューサーへと成り下がる。その様子が、ユーモア溢れる本作を象徴している。

≪あらすじ≫生放送中のラジオドラマなのに脚本が二転三転!!

“ラジオ弁天”のスタジオでは、まもなく始まるラジオ・ドラマ『運命の女』の生放送のためのリハーサルが行われている。初めて書いたシナリオが採用され、この作品によって脚本家としてデビューすることになった主婦の鈴木みやこは、緊張しながらリハを見守っていた。

全てのチェックが済み、あとはいよいよ本番を待つばかりとなったが、直前になって主演女優の千本のっこが自分の役名が気に入らないと言い始める。プロデューサーの牛島はその場を丸く納めようとして、要求通り役名を“メアリー・ジェーン”に変更した。

しかし、そんなのっこに腹を立てた相手役の浜村は、自分の役名も外国人にしてほしいと言い出し、熱海を舞台にしたメロドラマのはずだった台本は、ニューヨークに設定を変更させられる。

みやこはいろいろ辻褄の合わなくなってきた台本を短時間で書き直すことになるが、素人の彼女にそんな器用なことはできず、牛島はまたも急場しのぎに放送作家のバッキーにホン直しを依頼した。
タイトル・ラヂオの時間

タイトル・ラヂオの時間

主要キャラ

主要キャラ

左上:八方美人な性格の牛島番組プロデューサー(西村雅彦)、右上:脚本を書いたごくごく平凡な主婦・鈴木みやこ(鈴木京香)、左下:強気で自己主張の強い工藤番組ディレクター(唐沢寿明)、右下:元・大スターであり、わがまま言いたい放題の女優・千本のっこ(戸田恵子)
しかし、ドラマの内容を把握していない彼によって、物語はさらにおかしな方向へ向かい、本番開始直前にミキサー・辰巳の一言で舞台はまたまたシカゴに変更される。
さらに浜村が自分の役柄をパイロットだと勝手に言ってしまったことで、物語は辻褄合わせのためにますますおかしくなっていった。

ディレクターの工藤を筆頭に、スタッフたちは次々にやってくる障害を、行き当たりばったりのその場しのぎで乗り越えていくが、あまりに勝手な台本の変更の連続にみやこは怒りを爆発させ、CM中にブースに立てこもると「ホンの通りにやって下さい!」と叫ぶ。

しかし、そんな抗議も虚しく、ドラマはのっこのわがままのせいで、みやこの思いとは全く正反対のエンディングを迎えようとしていた。
スタジオに立てこもるみやこ

スタジオに立てこもるみやこ

理不尽な制作陣に「お願いですから、ホンの通りにやって下さい!」と訴えるみやこ。
みやこが書いた脚本は元々日本のパチンコ屋が舞台の男女の恋物語だったが、物語の舞台がニューヨーク、シカゴ、宇宙と飛躍し、さらには結ばれるはずの男女も名前が変更され、死別するという展開に。
ついにみやこの怒りが爆発したシーン。
立てこもったみやこを必死に説得する牛島番組プロデューサ...

立てこもったみやこを必死に説得する牛島番組プロデューサー(前列左から2番目)

「満足いくものなんてそう作れるものじゃない。妥協して妥協して、自分を殺して作品を作り上げるんです。でもいいですか、我々は信じてる。いつかはそれでも満足いくものができるはずだ。その作品に関わった全ての人とそれを聞いた全ての人が満足できるものが。ただ、今回はそうじゃなかった。それだけのことです。」と一見、もっともらしい意見を述べて、みやこを説得する牛島。
みやこの純粋さに感じるところのあった工藤は、結末だけでも彼女の思い通りにさせてやろうと牛島に抗議するが、ドラマを無事に終わらせることで精一杯の牛島は、工藤をスタジオから追いだして辰巳に演出を任せる。

工藤はスタジオの外から極秘の回線でブース内と連絡を取り、みやこやのっこ以外の出演者、ADの大田黒らの協力で、ドラマを当初のエンディングに導いた。こうして生放送はともかく終了し、みやこを含めた全てのスタッフと俳優たちの顔には、仕事の充足感が満ち溢れる。
パイロット、ドナルド・マクドナルド役の浜村(細川俊之さ...

パイロット、ドナルド・マクドナルド役の浜村(細川俊之さん、右から3番目のもみくちゃにされてる男性)

出番を終え帰ろうとしていた浜村は、工藤指揮の元、スタッフに連れ戻され、強引に再出演させられる。
しかし、相手役の千本のっこのわがままに怒りを露わにする浜村は、千本のっこ演じるメアリー・ジェーンとの感動的な再会シーンへの出演を拒む。しかし、周囲の出演者にマイク前に立たせられ、口を開かされ、台詞を言わされる。
時折、劇中に登場したトラック運転手(渡辺謙)

時折、劇中に登場したトラック運転手(渡辺謙)

感動屋で、ラジオドラマが裏では適当に即興で作られているとは知らずに、放送を聞いて涙。ラストシーンでは、ラジオ局にトラックで乗り付け、帰宅しようと正面口に居た牛島と工藤に声を掛け、ドラマを絶賛し、人目もはばからず号泣した。

その後、トラックの路上への誘導を買って出た構成作家のバッキー(モロ師岡)の自転車を誤って踏み潰す。文句を言ってくるバッキーを追い払い、さらに自転車を踏み潰したところで、映画は出演者のエンドロールに入っていく。

エンディング『ラヂオの時間』

エンドロールで流れるテーマ曲「no problem」は、劇中に登場する編成部長の堀ノ内修司(布施明)が歌っている。
千本のっこのわがままから大騒動となっていく本作だが、そのわがままを許した当事者である堀ノ内。
千本のっこにへそを曲げられないよう、巧みにおべっかを使い、よいしょした結果、脚本の大幅な変更を招いた。
しかし、この曲では、「千本のっこが笑っていれば僕は満足」(動画4:00~)と歌いつつ、千本のっこを「あのアバズレが」(動画4:27~)とも歌い、日頃のうっぷんを晴らしている。

ちなみに堀ノ内の風貌面でのモデルは、「踊る大捜査線」のプロデューサーで取締役の亀山千広。

オヒョイさん演じる守衛は凄腕の元音効さん!

生前オヒョイさんと親しまれた藤村俊二さん演じるラジオ弁天の守衛。劇中、守衛室でのほほんとゲームボーイに興じる彼は、実は元々効果音を製作する生粋の音効さんだった。

劇中、マシンガンの音声が急遽必要になるが、ラジオ局の音源が借りられない状況に。マシンガンが登場する出番が押し迫る中、スタジオ内のメンバーが、都市伝説のように語られていた伝説の音効を思い出す。
その人は仕事が減り、守衛に回されたという話をすると、工藤が駐車場の守衛室へ走り、守衛にマシンガンの音を作り出してほしい旨を伝える。しかし、一度は音効ではないととぼける守衛。
守衛(藤村俊二さん)

守衛(藤村俊二さん)

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  • コミー 2018/4/15 22:36

    泣けた。この年齢になって観ると泣けるんだと思った。三谷幸喜にはまた身近なシチュエーションでの喜劇/悲(哀)描いてほしい。

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