長谷川和彦という監督を知っていますか?!
2023年2月25日 更新

長谷川和彦という監督を知っていますか?!

僅か2本の監督作のみで伝説的映画監督と化している長谷川和彦。それは何故か?言うまでもなく70年代に制作されたこの2作品があまりにも素晴らしいからにほかなりません。未だ熱烈な支持者を持っているのもそのためです。

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長谷川和彦を知ってますか?「いや、知らん」と即答される感がありますが、まぁ、確かにね。一般的に映画は好きでも製作スタッフにはあまり興味がない人って多いですもんね。しかも携わった作品が少ないとなれば、映画ファンであっても長谷川和彦を知る機会は限られる。結果、無名のような扱いを受けてしまうことになるかと思います。
しかし、長谷川和彦を知っていて損はない!彼が関わった作品は数こそ少ないながら、どれもこれもバツグンの面白さなんですよ。

濡れた荒野を走れ

シナリオライターとして注目されたのは、1973年の日活ロマンポルノ「濡れた荒野を走れ」です。ちょっと解説を覗いてみましょう!

日活ロマンP「濡れた荒野を走れ」1973年澤田幸弘監督の最高傑作にして長谷川和彦脚本作品です。

どうです?面白そうでしょう?まぁ、日活ロマンポルノってことでエロシーンを期待した方には残念かもしれませんが、普通に映画として見ると文句なしに面白いです。

続いて1974年に公開された「青春の蹉跌」がこれまた素晴らしかった。素晴らしかったのですが、当時の日本映画はどん底だ。萩原健一主演ということもあり注目されたのですが、どんなに素晴らしい映画であってもなかなか大ヒットしなかったのです。
時代は映画からテレビに移ってましたからね。で、長谷川和彦もテレビの仕事を手掛けます。それが大いに話題となったんですよ。

悪魔のようなあいつ

日本の映画界に大きな影響を与えた長谷川和彦。その長谷川和彦が一般的に知られるようになったのはテレビドラマ「悪魔のようなあいつ」です。いや、そうではないか。「悪魔のようなあいつ」は、お茶の間でも知られるようになった長谷川和彦の作品というべきですね。知られたのは作品で、長谷川和彦の名はまだこの時点では一般的には浸透してなかったように思います。
では、どの時点で長谷川和彦の名が浸透したのかといえば、今でも一般的には浸透していないような気がしないでもありません。。。しかしそれでも長谷川和彦が日本の映画界に与えた影響はデカイのです!この作品はその始まりといってよいでしょう。

まぁ、長谷川和彦を知っていようといまいと話題となっただけあって「悪魔のようなあいつ」はとにかく面白いです。
悪魔のようなあいつ

悪魔のようなあいつ

原作:阿久悠、上村一夫
監督:久世光彦
制作:TBS
放送局:TBS系
放送期間:1975年6月6日~1975年9月26日
話数:全17話
1968年12月に発生した3億円強奪事件。犯人の可門良(沢田研二)は、孤児院の先輩だった元刑事・野々村(藤竜也)の経営する高級クラブ「日蝕」で歌手として働いているが実は脳腫瘍に冒されており、余命いくばくもない身体であった。時効まであと半年となった時、金目当てに良をつけ狙う男、良の不思議な魅力に惹かれる女、3億円事件解決に執念を燃やす刑事たちが現れ、彼の運命を狂わせていく…。
良と野々村の関係がホモセクシャルを思わせ、沢田の持つ退廃的な雰囲気がフルに生かされた作品。加えて久世光彦(プロデューサー兼演出)の挑戦的な演出が随所に見られ、大胆なヌードシーンや多量の血しぶきが飛ぶ暴力シーンの数々は鮮烈にして強烈。劇中、3億円を命がけで守る良が野々村に「この金は、俺の青春なんだ!」と叫ぶシーンが印象的。この作品は、もう若くはない男と女が、青春の夢を果たした青年に自分の夢の残像を重ね合わせた末、命を落としていく哀しい物語なのである。
そもそもプロデューサーだの監督だのシナリオライターだのといった製作スタッフって一般的に名前はほんと知られていないわけですから長谷川和彦の名を知らなくても、そりゃ普通ってもんでしょう。問題なしです。問題はありませんが、知っておいて損はしない存在であることは確かです。

で、この「悪魔のようなあいつ」ですが、主演が沢田研二で、劇中で歌われる「時の過ぎゆくままに」が大ヒットしました。それだけでも話題性は十分ですが、沢田研二以外に、若山富三郎、藤竜也、荒木一郎、安田道代に篠ヒロコといった一癖も二癖もある実力者が脇を固め、当時飛ぶ鳥を落とす勢いの久世光彦が監督を務めていますからね。間違いなく一級の作品というわけです。

17-1 😈のようなあいつ 

ところで「悪魔のようなあいつ」で長谷川和彦は何をしているのかと言えば、彼はこの作品でも脚本を担当しています。「濡れた荒野を走れ」も「青春の蹉跌」も脚本担当です。
では、長谷川和彦は脚本家なのか?と言われると否定も肯定もしにくいのですよ、実は。
長谷川和彦は監督。それも映画監督!で、いいと思うのですが、いかんせん監督作品は僅かに2作品。シナリオライターとしての仕事の方が多いときてるところが否定も肯定もできない理由です。
それなのになぜ映画監督なのか?と言われれば、その2作品があまりにも素晴らしいからなんですよね。

青春の殺人者

待望の監督デビューは1976年。作品は中上健次原作の「蛇淫」を脚色した「青春の殺人者」。主演は若き水谷豊。ヒロインには原田美枝子だ。
それまでにも監督の話はいくつかあったようですが、ようやくチャンスが巡ってきたわけですね。長谷川和彦は30歳。新鋭映画監督の誕生です。
青春の殺人者

青春の殺人者

監督:長谷川和彦
脚本:田村孟
原作:中上健次
製作:今村昌平、大塚和
製作総指揮:多賀祥介
出演者:水谷豊、原田美枝子
音楽:ゴダイゴ
撮影:鈴木達夫
編集:山地早智子
製作会社:今村プロ、綜映社、ATG
配給:ATG
公開:1976年10月23日
上映時間:132分
不確かな理由で両親を殺害してしまった青年の破滅への道を冷徹なまなざしで描いた衝撃作。厳格な両親のもと、溺愛されて育った22歳の青年、斉木順。親に与えられたスナックの経営を始めるが、ある日、両親にスナックで手伝いをしている幼なじみのケイ子と別れるよう迫られる。口論の末、父親を殺してしまい、さらには行き違いから母親までも刺し殺してしまう……。
当時は長谷川和彦が映画を撮るということが話題とまるほど注目されていました。業界や映画ファンの期待が大きかった「青春の殺人者」は裏切ることなく各方面から、高い評価を受けキネマ旬報ベスト・ワンに選出されています。因みに新人監督の第1回作品がベスト・ワンになるのは異例のことだったそうですよ。

青春の殺人者 水谷豊

注目を集め評価も高かった「青春の殺人者」ですが、製作費は僅か3500万円。1976年のこととはいえ、厳しい。しかも長谷川和彦はそのうちの1500万円は自腹を切ったといいます。封切上映は日本中で4館だけだったそうですから仕方のない事なのでしょうけど…
当然のように長谷川和彦はノーギャラ、ついでに水谷豊もノーギャラだったのだそうです。水谷豊はテレビドラマ「傷だらけの天使」で一躍人気者となっていた時期ですよ。これってやっぱり役者魂!というやつなのでしょうね。水谷豊もこの作品に情熱を注いでいたということでしょう。他の出演者、スタッフも含め、この情熱が「青春の殺人者」を面白くしていることは間違いありません。

太陽を盗んだ男

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