しかし、そんな“失敗シリーズ”でも、最後の賭けに出たのが本商品であり、それは「1/35に拘る」「実存兵器テイストに拘る」の、シリーズ当初の志を持ち込みながらも、過去のガンプラで、誰もが一度は思いつきつつ、その思い付きを組み込めるシリーズが無かったがゆえに実現化しなかったとも言える「1/35のボリュームと大きさ」で「各部ディテールや解像度が緻密」かつ「『機動戦士ガンダム』の、ある角度での真の主役」を単独キット化するという、バンダイ側の挑戦と試みが、見事長年のガンプラユーザーのツボを突いて、結果が果たせられたのが、今回のこの「U.C. HARD GRAPH 1/35 地球連邦軍 多目的軽戦闘機 FF-X7 コア・ファイター」だったのである。
キットの難易度も、HGUC以上、MG以下のレベルに抑えられており、塗装も、翼端灯や細部のディテール以外は、基本的な赤、青、白、グレーに関しては、淡い色調にアレンジされているものの、キットの成型色分けでほぼ完璧に仕上がる。
着陸脚や、キャノピーのクリアパーツはもちろん完備。劇中で使用シーンのあった、ボディからの小型ミサイルの連射ギミックも、発射展開状態がしっかり再現されている。
着陸脚や、キャノピーのクリアパーツはもちろん完備。劇中で使用シーンのあった、ボディからの小型ミサイルの連射ギミックも、発射展開状態がしっかり再現されている。
また、可動ギミックとしては、機体両脇のインテークの可動ギミックや、垂直尾翼の方向舵(ラダー)の可動に加え、このキットは単独でコア・ブロックに変形することが可能で、またその際には、コクピットが変形との連動で90度回転し、ガンダム時のシート位置に移動するというツボを突くギミックも付属している。
こうなると、当然無茶ブリのネタ的に「このコア・ファイターが収容できるガンダムが欲しいよなぁ」とか言い出す人(馬鹿)が出てくるが、大概においてこの手の趣味の世界では、そういう無茶要求を言い出す人ほど、いざ発売されても買わない法則というのが存在している。
現実的に望むなら、せいぜいが、せっかく主翼がたためるのだから、同スケールのコア・ブースターユニットをプレバンで、とかだったらまだ可能性がなくもないが、1/35 ガンダムなんて、価格設定どころか、置き場所がまず普通に無いだろう。
現実的に望むなら、せいぜいが、せっかく主翼がたためるのだから、同スケールのコア・ブースターユニットをプレバンで、とかだったらまだ可能性がなくもないが、1/35 ガンダムなんて、価格設定どころか、置き場所がまず普通に無いだろう。
もっとも、バンダイはたまに純金製フィギュアとかの「損得とか需要とかを抜きにした、出オチ商品」を突発的に送り出してくるので、1/35 ガンダムも絶対にありえないとは言い切れないのだが、どうやら今のところはマニアネタでとどまっているらしい。
さて、このキットの、肝心のコア・ファイターとしてのスタイリングは、コア・ブロックへの変形が災いしてか、若干のトップヘビーなプロポーションになってしまっている。コクピットからノーズへの部分が、メインボディに対して少し大きすぎるのだ。
それでも、写真紹介では(ギミックを固定しての撮影が不可能なため)オミットしたが、キャノピーの開き方も、アニメでの演出通り、スライドとパックオープンと2通り再現されているし、そのコクピット周りのディテールも細かい。
U.C. HARD GRAPHの名に恥じず、後部エンジン回りの作りも精密で、なるほど1/35 戦闘機のプラモデルの設計概念を、上手くSFメカに落とし込んでいると納得できる佳作キット。
今回は『機動戦士ガンダムを読む!』では、コア・ファイターの出番としてではなく、主にコア・ブースターのコクピット周りを演出する際に、その解像度とディテールを活用させていただいた。
今回は『機動戦士ガンダムを読む!』では、コア・ファイターの出番としてではなく、主にコア・ブースターのコクピット周りを演出する際に、その解像度とディテールを活用させていただいた。
アニメ『機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙編』(1982年)では、セイラやスレッガーが、コア・ブースターで攻撃を行う演出で、コクピットのキャラの演技を描写したまま、背景でコア・ブースターのメガ粒子砲が発射される演出が多々見らた。それは、このキットを使ってもそのシーンの再現にはならないが、少なくともコア・ブースターのコクピットの演出に関してはディテール感が増したと自負している。