「地名」から紐解く先人達のメッセージ、その土地におきた歴史や特徴を子孫に伝えるかつての地名の由来。
2016年9月20日 更新

「地名」から紐解く先人達のメッセージ、その土地におきた歴史や特徴を子孫に伝えるかつての地名の由来。

民俗学、それは日常生活の中の風習や行事などの由来を民間伝承の中から紐解いてゆく学問。伝承というと堅苦しく感じるかもしれないが、ごく身近な事象・・・例えば「地名」の由来を調べることも民俗学の範疇である。

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「地名」

名の通り、その土地の名前である。地名にはその土地におきた歴史や特徴を子孫に伝えるメッセージが隠されている。
宅地開発などで地名を変えてしまった結果、先人からのメッセージを受け取れずに、災害が起きた後でそのメッセージを改めて知ることもある。

災害と地名の関わりは深い。水に関係する単語を使う地名、谷に関係する地名など・・・皆様の生まれ育った地域にもあったかもしれない。今回はそんなお話です。
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「蛇」「龍」「竜」などが使われる地名

「蛇」「龍」「竜」などが使われる地名が全国にある。これは過去に大規模な災害が発生しているケースが多く、「蛇崩」「蛇抜」などは土砂災害の記録を伝える地名だったりする。土砂が流れていく様を蛇がうごめく様に例えているのである。

東京都目黒区の「蛇崩」

例えば、かつて、東京都目黒区に「蛇崩ジャクズレ」という地名があった。昭和7年(1932年)の目黒区誕生を機に消えた地名である。地域としては、祐天寺1丁目1~21番、上目黒1~26・28~45番あたりだ。現在は目黒区上目黒4丁目の野沢通りに「蛇崩」なる交差点名を残すのみとなっている。
古地図にみる「蛇崩」

古地図にみる「蛇崩」

さて、その目黒の「蛇崩」。「新編武蔵風土記稿」(江戸時代成立)によると、「昔、大水の歳、崩れた崖から大蛇がでた」からだそうだが、一説には「砂崩サクズレ」が「蛇崩」に転化し、その付近の蛇行する川の状態から「蛇崩」の文字を当てたとも言われている。事実、付近の川の名称は「蛇崩川」である。

時として「事後」に知れ渡ってしまうケースも

目黒の蛇崩について書かせていただいたが、おそらく近年、水害と蛇の関連について最もメディアをにぎわせたのは平成26年(2014年)の広島県広島市を襲った土砂災害ではないだろうか。

2014年8月20日午前3時20分から40分にかけて、局地的な短時間大雨によって安佐北区可部、安佐南区八木・山本・緑井などの住宅地後背の山が崩れ、同時多発的に大規模な土石流が発生、両区の被災地域での死者は74人、重軽傷者は44人に上った。この死者74人という数は、国土交通省の発表によると土砂災害による人的被害としては過去30年間の日本で最多であった・・・。

事後、当地がかつて「八木蛇落地悪谷」と呼ばれていた、という伝承がメディアに取り上げられた

この八木地区、古くは水の通り道として知られていたことから「八木蛇落地悪谷」と呼ばれていた、という伝承があったそうだ。当時のメディアはこの地名伝承についてよく取り上げたので覚えている人がいるかもしれない。確固たる証拠はない、単なる伝承であろうと、だからこそ、先人からのメッセージであったことは確かであろう。

この「伝承」を調べるのが民俗学でして・・・この災害報道当時、自分は歯がゆい思いをしたものである。消えた(消えかけた)伝承をもっと掘り起こしておけば、と。

そんな私の思い出はさておき。

「蛇」だけの場合、水害というより、雨乞い信仰に関連する地名も

同じ由来の地名が三重県紀宝町高岡地区の「蛇崩(じゃくつ)」。こちらは平成25年(2013年)に同県を襲った台風18号で氾濫した相野谷川で土砂災害が発生した地域である。

実は今明記した地域以外にも「蛇崩」という地名は全国に散在しているので、もし良かったら調べてみて欲しい。ざっと見ても奈良県や福島県、新潟県、山形県などなどにありますので。「蛇」だけで探してみたら北海道にも!
とはいえ「蛇」だけの場合、水害というより、雨乞い信仰に関連する地名も増えてくるので、また別のお話。

先人は地名に歴史を託してきた。大きく捉えれば地名は「文化遺産」である。
他の地名についてもまたお伝えできたら、と思います。

今回は「蛇崩」についてのお話でした。
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