「孤独のグルメ」の連載は20年以上も前!
扶桑社の月刊パンジャ誌上で1994年から1996年にかけて連載。1997年に単行本、2000年に文庫本、2008年に新装版が発売された。
2008年の朝日新聞記事などによると、10年間「気が付いたら在庫が無くなった」という、じわじわと売れ続けるスタイルで、2008年には累計10万部を突破。同年4月、特別編を収録した新装版が発売された。
その年以降、「SPA!」にて不定期に新作が掲載。2015年に18年ぶりの「2巻」が刊行される。
輸入商を営んでいる独り身の男を主人公とし、仕事の合間にふと立ち寄る飲食店の食事の様子を、主人公の独白により細かく描写していくグルメマンガ。
実在の飲食店をモデルに、「ぶた肉いため」「回転寿司」「焼きまんじゅう」など庶民的な食事を描くことがほとんどであり、イタリア、フランスほか各国でも翻訳版が発売されている。
2012年1月よりテレビ東京にてドラマ化され、Season5まで製作されています。
Season5の第7話(ジンギスカン鍋)では、深夜枠ながら5%もの視聴率を獲得。
更なる続編も期待されるヒット作として成長しています。
「孤独のグルメ」を堪能する主人公
個人で雑貨輸入商を営んでいる井之頭五郎(いのがしら ごろう)が、仕事の合間に立ち寄った店で食事をする様を描いたグルメ漫画。
主人公が訪れる場所は高級料理屋などではなく、大衆食堂のような店がほとんどである。また、出先での食事がメインのため、出張など(7話・19話・特別編)を除けば大半が東京を中心とする関東の店となっている。
料理の薀蓄を述べるのではなく、ひたすらに主人公の中年男が独りで食事を楽しむシーンと心理描写を綴っているのが特徴。ドラマティックな展開などは少なく、あたかもドキュメンタリーのごとく淡々とストーリーが流れていく。
食べ歩きに駆り立てる哲学
※TVドラマ版のオープニング・ナレーションより引用
この手のチョイスミスが多いです。
料理の組み合わせにこだわり、食べながらも頭の中では常に独り言を言っています。
「このおしんこは正解だった」
至極美味しさを感じる瞬間です。
料理を作る発想はなく、自分の腹が何の料理を求めているかを確認しつつ、店を選んでいきます。
彼にとって、料理はあくまでも食べるものであり、その時間こそが至福なのです。
どんなに仕事が忙しくても、食を堪能する姿勢に、現代人が忘れがちな食のありがたみを感じる事になります。五郎のその姿勢こそ「グルメ」ではないでしょうか。
独り飯の達人 井之頭五郎
井之頭五郎とは?
孤高で自由な生き方をモットーとし、結婚や店を構えることについては「人生が重たくなる」として敬遠している。自分なりの食事に対する信念をいくつも持っており、これに則って食事を楽しんでいる。
現在、特定の恋人はいない。回想では「小雪(さゆき)」という名の女優を始め、数人の女性と交際経験がある。
詳しい家族構成は不明だが、離婚して出戻った姉がおり、その姉の子、太(ふとし)は高校球児。
愛煙家で、食事が終わった後に一服つけるのが癖。
アルコールに関しては全くの下戸(ただし酒呑みや彼らの醸す雰囲気を嫌っているわけではない)。
甘党であり、特に和菓子系の甘い物には目が無い。
食べる行為に特化した作品
どのような土地で生まれ、どのような人生を歩んできたのかといったキャラ設定上、当然と思われる人生背景が省略されています。
前述の恋人に関する話のように、断片的に描かれる場合もありますが、それが物語に展開を与えるような事はありません。
あくまでも食を楽しみ、食により孤独な自分を癒すための物語なのです。
原作者の久住昌之は、フランスの評論家に「主人公のバックボーンがミステリアスである点が面白い」と言われたそうです。
実際には、五郎の設定をかなり綿密に設定しています。
ですが、久住としてはキャラがバックボーンを背負って食べているなんて、読者にとってはどうでもいい事という考えのようです(笑)
扶桑社 2008/4/22発売