『ガンプラり歩き旅』その20 ~栄光の初代HG 1/144 ガンダムを追え!~
2017年7月26日 更新

『ガンプラり歩き旅』その20 ~栄光の初代HG 1/144 ガンダムを追え!~

ガンプラ! あの熱きガンダムブーム。あの時代を生きた男子であれば、誰もが胸高鳴り、玩具屋や文房具屋を探し求め走ったガンプラを、今改めて当時のキットから現代キットまで発売年代順に、メカ単位での紹介をする大好評連載の第20回は、ガンプラの歴史の闇へ消え去った、栄光の「初代HG 1/144 ガンダム」を紹介します!

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朝日ソノラマ文庫版『機動戦士ガンダムⅢ』の表紙を再現!...

朝日ソノラマ文庫版『機動戦士ガンダムⅢ』の表紙を再現! 理由は本文後半にて!

私、市川大河が、書評サイトシミルボンで連載している、 『機動戦士ガンダムを読む!』での、再現画像で使用しているガンプラを、 古い物から最新の物まで片っ端から紹介していこうというテーマのこの記事。

前回までは、80年代初頭のガンプラブームの(基本その後リメイクされなかった)メカのキットを中心に紹介してきたが、 今回からは90年代以降の、いわゆる「HG」路線を中心に、1/144スケールを軸に、最初のアニメ『機動戦士ガンダム』(1979年)に登場したメカを、可能な限り全て紹介していこうと思っております!
その第1弾は、ガンプラ10周年記念モデルでもある、ガンプラで初めて「HG」の冠を掲げた、栄光のHigh Gradeガンダムを紹介していきます。


ガンダム 1/144 HG 1990年3月発売 1000円

栄光の、HG第1号であるガンダムのボックスアート。基本...

栄光の、HG第1号であるガンダムのボックスアート。基本デザインは今のHGUCでも変わっておらず、むしろ現行のキットのボックスとしても、充分通用するデザインとセンスが、既に完成形で出来上がっている

これまで、この『ガンプラり歩き旅』で扱ってきたように、ガンプラは1980年のスタートから、1983年までの間に、『機動戦士ガンダム』(1979年)に登場したモビルスーツは全てプラモデル化し終わり、その後「モビルスーツバリエーション(MSV)」や、『機動戦士Zガンダム』(1985年)『機動戦士ガンダムZZ』(1986年)『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(1988年)『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』(1989年)等々、テレビ、映画、OVAで新作ガンダムを作り、そこで登場するモビルスーツをプラモデル化するというビジネスで、ガンプラ市場は成り立っていた。

そこで驚くべきは、バンダイという企業が、ガンダムのプラモデル「ガンプラ」を、自社を急成長させた貴重な資産であるという自覚を強く抱いた結果、1980年のシリーズ開始以来、2017年の現代に至るまでにおいても、基本としては絶版品を出さず、常に定期的に再生産販売を繰り返すという方針を貫いていることである。

基本的に、こういったマスコミ玩具(テレビや漫画のキャラの玩具や模型)ビジネスは、映像作品放映終了後は速やかに契約と共に商品金型が破棄されたり、商品が絶版になることが多いが、ことガンプラの場合、エンドユーザー市場層が広すぎて、また、どの時代どの時代のキットも、技術面でこそ時代進化による明確な進歩の差があれど、「キットの味わい」そのものは世代単位で愛されていて、旧キットといえど、おいそれと絶版には出来ない状況が続いた。
ガンプラ10年の技術革新を結集させたガンダムの雄姿!

ガンプラ10年の技術革新を結集させたガンダムの雄姿!

事実上は、ガンプラ初期隆盛期の仇花である、1/20 キャラコレや、1/220 情景模型シリーズ、1/250 色プラシリーズなどは、基本的に再生産されることはないが、逆をいえばそれら以外は、1980年の初代1/144 ガンダムから始まって、1/144 武器セットや1/550 モビル・アーマーシリーズなど、今やアンティークトイの領域に入ろうかという初期のガンプラも、それらにはそれらに思い入れがあるユーザーもいるという配慮で、2010年代の今でも再販がかかったりもするのだ(だから筆者も『機動戦士ガンダムを読む!』再現画像で、初期ガンプラをアイテムとして使えたのだ)。

これは、事業面で考えるとものすごいことで、もちろん37年間に渡るガンプラの商品点数は莫大に増えたので、おいそれと再販の順番が回ってくるとは言い切れないが、逆を言えば、気長に待ってさえいれば、プレミア価格の当時品に手を出さなくても(バンザイマークの箱が欲しいとかでなければ)、ちゃんと定価で買える順番が回ってくるという、すさまじいロングスパンの供給サービスが完備されているのである。

しかし、そんなガンプラの歴史の中で、「自然消滅ではない」明確に「このキットは、今回を持ちまして絶版とさせていただきます」と、予めアナウンスされて絶版になったガンプラが、たった一つだけ存在するのだ。
「それ」が、今回紹介する、「1/144 初代HGガンダム」なのである!
順を追って、まずはHGガンダムの成り立ちから解説していこう。
80年代後半、ぶっちゃけ、ガンプラはその売り上げがピーク時より落ち、期待値を下回る結果が続くようになっていった。
バンダイは、新しいガンプラ新商品を作るためには、その素材となる新作アニメガンダムをスポンサードしなければならず、しかし、上記したこの時期までの新作ガンダムは、決して駄作はなかったものの、ガンプラのビジネス数字的には苦戦を強いられていた。
それは「ガンダム物語世界の進行による、世界観設定の複雑化」や「モビルスーツデザインの幅が広がり過ぎて、独自性に欠けた」等が主な原因であり、しかし一方、初代のガンダムやザク、MSV等のファンは根強く、それらの旧キットの再販がかかるたびに買い支えるファンの恩恵もあって、そのバランスの上でガンプラビジネスは成り立っていた(これが、現在に至る「絶版品を生まない主義」に繋がる)。

一方で、難解になり過ぎた作品世界やロボット設定を迂回するかのように、当時から台頭し始めた「SDガンダム」という、2頭身ディフォルメガンダムのキャラクターグッズが大ヒットして、80年代後半は、売り上げ的にはSDの方が本来のガンプラを上回る逆転現象が巻き起こっていた(ちなみに、SDビジネスはガンダムに限らず、ウルトラマン、ゴジラ、仮面ライダーなどでも展開されていた)。
実際、劇場用映画新作の『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』と『機動戦士ガンダムF91』(1991年)では、保険のように『SDガンダム』のアニメが同時上映されている。
箱に同封されている3冊の冊子。一つは当然組み立て説明書...

箱に同封されている3冊の冊子。一つは当然組み立て説明書だが、後の2冊は当時のバンダイのカタログであり、中を見るとガンダムもウルトラマンも、SD全盛期だったことが分かる

バンダイやサンライズは悩んだ。
映像作品の新作を作らなければ新作のガンプラは作れない状況で、しかし新作のガンプラは、旧作商品やSD商品に挟まれ、伸び悩んでいる状態にあることを。
そこでバンダイとサンライズは、一つの実験に踏み出てみた。
旧作のガンダムやザク、ドムやズゴックのプラモデルがまだ売れ続けているのだとしたら、それらをデザインリファインし、最新の技術でプラモデル化すればいいのではないかという、今では当たり前になっているアイディア。
「1979年当時のアニメーション技術では簡略化されて描かれていたけれども、ザクもドムもズゴックもジムも、本当はこれぐらい精密なデザインだったんです」を、念には念を入れて、『機動戦士ガンダム』の番外編という形でOVAで映像作品を作り、そこに登場させてアリバイを作る。それが『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』であり、そのガンプラ商品群であった。
初代HGガンダムのサイドビュー

初代HGガンダムのサイドビュー

しかし、当時まだ「最新技術で、デザインをリファインしてVe.2を出す」商法に前歴と実績が皆無だったため、保険に保険をかけるために、『機動戦士ガンダム0080』に登場するザクやドムやゲルググやズゴックは、ガンプラ発売が決まった時には、結果的には全て『機動戦士ガンダム』のザクやゲルググとは別のモビルスーツとして設定やネーミングが変えられ、ガンプラ化されることになった。
幸か不幸か、そこでの「別機体設定」も、これはこれで、90年代からのガンプラビジネスで、じわじわとメインストリームに伸びていくのであるが、それはまた別の話。

やはりバンダイにとっては、社を支え、発展させてくれた功労者たるガンダムというコンテンツを「まるで当初のデザインが無かったかのように」刷新するだけの意気込みは足踏みを呼び、まずは『0080』の「別機体群」で様子を見たところ、同時期の『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』のガンプラと同等の、当初の期待値を大きく上回る結果を出し、その結果は次なる挑戦への担保となって「禁断の扉」を開けるアリバイとなり、礎となったのだ。
初代HGガンダムのリアビュー。アニメ版では存在があった...

初代HGガンダムのリアビュー。アニメ版では存在があったりなかったりした、ガンダムのバックパックのバーニアノズルを、公式に立体に取り入れた初めてのガンプラである

そして、ガンプラという商品カテゴリが10周年を迎えようとする1990年に向けて、一つのプロジェクトが動き出した。

“究極のRX-78”ガンダム”

それは、雑誌『ホビージャパン』とも連動し、高らかに謳い上げられたテーマでいやがおうにも盛り上げられた。
1990年を迎えようとするタイミング、この頃既にガンプラは、ポリキャップやビス、ボールジョイント等を標準装備することで、ガンプラスタート時とは比較にならないほどに、技術力を高めていた。
それらの全てを注ぎ込んで、究極の1/144 ガンダムを商品化する!という、いささか肩に力が入り過ぎたそのプロジェクトは、しかし、ガンプラの総本山のバンダイが「これが決定版の1/144 ガンダムです」と新商品を出せば、今まで(作品世界も商品も)未来へ、未来へと突き進んでいたガンプラの、歴史を上書きする前例のない挑戦だけに、ある種の社運がかかっていたのだろうとも推察できる。

その“究極”を示す冠として「HG(High Grade)」という商品カテゴリがこの時生み出され、その後テレビで展開された『機動戦士Vガンダム』(1993年)『機動武闘伝Gガンダム』(1994年)等でも、1/100キットにその冠を受け継ぎ、後は皆さんご存知のとおり、HGUCシリーズなどに、冠もパッケージデザインも受け継がれるのだが。
HGシリーズの歴代の「RX-78 ガンダム」のボックス...

HGシリーズの歴代の「RX-78 ガンダム」のボックスを縦に全部並べてみた。10年スパンの違和感が全くないばかりか、旧HGのボックスアート画調は最新のREVIBE版に近い

その「HG」第1号が、今回紹介する「1/144 HG RX-78 ガンダム」だった(当時はまだ機体ナンバーが「RX-78-2」ではなかった)。

1990年春、ガンプラ10周年の満を持して発売された、そのバンダイの社運がかかった「HGガンダム」を初めて手にしたガンプラユーザーは、皆衝撃を受けた。

箱を開けて中身を見た瞬間、度肝を抜かれた。
イマドキのガンプラから参入した世代には信じられないかもしれないが、それまでのガンプラユーザーにとってガンプラとは「パーツを接着剤で接着して、塗料で塗装する」という、当たり前のプラモデルの常識の産物であった(接着不要仕様は、『Zガンダム』の1/220キットや、直前期の『逆襲のシャア』ガンプラから導入されていたが、前者は模型としての仕様が食玩的なレベルゆえであり、後者は接着剤が要らない代わりに、ビス止めが必要であった)。
しかしこのキットは、接着剤が完全不要で、はめ込みだけの組み立てキット(スナップフィット)であり、また、一つのパーツが何色にも分けて成型されている、フルカラーリングの塗装不要キットであったのだ。
箱を開けてすぐの状態。黒地に金色の「HG」が高級感を醸...

箱を開けてすぐの状態。黒地に金色の「HG」が高級感を醸し出す。

ランナー層の最上部に、これみよがしに配置された、システ...

ランナー層の最上部に、これみよがしに配置された、システムインジェクションランナー

過去にも「彩色済みキット」と称して、既存の旧キットに、生産ラインで塗装した者が売られていた時期はあったし、今のHGUC等のように、パーツ単位で成型色を変え、そのパーツを組み合わせることで、多彩色の機体を再現するという設計は、既に80年代終盤から『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』キット群等でも既に取り入れられていたが、なんとこのキット、ランナーに付いている状態のパーツが、ガンダムのボディの前半分パーツであれば、それがそれで1パーツなのに、多方向からの異なる色のプラ素材の流し込み製法によって、いきなり赤、青、黄色の三色で一つのパーツが成型されているのだ(この手法は、今のランナー内パーツ単位色配置と区別するため、「システムインジェクション」と呼ばれている)。
HGガンダムの全ランナー。MSジョイントⅡを入れても全...

HGガンダムの全ランナー。MSジョイントⅡを入れても全5枚と、完成品を見て想像するよりはるかにパーツ数は少ない

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