2017年1月23日 更新

『ウルトラマン誕生を支えた男たちは本当にすごかった!』ウルトラマンのデザインを生み出した『成田 亨』の美術・特撮・怪獣哲学!

「成田亨」という人を知っていますか?ウルトラマン、ウルトラセブン、そしてたくさんの怪獣たちのデザインを生み出した人です。そのすご過ぎる才能と創作過程を、ぜひ読んでみて下さい!

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「成田 亨さん」ってどんな人?

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成田 亨(なりたとおる 1929年~2002年)は青森県出身で、武蔵野美術学校(現・武蔵野美術大学)で学んだ彫刻家でした。美術学校在学中に映画『ゴジラ』(1954年)の製作現場を手伝ったことをきっかけに特撮映画の世界に入り、1966年~68年に放映された『ウルトラQ』『ウルトラマン』『ウルトラセブン』のヒーロー、怪獣からメカやセットのデザインまでを引き受けました。当時、巨大化したクモやカメなどが「怪獣」の主流だったなかで、「ウルトラマン」や「バルタン星人」「カネゴン」「ガラモン」「ケムール人」など、世代を超えて親しまれる個性的なキャラクターを生み出したのは、成田が同時代のモダンアートを吸収して培った造形センスによるところが大きかったといわれています。
カネゴン

カネゴン

私たちが夢中で観ていた「ウルトラQ」「ウルトラマン」「ウルトラセブン」。
ヒーローはもちろん、お話の中で毎週様々な怪獣が現れるのも大きな楽しみでした。
あなたはどの怪獣が印象に残っていますか?
私たちの記憶に残っている特徴ある怪獣・ヒーローたちの多くは、成田亨さんのデザインから生まれました。
ピグモン

ピグモン

ガラモンは恐いけど、ピグモンなら可愛い。
まねして、ピョンピョン跳ねて遊びました。
バルタン星人

バルタン星人

ウルトラマンをピンチに陥れるバルタン星人。
「フォッフォッフォッ」と高笑いのような声を出してましたね。
出典 zigsow.jp
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すでに2002年に他界された成田さん。
けれど多くのキャラクターたちが、今なお愛され続けています。
後ほどいくつか紹介しますが、昭和だったあの頃「今までに見たことのない」怪獣やヒーローをたくさん生み出した成田さんの、その創作活動を振り返ってみたいと思います。

美しい宇宙人「ウルトラマン」が誕生するまで

『成田亨の美しい宇宙人-ウルトラマン誕生秘話』

『成田亨の美しい宇宙人-ウルトラマン誕生秘話』

日本経済新聞・日経アートレビュー(2009年10月8日)で、成田亨さんが取り上げられました。
近年特に、成田さんの怪獣デザインが「現代美術」として高く再評価されるようになり、美術館で展覧会が開かれることが多くなりました。

みんなが夢中になったウルトラマンの姿。
初めから、この無駄を省いた美しいデザインだったわけではありませんでした。
模索期の設定

模索期の設定

初期設定の段階では、「ベムラー」「レッドマン」という名のキャラクターでした。
これではまだ、正義の味方に見えません。
ここから、いろいろな考えを取り入れたり削ったりしながら、あのデザインへと変遷していくのです。
出典 ameblo.jp
ウルトラマンのデザインに込められた思想

ウルトラマンのデザインに込められた思想

「突破口はギリシャの哲学者プラトンが唱えた『混沌(カオス)と秩序(コスモス)』という概念です。様々なパーツを合成する怪獣がカオスなら、ヒーローは単純で美しいコスモスでなければならない。そのコスモスとして生まれたのが、この姿です。」
(「美の巨人たち」成田亨『MANの立像』より引用)

『時間を超越した目を、ウルトラマンにはもたせたかったんですよ。そして、全身の皮膚感とのつり合いに苦心しましたね。仮面でもなく、宇宙マスクでもない、かたちとして納得させられるものにたどり着くまで悩んだんです』
(「ウルトラマン誕生」実相寺昭雄 著 ちくま文庫 成田亨の言葉より引用)

『表面の地色が銀色というのは、やっぱり宇宙時代的に、銀色でいこうと思った。単純な、全く単純な発想です。宇宙ロケットなんかからの連想です。
 体の線は、やっぱりウェットスーツ着たまんまだと人間になってしまう。どうしても。それでも宇宙人だというから、宇宙人らしくしなきゃいけないし、そのためにはやっぱり、火星の模様を入れようかと思いついた。』
(「成田さんの仕事」http://www.infosakyu.ne.jp/~yamaken/sfxbooks/narita/narita.html#n1 成田亨の言葉より引用)
出典 ameblo.jp
こうした様々なアイデアやアプローチが、ウルトラマンを形作っていきました。
さらにここに、大切な要素が加えられます。
それはアルカイックスマイルでした。

アルカイックスマイルとは

クーロスのアルカイックスマイル(国立考古学博物館・アテネ)

クーロスのアルカイックスマイル(国立考古学博物館・アテネ)

古代ギリシャのアルカイック期(紀元前700年~500年頃)に製作された人物の立像(コレー、クロス)に表現された表情から来た言葉。
顔の表情は感情表現を極力抑えている中で、口元だけが微笑みの形を伴っていることが特徴。
無表情にも拘らず口元に笑みをたたえたような表情の事を「アルカイックスマイル」と呼ぶ。
弥勒菩薩像やモナリザにもみられるアルカイックスマイル。
見る人によって、その表情の意味が違って受け取られる不思議な微笑みです。
成田さんは「その口にしたかったんですよ」とおっしゃっています。
「本当に強い人間はね、戦う時かすかに笑うと思うんですよ」

美の巨人たち 「成田亨 『MANの立像』」

動画の15:08ごろから、成田さんご自身が、アルカイックスマイルについて語られています。
短いコメントですが、ぜひ作者の生の声を聞いていただけたらと思います。
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こうして、大事な要素が決まり、立体化する作業に入ります。
その時大切だったのは、「ウルトラマンの中に誰が入るのか」ということでした。

動く彫刻 古谷敏

ケムール人と古谷 敏

ケムール人と古谷 敏

ウルトラQで怪獣の製作をしていた時、成田さんは初の試みで、ウエットスーツを使用しました。
それがこのケムール人です。
そしてこのケムール人の中に入っていたのが、俳優の古谷敏さんでした。

成田さんは古谷さんにウルトラマンを依頼しました。
でも古谷さんは乗り気ではありませんでした。
「顔が出ない俳優なんて俳優じゃないから、僕はいやだったんです。成田さんは、
『背が高くて、やせてて、敏さんしかいないから。』『主役は古谷敏なんだ。ウルトラマンが主役なんだ。』と、くどきにかかったんです。」
「美の巨人たち」成田亨 『MANの立像』古谷敏のインタビューより引用
成田さんの述懐。
「敏ちゃんは8頭身だった。8頭身はたしかに見た目は良いが彫刻としてならウルトラマンのマスクをかぶった7頭身が理想です。7頭身というのはギリシャ彫刻がそうなんです」。
なるほど、動く彫刻という次第。
成田さんが古谷さんに惚れ込む理由がそこにあった。
古谷敏さんとウルトラマン

古谷敏さんとウルトラマン

とうとう、くどき落とされたんですね。古谷さん。
ウルトラマンは、まず古谷さんのライフマスクを石膏で取って、その上に粘土を盛りつけた。
ウルトラマンの顔が西洋人のように立体的なのは、中の古谷さんの面立ちの彫りが深いため。そのまま反映された。
高い鼻。面長だが目鼻の小作りなまとまり。少し長い下顎。目の位置。
どこをとっても、ウルトラマンの造型は古谷さんの顔から始まっている。
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こうして並べてみると、よくわかりますね。

左の古谷さんの写真は、ウルトラセブンで「アマギ隊員」として出演するようになった時のものです。
出典 ameblo.jp
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赤いウエットスーツを基本にして、銀色の塗装がされました。
こうして、成田さんのイメージ通りの「美しい宇宙人・ウルトラマン」が出来上がりました。

けれどこの後、成田さんの心が傷つく事態が発生します。
この画像で、すでにそれが起こっています。
何かわかりますか?
出典 ameblo.jp

納得のいかないカラータイマーとのぞき穴

ウルトラマンの目元に注目

ウルトラマンの目元に注目

黒い小さな穴が空いています。
そして胸のカラータイマーも、私たちにとっては馴染み深いものですが、そういえば成田さんのデザイン画にはなかったと思いませんか?
出典 renote.jp
ウルトラマンの特徴の一つである「カラータイマー」は、子供にも視覚的にわかりやすくウルトラマンが弱っていることを示すためのギミックとして、円谷特技プロ文芸部の発案で追加されたが、デザイン段階では存在せず、成田もそれを大変嫌っていた。
(中略)
また、ウルトラマンの「瞳」と言われるのぞき穴は、演者である古谷敏の視界確保のため、マスコミを招いてのスチール撮影会である「第一回特写会」の際に、成田自身が開けたものである。この「特写会」では、覗き穴をどう処理するか成田も決めかねていて、結局視界をほとんど確保できないままのウルトラマンは、円谷英二社長やマスコミ関係者の見守るなか、手を引かれてよろめきながらステージに立つような状況だった。
結局成田は、この「第一回撮影会」の休憩時間に、控室にドリルを持ち込み、その場で「覗き穴」を開けている。これは成田にとっては不本意であり、古谷は「怒っているようでもあり、マスクに傷を入れるのを悲しんでいるような複雑な表情だった」と述べている。のちになって成田は古谷に、「やるせなかったが、あの場では仕方がなかった。実際の撮影では戻すつもりだったが、時間もなく面倒くさくてあのままにしてしまった。デザイナーとしては失格だったよ」と心情を吐露している。
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こうした苦い経緯があり、次回作のウルトラセブンをデザインする時は、初めから視野を確保するのぞき穴を瞳の位置に、カラータイマーの代わりにビームランプを額に取り入れて、デザインをされたそうです。
出典 ameblo.jp

8頭身から5頭身半!ウルトラセブンのデザインも紆余曲折がありました

成田さんは、ウルトラマンに続きウルトラセブンも、古谷さんに演じてもらいたいと願っていました。けれど、それはかないませんでした。
なぜなら、ウルトラマンの大変な人気によって気をよくしたTBSが、放送期間中に「仮面を脱いだウルトラマン」と称して、メディアに古谷敏さんを紹介したのです。
その端正な顔立ちに一気に人気が高まりました。
「古谷さんをテレビに出して!」という熱烈なファンの声にこたえて、ウルトラセブンでは、古谷さん念願の顔出し俳優として「アマギ隊員」を演じたのでした。
セブンのデザインには逸話がある。ウルトラマンの着ぐるみに入っていた人は八頭身だったので、セブンも同じようにあつらえておいたところ、紹介された人物を見て成田は驚いた。肩幅のがっちりしたその男は五頭身半の体躯であった。殺陣は非常に旨いらしいのだが・・・。驚いた成田はキャストを変えてくれと言ったが、(予算の関係で)変更は利かないとのことだった。そこで、急遽、セブンの衣装は上半身に鎧のようなものを用い胴から脚にかけてラインも加え全身に目がいかないように工夫した。さらに色も身体がスリムに見える青色を指定した。しかし、玩具メーカー(バンダイ)の意向で赤にされてしまう。
ウルトラセブンを演じた上西 弘次さん 

ウルトラセブンを演じた上西 弘次さん 

5頭身半と言われても、当時の日本人の男性としてはごく普通だと思います。
古谷さんが特別なプロポーションだったのではないでしょうか。
《ウルトラマンセブン決定稿B案》

《ウルトラマンセブン決定稿B案》

実際に誕生したウルトラセブンは、このデザインの鎧と体の色が入れ替わりました。

今まで、セブンだけがなんで見た目が異質なんだろう・・・と思っていましたが、いろいろな大人の事情があったんですね。
視線を上にあげることでスリムに見せる、なんてファッションデザイナーのような視点だと思います。
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出典 ameblo.jp
もう、セブンに関しては、あきらめの境地に達した成田は、その分、ウルトラホークや基地の造形に力を注ぐことに決め込んだ。その結果ウルトラシリーズでもっとも充実したメカ(ホーク1号2号3号やマグマライザー、ハイドロジェット、ポインター号など)が登場することになる。とんだ怪我の功名である。

メカや隊員服などの美術デザイン

ウルトラ警備隊の服

ウルトラ警備隊の服

残念ながら実現しなかった「古谷敏のウルトラセブン」。
しかし、古谷さんを弟のように可愛がっていた成田さんは、古谷さんの新しいスタートを応援します。
このウルトラ警備隊の隊員服のデザインは、成田さんがしたものです。
古谷さんの苦労をねぎらうために、本当にカッコよく見えるように、デザインされました。
出来上がって、成田さんは古谷さんに、真っ先に見せたそうです。
ウルトラ超兵器~ウルトラ警備隊編

ウルトラ超兵器~ウルトラ警備隊編

1 α号(ウルトラホーク1号)
2 β号(ウルトラホーク1号)+ポインター
3 γ号(ウルトラホーク1号)
4 ウルトラホーク2号
5 ウルトラホーク3号
6 マグマライザー
1・2・3号が揃っている画像を探していたら、これがありました。
これで食玩!すごいですね!
ウルトラホーク3号

ウルトラホーク3号

メカなのに、美しいなあと思います。
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