「ある日……」(藤子・F・不二雄の短編の1つ) 終わりは唐突にやってくる!その「ある日」は、何の前触れもなく訪れる。
わかりませんか、
ある日突然……
核戦争が始まって一瞬にして小市民の生活が消滅したという結末です。
「ある日」は「唐突」にやってくる。
「伏線」など張るひまもなく、
「説得力」のある破壊なんてあるものか。
「ある日」がいつくるか……
今日にも……
プ
ツ
ン
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スパイダーマン(池上遼一版) 一般市民・人間社会こそ悪であると悟る。後味が悪く漫画史上最強クラスのダークなトラウマ作品に仕上がっている。
池上遼一版スパイダーマンこそが「元祖・日本のスパイダーマン」であり、いまだ多くの人々のトラウマ的存在になっている貴重な作品である。
具体的には高橋留美子も本作に強い影響を受けた一人であり、単行本にエッセイを寄稿したりもしている。また島本和彦もラジオで熱心に本作を語っている(島本氏自ら原作の1シーンを朗読し、その凄まじさを説明した)。
情報新聞の記事がきっかけとなり、日本中にスパイダーマン・バッシングが広まった。
ごく普通の高校生であったが、スパイダーマンになってしまったことで社会の不条理を身を以って知らされる事になる。
犯罪を止めようとしても犯罪者扱いされ、ヒーローとして認められても理不尽な無理難題を要求される。
かろうじて人助けに成功しても、犯人の背負ったどうしようもない事情を知ったり、あるいはあまりにも身勝手な動機に振り回される。
やがてヒーローとしての報われない活動の中、小森ユウとしても恋人を失い、友を失い、日常を奪われ……。
見えない虎(その正体は、場末の少女歌手・尾関ミキの自覚無き超能力)
新人歌手・尾関ミキは芸能プロダクションに潰された。「見えない虎」を無意識で発生させる能力を持った尾関は、次々と復讐していく。しかし、その能力を与えたのはユウ自身だった。
アイドルとしてデビューしたものの、著名バンドによって輪姦され、芸能プロによって泣き寝入りさせられ、さらに病気で余命も長くなく、絶望した彼女は無意識に「見えない虎」を作り出し、復讐を繰り広げていた。
度重なる不遇でほとほと世間に愛想が尽きていたユウは、当初こそ虎を止めようとするものの、最終的には被害者連中が悪いとばかりに、シャレにならないレベルの大量殺人にまで犯行がエスカレートしたこの虎を全面支持(=狙われている悪人を見殺しに)している。
しかし虎が最後の殺戮を繰り広げる前に、既にミキは被害者の共通点に気付いた最後の標的の悪足掻きによって力尽きていたのである。
最後の殺戮の際、本来ならそのまま消えるはずだった虎に力を与えて復讐を完遂させたのは、他でもないユウ自身の超能力だったのだ。
そして本作を締めくくったのも、口を血だらけにした虎だったのである。
虎は言う。「誰の心の中にも俺はいる」と。
人間の真の素顔・・・血まみれの凶獣なのだ・・・人間の業そのもの
当初は批判される度に深く苦しみ悩んでいたスパイダーマン=小森ユウも、結局彼らが売名行為に慣れきった、身勝手で厚顔無恥、どうしようもない存在であることを理解するにつれて達観していく。
果たして、こんな腐りきった人間社会のために超能力を使う必要があるのか?
そして最終話でユウが出した答えこそ、見えない虎への激励の言葉と無意識の内に行った助力である。
四人のアマチュア映像家が集まり、それぞれ「“世界を巡る自分”の合成フィルム」、「地域が開発されていく10年間の映像」、「スター・ウォーズのパロディ」を写して談笑する。
しかしうずくまったビン底メガネの青年だけは全ての作品を「くだらない」と一蹴する。そして彼は日常的な光景がプツリと消えるフィルム「ある日……」を上映。皆が「それだけ?」と聞くと彼はその内容の真意を語りだす。