作品の模倣や盗用が、一般のネットユーザーによって次々に発見されるようになった。
「今は漫画家にとっては恐ろしい時代。ネットの複数の人間がよってたかって検証を始め、あっという間に元ネタが丸裸にされる。全体をみると価値がある作品でも、一部が模倣やトレースだとネットでは盗人扱い。人間性まで否定されるくらいバッシングを受ける」
韓国の「宇宙黒騎士」(1979年) シャア・アズナブルぽい男が主人公。マスクを取ると、なんとアムロな顔が出てくる。いいところ取り。恐るべし!
『ガンダム』の制作会社が韓国へ下請けに出していた際に、その会社がデザインをそのまま盗用してできたのがこの『宇宙黒騎士』である。
韓国版ガンダム『宇宙黒騎士』Part 1 黒騎士登場 : "Space Black Knight"
じゃないんか・・・
パクリ疑惑!?『闇は集う』は本当に盗作なの? - Middle Edge(ミドルエッジ)
よく気がついたなというトレパク。ネットの集合知のなせる技。
松本恵(松本莉緒)写真集『ROUTE M』72ページ 確かに似ている・・・よく見つけたなあ・・・
インスパイア&トレス=?
どういう扱いが適切となるでしょうか。
2005年10月、インターネット掲示板の2ちゃんねるで、他の漫画家と構図が似ているとの指摘があり、講談社が調査を開始。
同社は10月18日に、『エデンの花』『君の白い羽根』などで井上雄彦の『SLAM DUNK』『リアル』などからの作画トレースがあり、作者本人もその事実を認めたと発表。
『別冊フレンド』2005年11月号に謝罪文を掲載するとともに、連載中だった『Silver』の連載中止(事実上の打ち切り)と既刊の単行本すべてを絶版とし、回収する措置をとった。
このことは新聞やテレビの全国ネットのニュースでも報道されるところとなり、2007年3月まで漫画家活動を停止した。
2009年3月に連載復帰一作目の『ちはやふる』が第2回マンガ大賞を受賞した際、末次は授賞式を欠席し(代理の編集部員が出席)、関係者に謝辞を表しつつも「過去に犯した間違いというものがあり、自分はまだこういう場に出て行けるような人間ではない。一生懸命マンガを描いていくことでしか恩返しはできない」というコメントを発表している。
左:末次氏「Only You-翔べない翼-」5巻132ページ(反転済) 初版1999年4月 右:『はいせんす絵本vol.40』 1998年3月~5月(~編で多少差があるようです)
素晴らしい発見力ですね。
インスパイア&トレス=?、ギリギリセーフ?アウト?
トレースだとアウトになってしまうようです。
元ネタ写真の「創作性」は著作権侵害の判断にどのように関わってくるのか
過去の判例をみると、ある写真の創作性の程度が低い場合は、著作権侵害となるのは当該写真をそのままコピーして利用したような場合にほぼ限定される、とした知財高裁の判決(平成18年3月29日)があります。
この考え方に基づくと、逆に創作性の程度が高い写真なら、『類似』(侵害)とみなされるものの範囲は広くなることになります。
つまりこういう図式です。
▼「元ネタの創作性が低い」=保護範囲が狭い=デッドコピーでない限り,かなり似ていても「複製」ではない。
▼「元ネタの創作性が高い」=保護範囲が広い=デッドコピーはもちろん,かなり広い範囲で「複製」となる。
ちなみにここでいう「デッドコピー」とは「そのまんまコピー」という意味です。トレースもこの「デッドコピー」の一種ですね。
末次由紀「エデンの花」10巻が大石恵氏の写真集 『eternal』をトレスしたのでは?という疑惑が持ち上がりました。
現行の著作権では、トレース元の創造性の大小にかかわらず(著作権保護の範囲の広さにかかわらず)、トレースはダメと。
大石恵の写真集 『eternal』(初版1997年12月1日)21ページ
元ネタとなった写真の創作性の程度にかかわらず、トレース(そのままのコピーに近い)の場合、著作権違反の疑いが強くなるということのようです。
「100%の君へ」 1巻(初版2004年8月)160ページの挿し絵は 安倍麻美氏写真集『そのまま。』をトレスしたのでは?という疑惑が持ち上がりました。
探し出す能力の高さに脱帽。