永井真理子『ZUTTO』思わぬ誤算で元気ハツラツ系から脱皮を果たしたバラード
2017年6月13日 更新

永井真理子『ZUTTO』思わぬ誤算で元気ハツラツ系から脱皮を果たしたバラード

永井真理子の12枚目のシングル『ZUTTO(ずっと)』。 ボーイッシュなルックスと溌剌としたヴォーカルで『ミラクルガール』などのヒットを飛ばしていた永井真理子。 彼女がオトナのシンガーへ脱皮を果たすきっかけとなったバラード『ZUTTO』がヒットした意外な理由とは?

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永井真理子、最大のヒット曲『ZUTTO』

永井真理子が12枚目のシングルとして1990年10月にリリースした『ZUTTO』。
ボーイッシュなルックスで『Ready Steady Go!』や『ミラクルガール』元気ハツラツ系ソングを歌っていた永井真理子が大きな転換を果たすことになった大ヒットバラードである。

オリコン最高位は2位ながら、12週にわたりトップ10圏内に留まりロングヒット。
40万枚を売り上げ、永井真理子最大のヒット曲となった。
また、この『ZUTTO』で第42回NHK紅白歌合戦に初出場を果たしている。

【動画】永井真理子「ZUTTO」PV

それまでのイメージと異なり、落ち着いたオトナの表情で歌う永井真理子が新鮮だった。

当初はカップリングの予定だった『ZUTTO』

『ZUTTO』は、永井がレギュラー出演していたフジテレビ系のバラエティ番組『邦ちゃんのやまだかつてないテレビ』エンディングテーマに起用された。

フジテレビからオファーが来た際に、永井サイドのスタッフが推したのはシングルとしてリリース予定の『EVERYTHING』であった。
『ZUTTO』は、明るく元気な歌が多かった永井真理子が次の段階として、ファンや音楽関係者の反応を見るために実験的に『EVERYTHING』のカップリングに入れるつもりであった。

番組側は『EVERYTHING』ではなく、楽曲の良さに惹かれて『ZUTTO』を希望。
急遽、シングルのメインを『ZUTTO』に差し替えることになったのだった。
『ZUTTO』のシングルジャケット

『ZUTTO』のシングルジャケット

写真は『EVERYTHING』をイメージし、永井真理子が風の中をスポーツタイプの自転車で駆け抜けているものだったが差し替えがきかずそのまま使用。
文字位置を替えて『ZUTTO』がメインであることを分かってもらうようにした。
当時、『ZUTTO』のジャケットを見て、しっとりしたバラードである曲調とのギャップに違和感を感じていたが、こうしたタイアップ事情が理由であった。

従来とは違う路線で売れるかどうか不安だったという『ZUTTO』だが、最高視聴率20.4%を獲得した人気番組『邦ちゃんのやまだかつてないテレビ』の効果もあり、それまでを大きく上回る永井最大のヒット曲となった。

なお、『愛は勝つ』(KAN)や、『それが大事』(大事MANブラザーズバンド)も、この番組で起用されてヒットした歌である。

もし、フジテレビが『EVERYTHING』を起用していたら、『ZUTTO』はカップリングのままで埋もれてしまい、永井真理子のイメージチェンジも遅くなっていたのではないか。

こうして思わぬ形でシングルカットし、ヒットした『ZUTTO』によって永井真理子は歌唱力や表現力を兼ね備えたシンガーとして認められていった。

オトナになってわかってきた『ZUTTO』の歌詞

この曲を知った時、あどけなくキュートな永井真理子の印象と、曲名の『ZUTTO(ずっと)』から、ずっとイチャイチャ・ラブラブしていたいという歌詞かと思って聴いたが、全然違い驚いたことを覚えている。

描かれていたのは互いを尊重し、敬いながら”適度な”距離感を保っていこうというオトナの恋愛観であった。
ほどけた靴ひもそのままでいたい夜
Heartの字幕、孤独(ひとり)にしといてなの
あなたはそれをわかってくれる
たった一人の人
知らんぷりして明日のことを話してる
出典 永井真理子『ZUTTO』
ずっとずっとねェ こんな風にしてね
出典 永井真理子『ZUTTO』
彼女が落ち込んでいる時、安易に慰めたり励ましたりするわけでなく、心境を察してあえて『知らんぷり』する彼。
そんな彼のオトナな優しさに惹かれ、『ずっと ずっとねェ こんな風にしてね』と想う彼女。

当時、高校に入学したばかりで思春期の真っ只中だった私にはとても真似できない成熟した関係がそこにはあった。
あなたが入れたエスプレッソ飲んでいた
出典 永井真理子『ZUTTO』
まだ日本にスターバックスもタリーズも無かった時代、普段は甘い缶コーヒーぐらいしか飲まない高校生にとって『エスプレッソ』という響きは、とても大人びたものに感じられた。
2人は違う人間だから
一緒にいられるの
そばにいてもね別々の夢見られるよ
出典 永井真理子『ZUTTO』
「価値観が一緒だから好き」とか「あなたの夢を応援したい」というラブバラードにありがちな歌詞はなく、『2人は違う人間』というクールというかドライに感じるフレーズが並ぶ。

『別々の夢』という箇所から、相手の男性だけでなく、この女性自身にも果たしたい夢があり、自立していることが伺える。
ずっとずっとねェ 自由時間あげる
ずっとずっとねェ きらきらしてようよ
出典 永井真理子『ZUTTO』
2番のサビに出てくる『自由時間』の言葉。
『きらきら』しているために自由にしていいよということであろうかと。
ベタベタ、ナアナアな関係を避け、束縛しないから「心地よい距離感」を保っていこうという主張が伝わってくる。

『ずっと』一緒にいるために、距離を適度に保とうというスタンスに、当時はまったく共感できなかった。
だが、世間的に『おっさん』と言われるような歳になれば、「そういう関係っていいよなぁ」と素直に感じる歌詞である。
『ZUTTO』は作詞が亜伊林、作曲は藤井宏一。
「亜伊林」とは松田聖子・中森明菜・小泉今日子など女性アイドルから、沢田研二・郷ひろみ・光GENJIなど男性アーティスまで幅広く作詞を提供した三浦徳子の別名義。
永井真理子のもう一つの代表曲『ミラクルガール』も亜伊林(三浦徳子)の作詞である。

アーティストや曲に応じて、変幻自在な歌詞を生み出す三浦徳子が永井真理子にあえて「オトナの距離感」を主題にした歌詞を提供したのは、元気ハツラツ系の一辺倒からの脱却を強く意識した楽曲であったからだと推測できる。

歌詞をかみしめながら聴いて欲しい『ZUTTO』

永井真理子「ZUTTO」 (LIVE)

永井真理子「ZUTTO」 (LIVE)

永井真理子「ZUTTO」

本家Winkと、やまかつWink(山田邦子&横山知枝)の両Winkが歌唱に参加している貴重な動画。
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