清宮克幸 早稲田大学ラグビー部監督5 「NOTHING TO LOSE」
2017年3月28日 更新

清宮克幸 早稲田大学ラグビー部監督5 「NOTHING TO LOSE」

2004年度、早稲田大学ラグビー部は、全国大学選手権で優勝。 日本選手権でも社会人チーム:タマリバクラブを撃破したが、トップリーグチーム:トヨタ自動車には惨敗した。 2005年度の目標は、「打倒・トップリーグ」だった。

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早稲田大学ラグビー部は、関東大学ラグビー選手権を優勝した後、全国大学選手権でも勝ち続けた。
2005年12月18日、早稲田 vs 立命、126-0。
2005年12月25日、早稲田 vs 慶応、26-8。
2006年1日2日、全国大学選手権準決勝、早稲田 vs 法政、61-5。
そして2006年1月8日、全国大学選手権決勝、早稲田大学 vs 関東学院大学。
早稲田は、41-5で勝ち、この大会を2連覇。
それは31年ぶりの連覇だった。

セコムしてますか? セコムしてますよ

Secom Haka

2006年2月4日、日本選手権がついに開幕。
早稲田大学ラグビー部は、1回戦でタマリバクラブと対戦し、47-7で勝ち、夢の「打倒・トップリーグ」へ新たな1歩を踏み出した。
2006年2月7日 、日本選手権2回戦「早稲田大学対トヨタ自動車ヴェルブリッツ」戦まで、あと4日。
この日、早稲田大学はセコムグラウンドに出稽古した。
1年前の2005年2月12日、早稲田大学ラグビー部はトヨタに負けてシーズンを終えた。
その思いを胸に、トップリーグチームであるセコムを相手にスクラム・ラインアウト・チームアタック・・・
着々と12日の対トヨタイメージをつくり上げた。

打倒・トップリーグ

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2006年2月11日、早稲田大学ラグビー部は対トヨタ戦試合前練習を行った。
小さな者が大きな相手にいかにして勝つか。
『継続』『高速』『精確』『激しさ』、そして『独自性』、ビクトリーチェーンの完成。
やるべきことはすべてやった。
明日は自信を持って思いっきりやるだけだった。
 (1813543)

ミーティングでは寄せ書きをつくった
まず清宮が、ド真ん中に「ワセダ」と書いた。

2006年2月12日、日本選手権2回戦、早稲田大学 vs トヨタ自動車ヴェルブリッツ。
14:00、キックオフ。
前半、スロースタートのトヨタに対し、早稲田は風上の利を生かして速いテンポで仕掛けていった。
両チームのフォワードの体格の平均は、早稲田181cm100kg、トヨタ186cm106kg。  
しかし早稲田フォワードはトヨタフォワードに当たり負けしなかった。
2分、早稲田:五郎丸のPGで先制、3-0。
14分、早稲田、PGで追加 6-0。
23分、トヨタゴール前で、早稲田がマイボールラインアウトからモールを形成。
そのまま左隅へドライブして、佐々木隆道が押さえ込んでトライ。
11-0。
28分、トップリーグ4位のトヨタ自動車も負けてはいない。
難波の突破から広瀬-内藤と継続しゲインし、AllBlacksに最も近いといわれるトロイ・フラベル選手が力強いランでトライ。
広瀬のG成功。
11-7。
31分、トヨタゴール前の密集から、早稲田:曽我部が、大きくパスすると見せかけて、鋭いカットアウトでトヨタのディフェンスラインの裏に出て、自ら飛び込んでトライ。
G成功、18-7。
32分、トヨタ:広瀬のキックオフが10m届かず。
風の影響?
それとも動揺?
34分、早稲田PG成功 21-7。
39分、トヨタ:水野のゲインから麻田-内藤、最後はティアティアがトライ。
G決まって21-14。
前半終了。
ワントライワンゴール差で早稲田がリード。
早稲田は、フォワード戦は互角。
ラインアウトでは圧倒。
バックスは、展開したり、自らが勝負をしかけたり。
前半はほとんどトヨタ陣内で試合が運ぶというちょっと信じられない展開だった。
しかし後半は風下の早稲田がどこまでリードを守れるか。
後半1分、開始早々、トヨタ:水野がゴールに入るがオブストラクションでノートライ。
トヨタはミスが多い。
10分、早稲田ゴール前でトヨタがボールを展開中、広瀬のパスを早稲田:内橋がインターセプト、80m独走しトライ。
G成功、28-14。
12分、お返しとばかりにトヨタ:内藤が早稲田:曽我部のパスをインターセプトしトライ。
G決まって、28-21。
1トライ1ゴール差。        
19分、前半から早稲田選手を殴っていたトヨタのフラベルがシン・ビン(10分間退場)。
後半、風上を得たトヨタは広瀬のキックが冴える。
23分、トヨタがメンバー入替。
ティアティア→菊谷。
山本→レアウェレ。
レアウェレは昨年の早稲田戦の逆転の立役者だった。
24分、トヨタ、PG成功、28-24。
試合時間残り15分で4点差に迫る。
28分、早稲田がトヨタゴール前まで攻め入るも、なんとレアウェレがゴール前でクイックスローで22mまで戻す。 
ロスタイムは2分。
31分、トヨタ:フラベル戻り15対15となる。
1トライとればトヨタが逆転。
世界のTOYOTAの突進が早稲田ゴールラインに迫る。
早稲田はインゴールを背負って横一線に構える伝統のスタイル。
ひたすら繰り返されるトヨタの狂気のタックルと早稲田のソンビリムーブ。
早稲田の15名は耐えに耐えた。
フラフラになりながら無意識で戦った。
骨折している者が3名いた。
そしてついに迎えたノーサイド。
早稲田vsトヨタ自動車 28-24。
トヨタ自動車ヴェルブリッツはトップリーグ4位。
社会人トップレベルのチームに学生が勝つのは18年ぶりの快挙だった。
2006年2月14日、早稲田大学ラグビー部は、東芝戦へ向け練習を再開。
日本一を目指し、再び走り始めた。
そしてミーティングで、戦い方やそれぞれのイメージを統一した。
2006年2月19日、日本選手権準決勝 早稲田vs東芝府中ブレイブルーパス。 
トヨタに勝ってラグビーの歴史を変えた早稲田のさらなるチャレンジ。
しかし待ち受けていたのは、体感したことのない分厚くて硬い壁だった。
前半、早稲田フォワードは魂で東芝のモールを止めた。
バックスも意を決して前へと出た。
それでも東芝の大きさ、強さ、痛さ、勤勉さ、意識の高いプレーは如何ともしがたかった。
トヨタに勝ったことで大きな壁を乗り越えられたと思ったが、その先にはもっと高い壁があった。
時間の経過とともに早稲田の夢は遠のいていった。
それでも後半30分過ぎ、ここまで得点0の早稲田は、東芝府中のゴール前でマイボールスクラムを得て、スクラムをプッシュ。
なんと早稲田フォワードは日本最強といわれる東芝フォワードをめくり上げた。
佐々木キャプテンがボールをすくい上げるタイミングが合わず、惜しくもトライにはならなかったが、あわやスクラムトライという場面だった。
しかしこれが最後の見せ場だった。
ノーサイドの笛が終わりを告げた。
早稲田 vs 東芝府中ブレイブルーパス、0-43。
完敗。
「俺についてこい。」
すべてはこの清宮の言葉からはじまった。
それか丸5年。
早稲田は伝統の上に新たな力を加え劇的な変化を遂げた。
関東対抗戦、5年連続全勝優勝。
NZU(ニュージーランド学生代表)に勝利。
オックスフォードに初勝利。
3度の学生日本一。
打倒・トップリーグ。
枯れるほど流した血と汗と涙。
たくさんの笑顔。
この5年間は、いつも夢と希望に満ちていた。

物語は続く

2007 早稲田大学ラグビー部 Waseda Univ. Rugby Football Club

2006年2月27日、大学選手権2連覇を成し遂げた早稲田フィフティーンのうち、前田航平、矢富勇殻、曽我部佳憲、今村雄太が、3月にフランスで行われる日本代表の合宿メンバーに選ばれた。
大学チームから4人選ばれるのは前代未聞のことだった。
そして清宮克幸は、早稲田大学ラグビー部監督を退いた。
新監督は、タマリバクラブの中竹竜二だった。
また清宮は、サントリーサンゴリアスの監督に就任。
早速、主将に山下大悟を抜擢。
佐々木隆道、青木佑輔の早稲田勢、関東学院大学の主将をつとめた有賀剛らを補強した。
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