イケメン細マッチョの殺し屋がカッコイイ「クライングフリーマン」
2021年6月12日 更新

イケメン細マッチョの殺し屋がカッコイイ「クライングフリーマン」

ビックコミックスピリッツにかつて連載されていた、小池一夫・池上遼一コンビの代表作「クライングフリーマン」。数奇な運命をたどるカッコいい殺し屋の話ですが、この作品自体もまた数奇な運命をたどりました。

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「クライングフリーマン」美しさと哀しさをまとった殺し屋

黄金期のスピリッツの定番ラインナップ

「クライングフリーマン」は、小学館「ビックコミックスピリッツ」にて1986年4月から1988年5月まで連載された、小池一夫原作、池上遼一作画による青年マンガです。
ビッグコミック・スピリッツ1986/06/30日号

ビッグコミック・スピリッツ1986/06/30日号

このころ隔週刊から週刊になったスピリッツ、「美味しんぼ」は好評連載中、一世を風靡した「めぞん一刻」はそろそろ終盤、スピリッツ黄金時代をもりあげた連載陣に「クライングフリーマン」は入っています。

これまでにはいなかった、イケメンでナイーブな殺し屋

チャイニーズマフィア「百八竜(ハンドレッド・エイト・ドラゴン)」により殺し屋に改造されてしまった日本人陶芸家「火野村窯(ひのむら・よう)」が、殺人を行うたびに涙を流すという設定から「クライングフリーマン」のタイトルがつけられています。

その名の通り、殺し屋でありながらナイーブであり、涼やかな目元のルックスと、ガチムチでなく細マッチョな体形の主人公は、それまでのピカレスクコミックにはない、美しさと哀しさを持ったヒーローとして描かれました。
Cryingフリーマン 1 (ビッグコミックス) (日本語)

Cryingフリーマン 1 (ビッグコミックス) (日本語)

マッチョでタトゥーもがっつり入っているのに、こんなにしゅっとした印象の殺し屋は、これまで登場していなかったと思います。
この表紙は小学館のスピリッツコミックスですが、後年デラックス版を出版した小池書院によれば、2011年ごろまでに全世界で単行本累計1000万部を記録しているとのことです。

あらすじ

陶芸家の火野村窯は個展会場でチャイニーズ・マフィア「百八竜」の殺人場面が写されたフィルムの授受に巻き込まれ、拘束され、強力な催眠によって殺し屋に仕立て上げられる。刺客としての才能を買われ、竜の刺青とコードネーム「フリーマン」を与えられた窯は、殺人後に己の宿命を思い涙を流すことから、「クライング・フリーマン」と呼ばれるようになった。
香港でフリーマンの殺人を目撃した画家の日野絵霧(ひのえむ)は、目撃者として殺されることを覚悟すると同時に、涙を流す窯を受け入れ、窯も凛とした絵霧に惹かれ、互いに愛し合うようになる。
「百八竜」内外の抗争に翻弄されながらも、お互いを唯一の半身として定めた二人は、子孫を残さないという組織の掟に基づき不妊手術を行い、日本人としての名を捨て組織の頭領として生きていくと決める。

ギャップ萌えな「フェミニストな殺し屋」

このようなピカレスクロマンの場合、スーパーヒーローたる主人公は一人でも、そこに絡む女性はハレムのように何人も登場するのが常でしたが、「クライングフリーマン」のヒロインは日野絵霧ひとりです。この二人が結ばれるときに、どちらも未経験だと描かれていて、互いに初めての相手と添い遂げることになります。もちろん小池一夫と池上遼一ですから、エロシーンも満載されている作品なのですが、妻を守り気遣い大切にするフェミニストの殺し屋は、今でいう「ギャップ萌え」要素にあふれたヒーローだったのです。
カラーページも美麗ですが、モノクロのコマも本当にきれい。池上遼一の描く人物の美しさは格別です。

「クライングフリーマン」という作品の数奇な運命

悪の組織だったはずが

そもそも「クライングフリーマン」は、「百八竜」というチャイニーズマフィアに拘束され巻き込まれた主人公が、暗黒の組織の中で涙を流し葛藤するドラマでした。

ですがいつの間にか「百八竜」という組織は悪の根源ではなく、主人公が妻とともに統率し、他の強大な組織との闘いに立ち向かってそれを倒し、守るべきターゲットに変わっていきました。

それには理由があります。

実在した「百八竜」

中国にはかつて青幣(チンパン)と呼ばれる、アヘンや賭博・売春を行う秘密地下結社が数多く存在したのですが、その一つに「百八竜」という組織が実在したのです。
その組織が来日し、ビックコミックスピリッツ編集部に呼び出しをかけてきて、編集長も作画の池上遼一も対応しない中、原作の小池一夫が高輪プリンスの14階スイートまで出向いたそうです。
で、いざ行ったら薄気味の悪い連中が4~5人いてね、”あなた今、私たちのことを描いているね。どう展開するか?”って聞いてくるんですよ。それで僕が”どう展開するかなんて考えていない、これからだ”って返したら、向こうは”でもなかなか面白い、これからもよろしく頼む”って言って、高級時計を僕にくれるんです(笑)。・・・それからあの組織(百八竜)のことを悪く書けなくなっちゃった。
出典 『小池一夫伝説』162p 大西祥平著 2011年 洋泉社
そもそも煩悩を表す「百八」に竜をつけただけのネーミングが、そんな大事になるなど思ってもみなかったでしょう。
青幣組織の全貌は現在も不透明な部分が多く、「百八竜」がどのような組織なのかもわかってはいませんが、実際にスピリッツ編集部に抗議の連絡があったことは確かで、路線変更をしないとどのような目に合うかわかりません。
結果的に「百八竜」を中心にした勧善懲悪的なストーリー展開となり、当初に設定されていた「悪の組織の中で刺客として動く葛藤と哀しみ」というテーマはどこかに消えてしまいました。
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