男なら、この美しいオープニングを見ずして死ねるか!スコセッシ&デ・ニーロ、究極のボクシング映画『レイジング・ブル』
2017年1月26日 更新

男なら、この美しいオープニングを見ずして死ねるか!スコセッシ&デ・ニーロ、究極のボクシング映画『レイジング・ブル』

ロバート・デ・ニーロとマーティン・スコセッシの名コンビによる、究極のボクシング映画である。まずボクシングシーンが強烈だ。いつもながらデ・ニーロの理不尽なキレかたにも凄味がある。そしてなによりも、オープニングが素晴らしい。男なら、これを見ずして死ねないだろうと思えるほどの出色の出来だ(もちろん女性も!)。まさに観る人の人生の想いが投影できる“オープニング”である。是非!

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究極のボクシング映画『レイジングブル』とは?

『レイジングブル』は、実在のプロボクサー、ジェイク・ラ・モッタの自伝を元に、その栄光と挫折の半生を描いたアメリカ映画である。公開は1980年。監督はマーティン・スコセッシ、主演にロバート・デ・ニーロ。共演に、ジョー・ぺシ、キャシー・モリアーティ。

この映画は、第53回アカデミー賞で8部門にノミネートされ(作品賞、監督賞、主演男優賞(ロバート・デ・ニーロ)、助演男優賞(ジョー・ペシ)、助演女優賞(キャシー・モリアーティ)、撮影賞、編集賞、音響賞)、主演男優賞と編集賞を獲得した。
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『レイジングブル』撮影時にロバート・デ・ニーロに助言するジェイク・ラ・モッタ(右)。ボクシング場面での撮影に10週ものあいだ立ち会った。

そんなジェイクに対し、デ・ニーロは撮影時以外もいつもつきそっていたという。ジェイクという人間をよく知るために。

ジェイクは、栄光と挫折を描いた自身の物語の制作過程をどんな気持ちで見ていたのだろうか。

色彩の強いボクシング映画が多く制作された1970年代、スコセッシが出した答えが黒白映像だった・・・。

1970年代、数多くのボクシング映画が制作された。『ロッキー2』や『メーン・イベント』『チャンプ』、さらにカンガルーが主演のボクシング映画『マチルダ』など。これらはすべてカラー映像で、スコセッシは、ボクシング映画の色彩に疑問をもっていた。ボクシンググローブやトランクス、飛び散る血などの鮮やかな赤や青の色彩が映像を損ねると感じたのだった。そこで、映画制作におけるカラーフィルムの褪色問題にも関心を持っていたスコセッシは、『レイジングブル』のボクシングシーンを黒白で撮影したのだ(というよりもほぼ全編黒白、一部カラーも出てくるが)。

ストーリー

1941年、ニューヨーク。弟のジョーイをマネージャーに従え、デビュー以来連戦連勝するミドル級ボクサー、ジェイク・ラ・モッタ。ある試合で、相手から何度もダウンを奪い、圧倒的に試合を支配していたにもかかわらず、不可解な判定で敗れてしまう。

怒りの収まらないジェイクは、妻やジョーイに理不尽に当たり散らす。そんな折、まだ10代の金髪の少女、ヴィッキーと出会い、のぼせ上った末、妻を捨てて結婚する。

その後、暗黒街のボスの指示で八百長試合を行い、格下相手に負けるという屈辱を味わいながらも、見返りにチャンピオンに挑戦するチャンスを得る。1949年ジェイクは、マルセル・セルダンを倒し、とうとうチャンピオンベルトを手にする。

しかし、体重の超過や病的な嫉妬に悩まされたジェイクは、妻ヴィッキーとジョーイの仲を疑うようになり、2人をメッタ打ちにしてしてしまうのだった・・・。
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ボクシングファンだったことはないと言っていたスコセッシだが、リング内にカメラを入れるなどして、ボクシング映画の正しい在り方を示そうとしていた。

音の効果にも注目してほしい。沈黙のあと、突如パンチが飛んでくる。グシャっという音で沈黙が破れ、観る者はリングサイドに自分がいるかのように思うのだ。
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試合中、疲労困憊のボクサーの顔にはいつも孤独感が漂う。デ・ニーロはそれをリアルに演じていたと思う。
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『タクシードライバー』でも見せたデ・ニーロのキレた演技は恐ろしい。理不尽にもほどがある。
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俳優をやめようと思っていたジョー・ぺシ(左)を『レイジングブル』に出演させたのはスコセッシとデ・ニーロだった。たしかに、いい意味でこんな癖のある俳優を放っておくのはもったいない。

アメリカ最高の名優ロバート・デ・ニーロの3つのキーワード

アメリカ最高の名優と言っても過言ではないロバート・デ・ニーロについて、その存在を語る上でのキーワードは3つ。「徹底した役作り」「マーティンスコセッシとの名コンビ」「尽きない演技への情熱」。順番に紹介していこう!

太るために撮影を4か月待たせるという強烈なプロ根性!

本作で、ジェイク・ラモッタ引退後の無様に太った姿を特殊メーキャップに頼らず、実際に55ポンド(約25キロ)も体重を増やして演じてみせたデ・ニーロ。北イタリアやフランスで、朝昼晩と無理やり食べ続けたのだという。自ら言い出した割には、「つらい」とこぼしてたとか・・・。

ちなみに、スコセッシは、デ・ニーロ待ちで4カ月撮影をストップさせて待った。太っ腹である。その間のスタッフのギャラも払いながらというのだから。デ・ニーロ愛といってもいいだろう。

それにしても、下の写真のとおり、ビフォーアフターでは別人である。

役作りのためにはとにかく努力を惜しまないデ・ニーロである。数々の逸話が、まことしやかにささやかれてきたが・・・ホントウに本当なのか。
『『ゴッドファーザー PART II』⇒若き日のドン・コルレオーネを演じるため、マーロン・ブランドの独特なしゃがれ声を完全に模写。また、シチリア島に住み、イタリア語もマスターしている。
『タクシードライバー』⇒ニューヨークで3週間もの間、タクシー運転手として働いている。ゲイにもてたとか。
『アンタッチャブル』⇒演じたアル・カポネ本人に似せるために、額の生え際の毛を全部抜いた。

などなど・・・。いずれいにしても、こだわりがすごい。

BEFORE↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

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まさに、“ 精悍 ” である。

AFTER↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

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見事な太り方で目がほとんど開いてない。。。

次ページでは、デ・ニーロ&スコセッシの最高傑作『タクシードライバー』のあのシーンをお届け!

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