2017年1月26日 更新

伊丹十三監督「ミンボーの女」。多才にしてマルチな人間、故伊丹監督作品とともに振り返る。

あるホテルを舞台に、暴力団とホテル側と民暴(ミンボー)の専門弁護士との対決を描いた、コミカルにして痛快な映画。そして、現実社会で様々な事件に巻き込まれていく伊丹監督を振り返ってみましょう。

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作品紹介

「マルサの女」に次ぐ「✖✖の女」シリーズ。
一般人対ヤクザという構図で、スリリングな事件をコミカルに描き、従来のヤクザ映画とは一線を画した作品。
ロケは開業前の長崎ハウステンボスの「ホテルヨーロッパ」で行われました。
劇中でもそのままのホテル名が使用されています。
開業前とはいえ、内容が内容なだけに、ホテル側はよくぞという感じですね。
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1992年5月公開。

【あらすじ】
暴力団のゆすりを受け続けている名門ホテルヨーロッパ。この現状を打開すべく雇われたのが、民事介入暴力(ミンボー)専門の女弁護士・井上まひる(宮本信子)でした。井上は法律を武器に、組織と堂々と渡り合い、従業員たちに屈服しないことを身をもって示していくのでした。そして、従業員たちの意識と行動が徐々に変化していく中で、井上が襲撃に会います。しかし、ホテル側は敢然と立ち向かい、警察との協力によって一網打尽にし、組織の排除に成功するのでした。

[ミンボーの女]予告編

出典 youtu.be
従来のヤクザ映画では、主人公=ヤクザ=ヒーロー的なものが多かったのですが、この映画の主役はあくまでも「一般人」。そして、一般人の武器は「法律」。
「弱きを助け、強きをくじく」「ペンは剣より強し」的なストーリーを、笑いと涙で見事に調和させ、興行収入15億円超えの大ヒットとなりました。
しかし、この映画の公開後、伊丹監督は大きな事件に巻き込まれて行きます(後述)。

女弁護士対ヤクザ(ガッツ石松)

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始まりのワンシーン。
ホテルのプールサイドに偶然居合わせた井上まひる(宮本信子)が、大声を張り上げているヤクザ(ガッツ石松)達に啖呵を切るシーン。
「おう!
黙って聞いてりゃいい気になりやがって。
てめえら山手線の内側でガンつけるの間違ってんじゃねえのかぁ?
隅田川にはフタはねぇんだ!
チンタラしてねえでとっととうせやがれ!」
う~ん。。意味不明なのですが、、迫力はありましたね。

ホテルへ怒鳴り込み

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ホテルのレストランでゴキブリをラザニアに仕込み、イチャモンをつけて圧力を強め、地元ヤクザとの抗争をネタにホテルへ怒鳴り込んで脅しをかける伊場木(中尾彬)。
堂に入ってますね。

鉄砲玉

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井上まひる(宮本信子)を襲撃する鉄砲玉役のギバちゃん。
若いですねぇ。

毅然と立ち向かうホテルマンたち

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ラストシーンでは押し寄せる暴力団に、堂々と渡り合うホテルマンたちがいました。
屈服しないという井上まひるの信念が実ったシーンです。

主な出演者

宮本信子  弁護士;井上まひる

暴力や圧力に法律で立ち向かう女弁護士役。
ホテルの従業員たちの先頭に立って、皆を牽引していく主人公。
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女優・ジャズシンガー。
故伊丹十三の妻。

テレビ・映画・舞台等で活躍する傍らで、ジャズシンガーとしての活動も精力的にこなし、ライブ活動も行っている。

出演作品 「マルサの女」「あまちゃん」等々

宝田明  ホテルヨーロッパ;小林総支配人

総支配人という役職にありながら、賭けゴルフ・ハニートラップ等、見事にヤクザの罠にはまってしまう。何とも憎めない役を演じています。
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テレビ・映画・舞台・司会と様々なシーンに登場する俳優。
ミスユニバース日本選出大会の司会も務めたことがあります。

伊東四朗  ヤクザの大親分;入内島

小林総支配人を賭けゴルフの罠に落とし込む大親分。
元々こわもてだけに、結構決まってます。
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コメディアン時代、「てんぷくトリオ」のメンバーとして一世を風靡する。その後、バラエティー、司会、俳優としてコメディーからシリアスな役まで演じ、何でもこなすマルチタレント。

中尾彬  ヤクザの親分;伊場木

ホテルへの嫌がらせや締め付け等々、このこわもてでやられたらたまりません。
ハマリ役ですね。
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独特の雰囲気をかもしだす名俳優。
美術的才能もあり(武蔵野美大中退)、絵画の個展を開くなど多才な面をもつ。
その他にも、津川雅彦・大滝秀治・柳生博・大地康雄・柳葉敏郎・櫻井淳子・ガッツ石松等々、豪華なメンバーが顔を揃えスクリーンを盛り上げてます。

伊丹十三

1933年5月、映画監督・伊丹万作の長男として京都に生まれました。
高校時代に執筆活動をはじめ、大江健三郎氏(ノーベル賞作家)との親交がはじまったのもこの頃です。のちに、大江氏は伊丹氏の妹と結婚されます。
デザイナー・イラストレーターとして活躍した後、俳優・監督等マルチタレントとしても活躍し、妻・宮本信子を起用したコミカルな社会派映画の制作に取り組みます。
1997年12月20日、自宅マンションで自殺(後述)。64歳でした。
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映画監督として1984年、
実体験をもとにした「お葬式」でデビュー。
翌1995年に公開した「タンポポ」からコミカル的な作品が主流となります。
そして1987年あの「マルサの女」が公開されます。✖✖の女シリーズの第1作です。この映画は日本アカデミー賞の数々の部門で表彰されました。
翌1988年に「マルサの女2」が公開。
1990年には大流行語になった「あげまん」が公開されます。男子は特にこの「あげまん」という言葉を使ってましたねぇ。
そして1992年「ミンボーの女」が公開されます。
その後、1993年に「大病人」、1995年「静かな生活」、1996年「スーパーの女」と立て続けに制作。
1997年、自身の体験をヒントに描いた「マルタイの女」を発表。
本編が遺作となりました。

『マルサの女』 予告編

国税局査察部、通称マルサの女査察官と、脱税をしているラブホ経営者との戦いを描いている。
出典 youtu.be
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女査察官シリーズ第2弾。
宗教法人を隠れ蓑にした脱税行為を暴いていく。
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愛した男が次々と運気上昇していく、という芸者と男たちの物語。
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末期の癌患者の生き様を描くとともに、医者と患者のあり方にも一石を投じた作品となっています。
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幼馴染が経営する売れないスーパーマーケットを一人の主婦が立て直していくサクセスストーリー。
食品偽装にいち早く切り込んだ、社会派映画でもあります。
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殺人事件の目撃者、彼女を執拗に狙う宗教団体、目撃者の女性(マルタイ)を守る警察の三つ巴を描いた作品。
伊丹監督の遺作となった映画です。

襲撃事件

「ミンボーの女」公開直後、1992年5月22日夜、自宅近くの駐車場で複数の男達に刃物で襲撃され、全治3か月の重傷を負います。犯人は5人の暴力団員。12月に逮捕され実刑判決を受けています。原因は映画の内容等いろいろ言われておりますが、伊丹監督自身、プロモーションビデオに上半身入れ墨を施して登場したり、ある記者会見では「私は、この映画でヤクザに喧嘩を売ったのです」という発言をしたり、ある種の挑発と取られる行為をしていたことがありました。五社英雄氏(映画監督 鬼龍院花子の生涯・極道の妻たち等)は、「あの男はやられるかもしれない」と関係者に言っていたそうです。

伊丹十三[ミンボーの女]特報

出典 youtu.be

1992 NEWSCOM

襲撃直後、
病院に搬送される伊丹氏。


この約1週間後に、「自分の信条に従って作った。私はくじけない。映画で自由を貫く」とのコメントを残しています。
出典 youtu.be
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