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グループと不良のダブル攻撃にさらされる憂鬱な日々が続き、内藤大助の体に異変が起こった。
下痢が止まらなくなり、トイレに行く回数が増え、授業中もトイレが我慢できなくなり、手を挙げて
「先生、トイレ行ってきていいですか?」
学校で大をするだけでも恥ずかしいのに、授業中、みんなの前で、それを申告し、クスクス笑う声を聞きながら教室を出ると
「汚っねえ、ボンビー。
またクソしにいったよ」
というアイツの声と大きな笑い声。
それを聞いて、さらにまたお腹が痛くなった。
下痢が止まらなくなり、トイレに行く回数が増え、授業中もトイレが我慢できなくなり、手を挙げて
「先生、トイレ行ってきていいですか?」
学校で大をするだけでも恥ずかしいのに、授業中、みんなの前で、それを申告し、クスクス笑う声を聞きながら教室を出ると
「汚っねえ、ボンビー。
またクソしにいったよ」
というアイツの声と大きな笑い声。
それを聞いて、さらにまたお腹が痛くなった。
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ある日、ついに
「おかあ、最近ずっとお腹が痛いんだ。
病院に連れてって欲しいんだけど」
と打ち明け、翌日、学校を休んで母親と病院にいくと医師は、胃カメラをするといい、検査の結果、胃潰瘍であることがわかった。
内藤大助は、胃潰瘍という言葉も、どんな病気なのかということも知らず、ましてやその原因ががイジメによるストレスであるなど思いもよらなかった。
胃の穴が開きそうになるほど精神的に追い詰められていた内藤大助は、その後、1日3回、食後に薬を飲むことになり、ある日、給食の後、薬を飲んでいると
「何飲んでるんだ?
どこか悪いのか」
と美術の教師に声をかけられた。
「胃潰瘍っていうのができちゃって」
すると教師は驚きながら
「お前、中学生で胃潰瘍になったのか」
「そうなんです」
内藤大助は、そういいながら
(もしかしたらイジメに気づいてもらえるかもしれない)
と期待したが、教師は
「ハッハッハッハッ」
と豪快に笑った後、
「中学生から胃潰瘍じゃ、お前、長生きできないぞ」
といった。
「おかあ、最近ずっとお腹が痛いんだ。
病院に連れてって欲しいんだけど」
と打ち明け、翌日、学校を休んで母親と病院にいくと医師は、胃カメラをするといい、検査の結果、胃潰瘍であることがわかった。
内藤大助は、胃潰瘍という言葉も、どんな病気なのかということも知らず、ましてやその原因ががイジメによるストレスであるなど思いもよらなかった。
胃の穴が開きそうになるほど精神的に追い詰められていた内藤大助は、その後、1日3回、食後に薬を飲むことになり、ある日、給食の後、薬を飲んでいると
「何飲んでるんだ?
どこか悪いのか」
と美術の教師に声をかけられた。
「胃潰瘍っていうのができちゃって」
すると教師は驚きながら
「お前、中学生で胃潰瘍になったのか」
「そうなんです」
内藤大助は、そういいながら
(もしかしたらイジメに気づいてもらえるかもしれない)
と期待したが、教師は
「ハッハッハッハッ」
と豪快に笑った後、
「中学生から胃潰瘍じゃ、お前、長生きできないぞ」
といった。
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ある日の昼休み、3年生の番長に呼ばれ、体育館へいくと
「〇〇がオレの悪口いってなかったか?」
〇〇とはアイツのことで、3年生の先輩に目をつけられていることがわかった。
内藤大助が答えられずにいると、番長は、
「絶対にいわないから」
それを聞いて、
(もしかしたらアイツをやっつけてくれるかもしれない)
と思った内藤大助は
「絶対にいわないでくださいね」
と念を押した後、アイツが先輩のことをバカにしていることを正直に話した。
「やっぱりそうか。
よく教えてくれたな」
番長は、そういって去っていった。
「〇〇がオレの悪口いってなかったか?」
〇〇とはアイツのことで、3年生の先輩に目をつけられていることがわかった。
内藤大助が答えられずにいると、番長は、
「絶対にいわないから」
それを聞いて、
(もしかしたらアイツをやっつけてくれるかもしれない)
と思った内藤大助は
「絶対にいわないでくださいね」
と念を押した後、アイツが先輩のことをバカにしていることを正直に話した。
「やっぱりそうか。
よく教えてくれたな」
番長は、そういって去っていった。
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その日の放課後、グループのメンバーに
「サッカーの練習するんだけど、お前も一緒にやろうぜ」
と誘われ、うれしくなってグラウンドに出た。
そしてシュートの練習をしているとアイツが蹴ったボールが大きく外れてゴールの後ろの茂みの中へ。
全員が茂みに入ってボール探しが始まった。
散らばって探していたはずなのに、気づけば内藤大助は取り囲まれていた。
「お前、今日、体育館でなんかあったよな」
(裏切られた?)
と思いながら、
「なんにも」
とトボけたが、心臓は高鳴り、足はガクガク震えていた。
「ウソつけ!」
「オレらのこを告げ口したろ!」
「オレたちその場にいたんだからな」
激怒するアイツとグループのメンバーは、
昼休みにかくれんぼをして遊んでいて、偶然、体育館で番長と話す内藤大助を見つけたという。
「なんにもいってないって」
内藤大助はシラを切ったが
「ウソいえ。
悪口いってますってチクったろ」
といいながら内藤大助の胸ぐらをつかんで顔面をパンチ。
火花が飛ぶような痛さと恐怖にしゃがみ込み、泣き出した内藤大助は、代わる代わる殴られ、蹴られた。
やがて暴力が止み、体を丸めながら大泣きしている内藤大助は、
「考えてみろ。
今あっちについたって、卒業していなくなったら、あと1年地獄だぞ」
「オレらについたほうがいいに決まったんだろ」
「お前は仲間だ。
頼むぞ。
2度と裏切んな」
「大丈夫だ。
オレたちがついてっから」
と優しい言葉をかけられ、リンチの発覚を恐れたのか、アイツは
「△△ち寄って顔冷やしてくか」
といった。
「サッカーの練習するんだけど、お前も一緒にやろうぜ」
と誘われ、うれしくなってグラウンドに出た。
そしてシュートの練習をしているとアイツが蹴ったボールが大きく外れてゴールの後ろの茂みの中へ。
全員が茂みに入ってボール探しが始まった。
散らばって探していたはずなのに、気づけば内藤大助は取り囲まれていた。
「お前、今日、体育館でなんかあったよな」
(裏切られた?)
と思いながら、
「なんにも」
とトボけたが、心臓は高鳴り、足はガクガク震えていた。
「ウソつけ!」
「オレらのこを告げ口したろ!」
「オレたちその場にいたんだからな」
激怒するアイツとグループのメンバーは、
昼休みにかくれんぼをして遊んでいて、偶然、体育館で番長と話す内藤大助を見つけたという。
「なんにもいってないって」
内藤大助はシラを切ったが
「ウソいえ。
悪口いってますってチクったろ」
といいながら内藤大助の胸ぐらをつかんで顔面をパンチ。
火花が飛ぶような痛さと恐怖にしゃがみ込み、泣き出した内藤大助は、代わる代わる殴られ、蹴られた。
やがて暴力が止み、体を丸めながら大泣きしている内藤大助は、
「考えてみろ。
今あっちについたって、卒業していなくなったら、あと1年地獄だぞ」
「オレらについたほうがいいに決まったんだろ」
「お前は仲間だ。
頼むぞ。
2度と裏切んな」
「大丈夫だ。
オレたちがついてっから」
と優しい言葉をかけられ、リンチの発覚を恐れたのか、アイツは
「△△ち寄って顔冷やしてくか」
といった。
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解放された内藤大助は、1人泣きながら歩いた。
家に着いても涙が止まらず、母親や兄にバレないようあちこちを歩いた。
人気のない夜道を1人さまよいながら、自分の人生に絶望し、
「神様なんていない。
絶対いない」
と思った。
中学2年生から3年生に上がるとき、クラス替えはなく、最悪の日々は卒業するまで続いた。
内藤大助は、後ろから殴られないようにいつも教室の隅っこにいて、いつもビクビクし
「生きた心地がしなかった」
家に着いても涙が止まらず、母親や兄にバレないようあちこちを歩いた。
人気のない夜道を1人さまよいながら、自分の人生に絶望し、
「神様なんていない。
絶対いない」
と思った。
中学2年生から3年生に上がるとき、クラス替えはなく、最悪の日々は卒業するまで続いた。
内藤大助は、後ろから殴られないようにいつも教室の隅っこにいて、いつもビクビクし
「生きた心地がしなかった」
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内藤大助は地獄の中学校を卒業すると、アイツやグループメンバーとは別の高校に進学。
偏差値低めの、いわゆる不良のたまり場と呼ばれる類の高校で、リーゼント頭にボンタンを履いたツッパリ、ヤンキーだらけで高校生なのにヒゲを生やしている先輩もいた。
体が小さい内藤大助は、ブカブカの制服を着て、
「またイジメられたらどうしよう」
と思いながら登校。
入学早々、
「オイ、オレたちもこういう時期あったんじゃねえか」
と笑われた。
しかしイジメられることはなかった。
たしかにワルそうな顔をした人間は多かったが、学校にバレないようにイジメをするような陰湿な人間はいなかった。
クラスで自然と友達ができて
「オレんち、泊まりに来いよ」
と誘われて信じられず、
「ホントに?
僕でいいの?」
偏差値低めの、いわゆる不良のたまり場と呼ばれる類の高校で、リーゼント頭にボンタンを履いたツッパリ、ヤンキーだらけで高校生なのにヒゲを生やしている先輩もいた。
体が小さい内藤大助は、ブカブカの制服を着て、
「またイジメられたらどうしよう」
と思いながら登校。
入学早々、
「オイ、オレたちもこういう時期あったんじゃねえか」
と笑われた。
しかしイジメられることはなかった。
たしかにワルそうな顔をした人間は多かったが、学校にバレないようにイジメをするような陰湿な人間はいなかった。
クラスで自然と友達ができて
「オレんち、泊まりに来いよ」
と誘われて信じられず、
「ホントに?
僕でいいの?」
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昼休み、バスケットボールをすると運動神経の良い内藤大助に自然とボールが集まった。
「いいじゃん」
と肯定されたり、困っているときに
「オレがやってやるよ」
と助けてもらい、内藤大助は、
「自分の中で世界が変わった」
という。
元々運動神経には自信はあったが、高校入ると急に力もついて、腕相撲で不敗。
ハンドボール部に入部し、どんな体勢からボールを打ち込んだ経験が、大きな横の動き、まるでシュートを放つように顔と体を捻りながら打つボディーなどボクシングに活きた。
しかしそれはかなり先の事で、夏、海にいったとき、中学時代にイジメられた不良と偶然会って、再び殴られ、
「このまま海に沈められるんじゃないかと本当に怖く、高校の友達が一緒だったので、そんな姿をみられたことがすごく恥ずかしくて・・・」
暗い過去は、まだ終わっていなかった。
「いいじゃん」
と肯定されたり、困っているときに
「オレがやってやるよ」
と助けてもらい、内藤大助は、
「自分の中で世界が変わった」
という。
元々運動神経には自信はあったが、高校入ると急に力もついて、腕相撲で不敗。
ハンドボール部に入部し、どんな体勢からボールを打ち込んだ経験が、大きな横の動き、まるでシュートを放つように顔と体を捻りながら打つボディーなどボクシングに活きた。
しかしそれはかなり先の事で、夏、海にいったとき、中学時代にイジメられた不良と偶然会って、再び殴られ、
「このまま海に沈められるんじゃないかと本当に怖く、高校の友達が一緒だったので、そんな姿をみられたことがすごく恥ずかしくて・・・」
暗い過去は、まだ終わっていなかった。
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学校で禁止されていたが、内藤大助は洞爺湖のホテルで皿洗いのアルバイトを開始。
洞爺湖は観光地なので店が多く、他にもいろいろなアルバイトをした。
「母子家庭で、おかあが仕事に忙しく、かまってもらえずに育ったせいか、家庭への憧れは強く、幼稚園の頃から結婚願望があった」
という内藤大助は、うどん屋のアルバイトで知り合った女の子を好きになり、仕事が終わった後、勇気を出して告白。
後日、電話でフラれ、布団の中で大泣きした。
高校2年生のときに同級生の彼女に友達を紹介してもらって、初めて彼女ができた。
「色白で目が大きくてかわいい子だった」
という彼女と楽しく遊んでいたが、ある週末、自分の家に来る約束をしていた彼女から
「電車に間に合わなかったから今日は行くのやめる」
という電話が入った。
彼女の家は隣駅だが、電車は1~2時間に1本しかない。
そういう事情を知りながらも、
「バスで行くっていって欲しかった」
という内藤大助は、彼女が来ないことに怒り、一方的に電話を切った。
しかし次の日、彼女に
「大助、優しくないから別れる」
といわれ、大慌て。
「謝るから考え直して欲しい」
と頼んだが、彼女はそれっきり連絡してこなかった。
洞爺湖は観光地なので店が多く、他にもいろいろなアルバイトをした。
「母子家庭で、おかあが仕事に忙しく、かまってもらえずに育ったせいか、家庭への憧れは強く、幼稚園の頃から結婚願望があった」
という内藤大助は、うどん屋のアルバイトで知り合った女の子を好きになり、仕事が終わった後、勇気を出して告白。
後日、電話でフラれ、布団の中で大泣きした。
高校2年生のときに同級生の彼女に友達を紹介してもらって、初めて彼女ができた。
「色白で目が大きくてかわいい子だった」
という彼女と楽しく遊んでいたが、ある週末、自分の家に来る約束をしていた彼女から
「電車に間に合わなかったから今日は行くのやめる」
という電話が入った。
彼女の家は隣駅だが、電車は1~2時間に1本しかない。
そういう事情を知りながらも、
「バスで行くっていって欲しかった」
という内藤大助は、彼女が来ないことに怒り、一方的に電話を切った。
しかし次の日、彼女に
「大助、優しくないから別れる」
といわれ、大慌て。
「謝るから考え直して欲しい」
と頼んだが、彼女はそれっきり連絡してこなかった。
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高校3年生となり、就職活動の時期に入ると洞爺湖の観光ホテルで厨房のアルバイトをしていた内藤大助は、職場の先輩に勧められて採用試験を受け、合格。
そして3月に高校卒業し、正式に入社する4月まで、そのホテルでアルバイトを継続。
それまで洋食だったが、仲のいい先輩がいる中華の厨房を希望し、働き出した。
ある日、その先輩に
「お前な、ここに就職するのに態度よくないぞ」
と怒られ、カチンときた内藤大助は、
「はい、ラーメンあがり」
という先輩に返事もせずに、メンマやチャーシュー、ネギを丼に投げつけるように盛りつけ。
「いいかげんにしろ」
正社員である先輩に怒鳴られ、まだアルバイトの内藤大助は、夜の勤務をを無断で欠勤。
そして翌日、上司に事情を話し、
「調理場で就職決まってますけど部署変えてください」
と入社式の前に配置転換を要求。
翌日、上司に呼び出され
「昨日の話だけど事情を総支配人に話したんだよ。
そしたらそんなヤツいらないっていうんだよ」
「エッ」
「つまりその、そんなこといってるなら、君を採用しないということなんだ」
「ええ~、僕そんなつもりでいったんじゃないですよ」
しかし後の祭りだった。
そして3月に高校卒業し、正式に入社する4月まで、そのホテルでアルバイトを継続。
それまで洋食だったが、仲のいい先輩がいる中華の厨房を希望し、働き出した。
ある日、その先輩に
「お前な、ここに就職するのに態度よくないぞ」
と怒られ、カチンときた内藤大助は、
「はい、ラーメンあがり」
という先輩に返事もせずに、メンマやチャーシュー、ネギを丼に投げつけるように盛りつけ。
「いいかげんにしろ」
正社員である先輩に怒鳴られ、まだアルバイトの内藤大助は、夜の勤務をを無断で欠勤。
そして翌日、上司に事情を話し、
「調理場で就職決まってますけど部署変えてください」
と入社式の前に配置転換を要求。
翌日、上司に呼び出され
「昨日の話だけど事情を総支配人に話したんだよ。
そしたらそんなヤツいらないっていうんだよ」
「エッ」
「つまりその、そんなこといってるなら、君を採用しないということなんだ」
「ええ~、僕そんなつもりでいったんじゃないですよ」
しかし後の祭りだった。
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家に帰った内藤大助は、母親に
「就職ダメになっちゃった」
と報告。
翌日、卒業した高校から呼び出だれ、
(ホテルが、やっぱり来ていいっていってきたのかも・・・)
と期待しながら職員室に入ったが、、
「とにかくなんでもいいから絶対に就職しなきゃダメだぞ。
がんばれ」
といわれただけ。
さらに翌日、寝ていると母親に
「おめえ、内地に行け」
と怒鳴られ、寝ぼけながら
「はあ?」
と聞き返すと
「内地に行け。
もう義隆には電話しておいたから」
義隆とは、4年前に東京に出た兄。
「はっ?」
「は、じゃない。
内地に行って修行してこい。
10年は帰ってくるな」
「イヤだよ」
「イヤじゃない。
もう航空券とってある。
1週間猶予をやるから、その間に友達に挨拶してこい」
「就職ダメになっちゃった」
と報告。
翌日、卒業した高校から呼び出だれ、
(ホテルが、やっぱり来ていいっていってきたのかも・・・)
と期待しながら職員室に入ったが、、
「とにかくなんでもいいから絶対に就職しなきゃダメだぞ。
がんばれ」
といわれただけ。
さらに翌日、寝ていると母親に
「おめえ、内地に行け」
と怒鳴られ、寝ぼけながら
「はあ?」
と聞き返すと
「内地に行け。
もう義隆には電話しておいたから」
義隆とは、4年前に東京に出た兄。
「はっ?」
「は、じゃない。
内地に行って修行してこい。
10年は帰ってくるな」
「イヤだよ」
「イヤじゃない。
もう航空券とってある。
1週間猶予をやるから、その間に友達に挨拶してこい」