ルパン三世『ルパンVS複製人間』(山田康雄、吉川惣司監督)の魅力とみどころを徹底的に解体する!おすすめの場面を一挙ご紹介!~
2019年10月15日 更新

ルパン三世『ルパンVS複製人間』(山田康雄、吉川惣司監督)の魅力とみどころを徹底的に解体する!おすすめの場面を一挙ご紹介!~

『ルパン三世』劇場映画化第1作目を記念した本作で、「ルパン」を語る上では決して外されない王道を行く最大傑作です。 これ1本を見れば『ルパン』の醍醐味すべてを見たような、そんな見応え十分の一作です。今回は本作の魅力を出来るだけ細かく解体し、誰にでも伝わるその魅力と脚色・技術について、じっくりお伝えしたいと思います。 本作の魅力は奇妙・トラウマ・幻想・ノスタルジック・ロマンスといった感動と斬新さを与えるもので、まさに無敵を冠するその脚色・演出効果は、未だ他のどの作にも破られていない「奇才の一作」として残っていることでしょう。

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〈概要〉

1978年12月16日に公開された本作は、モンキー・パンチ原作アニメとしては劇場映画第1作になります。

作品タイトルは『ルパン三世』ですが、ビデオソフト化の際に以後の劇場作品と区別するため、『ルパンVS複製人間』という副題があらためて付けられました。

全国ネットで放送された『ルパン三世・TV第2シリーズ』の高視聴率を受け、製作費5億円をかけて製作された超大作です。

ルパン三世と謎の人物マモーとの「賢者の石」を巡る争奪戦が描かれ、世界初の長編アニメビジョンであるとともに、通常より大判のセル画が用いられています。
キャラクターデザインは椛島義夫によって新たに描き起こされました。

1989年から始まったテレビスペシャルの初期4作(『ルパン三世 バイバイ・リバティー・危機一発!』から『ルパン三世 ロシアより愛をこめて』まで)のキャラクターデザインは本作をイメージしています。

クローン技術をテーマにしたSF作品は当時の流行に即したものであり、細胞分裂の限界(テロメア参照)などクローンに関する知見を盛り込む一方、実際のクローン技術では組成不可能な「複製人間」を登場させています。

配給収入は9億1500万円で1979年公開の日本映画としては9位にランクイン。キネマ旬報ベスト・テンでは26位でした。

【メイン・ゲストの登場人物】

●マモー/声:西村晃
不二子に賢者の石を渡すよう依頼した謎の怪人物。表向きでは世界一の謎の大富豪。子供ほどのような低い頭身で、不気味な姿をしている。

●スタッキー/声:大平透
アメリカ合衆国大統領特別補佐官(実在するポスト)で、次元曰く「世界で一番偉え男を操っている、おっちゃん」。米国へのマモーの脅迫に対し、極秘裏に対応を進めていた。

●ゴードン/声:柴田秀勝
スタッキーの部下。スタッキーと共に次元、五エ門を取り調べた。

●フリンチ/声:飯塚昭三
マモーの手下で、用心棒をしている大男。

―レギュラー陣の声優キャスト―

●ルパン三世/山田康雄/ボブ・バーゲン(英語版)
●峰不二子/増山江威子/パトリシア・小林(英語版)
●次元大介/小林清志/エリック・マイヤー(英語版)
●石川五エ門/井上真樹夫/カーク・ソーントン(英語版)
●銭形警部/納谷悟朗/デヴィッド・ポーヴァル(英語版)

【1分でわかるあらすじ】

静まり返った異国の地で、「ルパンが死んだ」という報を受けた銭形警部は、いつものようにICPOの特権を生かし、辺境の地にあるルパンのアジトに飛び込んだ。

そこで銭形が見たのはルパンの死体。

「お前が死ぬはずがない!」と泣きながら銭形の耳には「ルパンの美声」がふと聞えてくる…。

「相変わらず殺気立ってんなぁ、とっつあん?」

飄々としたルパンの声。

とたんに銭形の表情は一変し、いつもの追い駆けゴッコ。そのままルパンは逃げてしまう。

一方、マモーという富豪が、合衆国(ステイツ)を揺るがす取り引きを吹っかけていた。合衆国はむろん要求を呑まない。

マモーはある計画を立てながら、不二子とともに「賢者の石」と呼ばれる〝人を永遠に生かせる複製のキーアイテム〟を求め、人類の運命を変えようとしていた。

合衆国大統領のスタッキーはじめ部下のゴードンやフリンチは、ようやくマモーと接触を持ったルパン一家をマークし始め、次元大介・五エ門を確保し、ルパンの行き先を聴き出そうとする。

やがてマモーは不二子と2人だけの〝永遠の楽園〟を築こうと暗躍し始める。

ルパンはやがてマモーのアジトを割り出し、一対一の決闘をする。

けれど、超人的な能力に対抗することができず、大きな力の差を見せつけられたまま、ついに屈服してしまいそうになってしまう。

【『ルパンVS複製人間』の魅力!1】:冒頭からコピーとオリジナル!?

本作のメインは「コピーとオリジナル」の点に終始しており、その冒頭から識別不可能なID工作が重みを増してきます。

本作は「ルパンが死んだ場面」から始まりますが、そのルパンの生死さえ曖昧にさせられる点が、まず「つかみ所のない魅力」になっています。

ストーリーの最後まで、「生き残った方のルパンがコピーかオリジナルなのか」が判りません。結末では、複製(クローン)に関する神秘的な響きを醸し出します。

視聴者側に「コピーとオリジナル」の区別がつかないままの悶々としたわだかまりが残るのは、本作ならではの妙味となるでしょう。

【『ルパンVS複製人間』の魅力!2】:とっても静かな展開

本作は冒頭からまるで「静止画」を見せられているような、かなり静寂のシーンが連鎖してきます。

一見「モンタージュ」を見せられているような感覚を得させられ、その〝妙な静けさ〟はとても奇妙を醸し立てます。

その特殊な「静けさ」というものはまるで『first tv』に見られた大人の感覚すら表現してくるでしょう。
この引き込まれ方が最高にシュールで魅力的!

本作に見られる〝場面・行間ごとを読ませる特有のセンス〟は実に秀逸で、きっと「奇妙なノスタルジー」を想わせてくる不思議な彩りに感じられるでしょう。

【『ルパンVS複製人間』の魅力!3】:孤立した空間の魅力

本作の大きな魅力は、ルパン・次元・マモーの立ち位置に見られる個別の活気や生気です。

何気に淋しい場面が連続する本作ですが、その場面ごとの各キャラクターの躍動と存在感がその「1人の空間」を彩ります。

その空間はストーリーの要所に散りばめられていますが、どの場面においても各キャラクターは「自分の空間」を作り上げます。

その場面の1つ1つがストーリー全体を盛り上げ、視聴者側(観る側)にも「その場面に向き合わせ、そのキャラクターの生気に浸透する陶酔のような不思議を与えてくれます。

その〝1対1で作品とつき合わせる底抜けの爽快感〟をぜひご覧ください。この魅力の点も大きな魅力です。

【『ルパンVS複製人間』の魅力!4】:淋しい世界でのノスタルジー性

本作を観る上で欠かせない空間が要所に表れる静止画です。

絵グラや微妙な演出が功を奏し、その場面に釘づけになるような「トラウマ的な魅力」が満載なのです。

ルパンや次元が対峙しているそれぞれの場面でも、この〝静止画〟の演出が奇妙に成り立ちます。

その微細の躍動感をまたストーリーの輪にかけるように広げられる聡明な運びが、観ている人には壮大なスケールを与えてくるでしょう。

ストーリー後半に出てくる、「ルパンがマモー邸に忍び込むシーン」の秀逸さは見事!

おそらくこの『ルパンVS複製人間』のクライマックスと言ってよい程の幻想と神秘が入り混じった場面に相違ありません。

奇妙にも、そこに「昔に知ったノスタルジー」がひらひらと注ぎ込まれます。

【『ルパンVS複製人間』の魅力!5】:場面は必要以上に描かれない

本作では、主にマモーが理想とする「永遠の世界」が描いかれますが、本筋として残される表層には「マモーの突飛な理想が決して実現しない」というさも現実的な観点が根強く残ります。

絶対向き合わない「パラレルワールド」を請け負いながら、まるで幻想小説を読んでいるかのような脚色を成立させます。

この点です。この点の「2つの世界が何なく浮き掘られる様子」をご堪能下さい。

劇場版『ルパン』の前後作には決して観られなかった高次レベルの作法があります。

テレビシリーズの『ルパン』でもこのような〝行間を読ませる手法〟が幾重にも並んで表れています。

【『ルパンVS複製人間』の魅力!6】:冷徹な寂寥感

冒頭から最後まで、本作に彩られる各場面の調子は〝青白い淡い脚色〟で描かれていきます。

昼間の繁華街を歩く次元の姿さえも、なんとなく不幸な出来事を想わせる予兆を匂わせます。

とくに以下のシーンが見ものでしょう。

・ルパンのアジトの1つが不二子によって壊滅させられたシーン
・マモーが催眠にかかった不二子を抱きかかえて空へ消えていくシーン
・ルパンと次元がボロボロに崩れたバーで別れを交わすシーン

これらのシーンでは、誰か大切な人に抱きつきたくなるような、無性の寂寥が身を打ちます。

この寂寥に酔わせてくれる本作ならではの調子を堪能下さい!

哀愁という言葉じゃ表現できない、実にノスタルジックな痛快を感じさせる演出力が、従来の『ルパン』に彩られた〝永遠のロマン〟を写し出します…。
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