トヨタの革命児、初代カムリ&ビスタは偉大だった
2017年5月18日 更新

トヨタの革命児、初代カムリ&ビスタは偉大だった

国産車のFF方式が一気に採用され始めた1980年代前半、トヨタでは1台のセダンを発売しました。それがカムリとビスタでした。※カムリについては「セリカ・カムリ」を初代と数えることも多いですが、ここでは1982年発売のV10型を初代と定義します。

19,043 view

本格投入前の徹底した準備

カムリ&ビスタの発売を前に、トヨタは相当な準備で臨みました。まず、カムリを扱うカローラ店には上級車種がなかったため、1980年1月に「セリカ・カムリ」という名のFR車を投入し、市場を開拓しました。車名にはカローラ店の取扱車種であるセリカの名を冠し、メカニズム的にはカリーナの姉妹車でした。

一方、ビスタの方は、同じく1980年4月に新たなディーラー網「トヨタビスタ店」を開設。セリカ・カムリのほか、クレスタ、ターセルなどを扱いました。
カリーナセダンの姉妹車、セリカ・カムリ。

カリーナセダンの姉妹車、セリカ・カムリ。

カローラ店で扱っていたセリカ。写真は1979年のモデル。

カローラ店で扱っていたセリカ。写真は1979年のモデル。

クラウンよりも広いミドルセダン

1982年、満を持して3月にカムリを、4月にはビスタを投入しました。初代カムリ&ビスタ(V10型)は、従来のトヨタ車の概念を打ち壊すようなクルマでした。駆動方式に前輪駆動を採用したため、走行系をコンパクトにまとめ、広大なキャビンを設け、「クラウンよりも広い」と評されました。

メカニズム面では、駆動方式は前輪駆動のみ、エンジンは新開発の直列4気筒1800cc(1S-LU型)を横置きし、変速機は5速MTのみの設定でした。

トヨタでは、新機軸を盛り込んだカムリを新たな国際戦略車と位置付け、コロナに代わって輸出の主役としました。

カムリはその後、1982年7月に4速AT車を、8月には2000ccが追加されました。さらに翌1983年8月には1800ccディーゼルターボ車が追加され、ラインナップを急速に拡大していきました。
本当の意味での初代といえるV10型カムリ。

本当の意味での初代といえるV10型カムリ。

前輪駆動のメリットを最大限に活かした広大なキャビンが特徴。
カムリの輸出仕様。北米向けのヘッドライトは当初、角形4...

カムリの輸出仕様。北米向けのヘッドライトは当初、角形4灯だった。

1983 TOYOTA CAMRY Ad

初代カムリのCM。CMキャラクターには田中邦衛を起用。広い室内が売りなので、CMでも車内を写している。

リフトバックでスポーティな印象に

ビスタとは「展望」の意味ですが、大きなグラスエリアはビスタの名にふさわしいものでした。当初はカムリと同じく1800cc・5速MTのみの設定でしたが、1982年8月には5ドアリフトバックが発売されました。5ドアは、日本ではビスタのみに設定(カムリも海外向けには設定)され、セダンよりも車高が低いため、スポーティな印象を与えました。

併せて、1800ccの4速ATと、2000ccが追加されました。1983年8月には、カムリと同じく1800ccディーゼルターボも追加されました。

筆者が子どもの頃、初代カムリに乗っている親戚がおり、窓の大きなセダン、という印象が残っています。無駄のないデザインは、それまでのコテコテしたFRセダンを一気に古臭く感じさせました。また、友人の家ではビスタの5ドアリフトバックに乗っており、こちらも従来の日本車にない、進歩的なイメージがありました。
初代ビスタに追加された5ドアリフトバック。

初代ビスタに追加された5ドアリフトバック。

ファミリーカーのカムリ、ややスポーティなビスタというイメージが定着した。写真は後期型。

初代トヨタビスタCM

初代ビスタのCM。CMキャラクターには多岐川裕美を起用。

マイナーチェンジでFF初のDOHC誕生

1984年6月、カムリとビスタは同時にマイナーチェンジを受けました。2000ccにはツインカム16V搭載車が追加され、横置きFF車では日本初のDOHCエンジン搭載車となりました。

また、1800ccエンジン(ガソリン車)には電子制御インジェクションが搭載され、グレードの見直しなども行われました。1985年8月には、ディーゼルターボ車のエンジンが2000ccに変更されました。

キャッチコピーは「長距離クルージングサルーン」。直列4気筒の2000cc車でありながら、広大なキャビンとFFの安定した走りを武器に、マーク2シリーズにはない、世界標準のサルーンをPRしました。
マイナーチェンジで引き締まったデザインになったカムリ。

マイナーチェンジで引き締まったデザインになったカムリ。

2000cc・DOHCエンジン搭載車は、リアドアに「2000 TWIN CAM 16」の文字が入れられた。

カムリCM

マイナーチェンジしたカムリのCM。2000cc・DOHCエンジン車が主役だ。CMキャラクターは引き続き田中邦衛。

TOYOTA VISTA ビートたけし

マイナーチェンジしたビスタのCM。CMキャラクターにはビートたけしを起用。

3代目以降は再びビッグキャビンに

カムリ&ビスタは、1986年8月に2代目に移行します。先進的な試みに満ちた初代はそれなりに売れましたが、トヨタでは充分な成功と評価されてはいないようです。2代目では、コロナの上、マーク2の下、という位置付けがはっきり分かるデザインになり、室内の広さを売りにした初代のコンセプトは消えてしまいました。

ビスタは5ドアリフトバックが消え、代わりに4ドアハードトップが設定され、セダンとの2本立てになりました。1987年4月にはV型6気筒2000ccエンジン搭載の「プロミネント」がカムリに追加され、プロミネントには4ドアハードトップも設定されました。

一方で、国際車としてのカムリは2代目で開花します。1987年にオーストラリアで、1988年にはアメリカで現地生産を開始し、特にアメリカではホンダ・アコードと並ぶ人気を二分し続けています。
22 件

思い出を語ろう

     
  • 記事コメント
  • Facebookでコメント
  • I.O 2019/11/24 20:53

    大人気メーカーへと成長し、売り上げシェアNo.1にもなったトヨタにも失敗作が有り、それが82年春に登場したV10系ビスタ/カムリでした。
    ビスタは市販車両化される年80年春に新販売チャンネルとして登場し、カムリは同年1月にA40系カリーナセダンをベース車両として、セリカカムリとして登場しました。その2年後の82年春にカムリとして独立一新し、前途の様にビスタが登場しましたが売り上げは伸びず、要因は1800ccのみでパワー不足を感じた事とオートマチックの設定が無い事でした。そこで成績不振を援護すべく、同年夏には2000cc燃料噴射付きエンジンとオートマチックを加え、84年初夏の後期一新時には2リッターDOHCエンジンを加えますが、やはり販売面には効果はありませんでした。

    すべてのコメントを見る (1)

    コメントを書く
    ※投稿の受け付けから公開までお時間を頂く場合があります。

あなたにおすすめ

関連する記事こんな記事も人気です♪

「私をスキーに連れてって」時代の人気RV、サーフ&テラノ

「私をスキーに連れてって」時代の人気RV、サーフ&テラノ

昨今のバブル時代ブームもあって、この冬のスキー関連のCMは、1990年前後を感じさせるものが多いですが、自動車における「スキー」「バブル」といえば、クロカン4WDを忘れることはできません。今回は、時代の主役・三菱パジェロを追いかけた二大メーカーのトヨタ・ハイラックスサーフと、日産テラノを取り上げます。
篠田恵三 | 11,834 view
旧車レストアのカリスマ&船越家の8ミリフィルム再生の2本立て!「船越英一郎の昭和再生ファクトリー」が放送決定!!

旧車レストアのカリスマ&船越家の8ミリフィルム再生の2本立て!「船越英一郎の昭和再生ファクトリー」が放送決定!!

全国無料放送のBS12 トゥエルビで毎週木曜よる9時から放送中の「船越英一郎の昭和再生ファクトリー」5月9日(木)分にて、「旧車レストアのカリスマ」と「船越家の8ミリフィルム再生」の企画が2本立てで放送されます。
隣人速報 | 220 view
「GRスープラ」の3つの特別仕様車が1/64スケールミニカーになって登場!限定各999台で予約受付開始!!

「GRスープラ」の3つの特別仕様車が1/64スケールミニカーになって登場!限定各999台で予約受付開始!!

ヒコセブンが展開するオリジナルブランド「CARNEL」より、ダイキャスト製1/64スケール(約6.5cm)、トヨタ スープラ RZ “Horizon blue edition” 2020 Horizon blueと“Matte White Edition” 2022 Matte Avalanche White Metallic、“Plasma Orange 100 Edition” 2023 Plasma Orangeの3種類が発売されます。
隣人速報 | 171 view
頭文字Dファン必見!ハチロクこと「トヨタ・スプリンタートレノ」が1/64スケールミニカーとなってファミマ限定で登場!!

頭文字Dファン必見!ハチロクこと「トヨタ・スプリンタートレノ」が1/64スケールミニカーとなってファミマ限定で登場!!

本格R/C(ラジオコントロール)モデルやミニカー等、ホビー製品を製造・販売する京商より、京商CVSミニカーシリーズ『KYOSHO MINI CAR & BOOK No.16』TOYOTA SPRINTER TRUENOがファミリーマートの一部店舗で9月7日(木)より発売されます。
隣人速報 | 368 view
ソアラやマークII三兄弟など『ハイソカーブーム』の人気車種【10選】

ソアラやマークII三兄弟など『ハイソカーブーム』の人気車種【10選】

80年代のバブル期に巷を席巻していた「ハイソカー」。この記事では、当時高い人気を誇っていた10車種について特集してみたいと思います。

この記事のキーワード

カテゴリ一覧・年代別に探す

あの頃ナウ あなたの「あの頃」を簡単検索!!「生まれた年」「検索したい年齢」を選択するだけ!
リクエスト