【訃報】昭和史ノンフィクション作家・半藤一利さん死去。
「日本のいちばん長い日」など、昭和史に関する多数のノンフィクションを発表したことで著名な作家・半藤一利(はんどう かずとし)さんが12日、東京都内の自宅で亡くなっていたことが明らかとなりました。90歳でした。
第一報はこちらです!
「日本のいちばん長い日」や「ノモンハンの夏」などの作品や昭和史の研究で知られ、戦争などをテーマに数多くの作品を発表してきた、作家の半藤一利さんが亡くなりました。90歳でした。https://t.co/WrXOuLgh74
— NHK科学文化部 (@nhk_kabun) January 12, 2021
半藤さんは1930年、東京府東京市生まれ。東京大学文学部卒業後、1953年に文藝春秋新社に入社。そこで仕事で関わった作家・坂口安吾などの影響で日本中の戦争体験者の取材に携わるようになり、1965年に単行本「日本のいちばん長い日--運命の八月十五日」を執筆。あらゆる取材を通じて、それまでベールに包まれていた終戦への過程を描写しました。その後も昭和史を中心とした執筆を続け、1998年には「ノモンハンの夏」で山本七平賞、2006年には「昭和史」で毎日出版文化賞特別賞を受賞しています。また、妻が夏目漱石の孫であることでも有名であり、1993年には「漱石先生ぞな、もし」で新田次郎文学賞を受賞するなど、漱石関連の著作も数多く発表していました。
「日本のいちばん長い日」二度の映画化を振り返る。
半藤さんを語る上で外せない代表作である「日本のいちばん長い日」ですが、1967年と2015年の二度にわたって映画化されています。ここでは、二度の映画化について軽く振り返っておきましょう。
1967年版
まずご紹介するのは、1967年公開の岡本喜八監督による東宝映画「日本のいちばん長い日」。撮影に関して可能な限り事実に基づく描写にこだわり、「この戦争で300万人が死んだ」という文言をラストに加えるなど、娯楽作品というよりもこの映画を製作することの意義に重点が置かれた作品でした。「昭和天皇自身が鑑賞した」ことでも有名です。なお、本作以降「東宝8.15シリーズ」として「海軍特別年少兵」など6本の同様の映画が製作されています。
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2015年版
2015年公開の原田眞人監督による松竹映画「日本のいちばん長い日 THE EMPEROR IN AUGUST」。半藤さんの「日本のいちばん長い日」に加え「昭和天皇実録」「聖断 昭和天皇と鈴木貫太郎」の要素も加えた作品であり、鈴木貫太郎首相、阿南惟幾陸相、そして昭和天皇を「父、長男、次男」と解釈し、「家族」をテーマにした作品作りが行われています。また大東亜戦争を題材とする映画の中で、「昭和天皇」を明確に描写した最初の日本映画ともされています。
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二度の映画化を果たし、昭和~平成期を通じて日本人の戦争観に大きな影響を与えた「日本のいちばん長い日」。その執筆に携わった半藤さんの功績は、これからも語り継がれていくことでしょう。ご冥福をお祈り申し上げます。