本当は妹を虐待していた…??映画『火垂るの墓』と原作者・野坂昭如の実体験の違い
2017年10月2日 更新

本当は妹を虐待していた…??映画『火垂るの墓』と原作者・野坂昭如の実体験の違い

1988年に公開されたジブリ映画『火垂るの墓』。その主人公・清太は、原作者・野坂昭如のアバターとされていますが、しかし、野坂は戦時中、清太のような妹想いの好青年だったわけではなく、幼い妹の食料を奪い、虐待まで加えるというひどい兄貴だったといいます。

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妹は“節子”だけじゃなかった

清太の妹といえば、ご存じ節子です。神戸大空襲で庇護者である母を失い、唯一の肉親となった2人のきょうだいが身を寄せ合いながら、必死に生きていく様は、いつの時代も観る者の心を揺さぶります。

実際は…
物心つく前から養子として引き取られた野坂には、血のつながらない2人の妹が存在しました。上の妹は病気で亡くなり、下の妹は栄養失調のため、終戦直後の8月22日にわずか1歳6ヶ月で死去してしまいます。この下の妹・恵子こそ、節子のモデルです。
節子 火垂るの墓より

節子 火垂るの墓より

泣き止まない妹を、脳震盪が起きるほどに叩いた

清太は、とにかく良き兄です。たしかに、孤児で居候の身分であるにも関わらず、働かない、家事も手伝わない、やることといえば、一日中部屋でグータラといったように、後に叔母さんから疎まれるボンボン気質ではありましたが、しかし、こと節子への愛情だけは、ゆるぎないものがありました。特に母親の死を告げられず、節子を励ますために校庭の鉄棒で大車輪をするシーンは、いつみても、いじらしくて泣けてくるというものです。
実際は…
早くに亡くなった上の妹には、それなりに愛情を注いでいたという野坂。しかし、戦争の激化に伴い、生活が困窮してくると余裕がなくなり、下の妹・節子には度々暴力をふるっていたといいます。泣き止まないときなどは、なんと、脳震盪を起こすほどに頭をぶん殴ったこともあるのだとか。戦時中のこととはいえ、1歳そこそこの赤ちゃんに対し、何たる仕打ちでしょうか。
ダウンタウン浜田の頭を殴る、喧嘩っ早い野坂

ダウンタウン浜田の頭を殴る、喧嘩っ早い野坂

親戚のおばさんはそんなに悪い人じゃなかった

『火垂るの墓』におけるキーマンの一人といえば、例のいじわるな親戚の叔母さんです。清太がいくら妹以外眼中になく、一方的に親戚一家との関係を悪化させる世間知らずな子供だとしても、グチグチといやみを言い、独断で彼らの実母の形見を売ってしまうという嫌な奴っぷりは、インパクト絶大でした。戦争がいかに人の心を荒ませるかを如実に体現したキャラクターだといえるでしょう。

実際は…
そんなに嫌なやつではなかったそうです。ひどい扱いを受けることなく、しっかり養ってもらったといいます。
ドラマ版では、親戚の叔母さんを松嶋菜々子が演じた

ドラマ版では、親戚の叔母さんを松嶋菜々子が演じた

防空壕には住んでいなかった

「横穴(防空壕)に住んどったらいいのに!」という叔母さんのいやみもあって、親戚一家を飛び出し、満池谷町の貯水池のほとりにある防空壕で暮らすことを決意した清太たち。しかし、ろくに食べるものもままならず、結果として、節子を栄養失調で死なせてしまいます。

実際は…
原作や映画のように、叔母さんと諍いが絶えなかったわけでもないので、当然、防空壕などには住んでいません。それどころか、野坂は親戚一家の三女で2歳年上の京子に恋心を抱いて彼女に夢中となり、幼い恵子の世話などそっちのけだったといいます。
防空壕のシーン

防空壕のシーン

栄養失調の妹の食料を奪って食べていた

防空壕に住み始めてからというもの、配給をまともに受けられず、近所付き合いもなくなり、食うに食われずの生活を送るようになる2人。そんな中、節子が栄養失調になってしまいます。なんとか衰弱していく妹を救おうと、清太は農家の畑から野菜を盗んだり、空襲で人がいなくなった民家へ空き巣に入ったりと、犯罪行為に手を染めながら奔走しました。

実際は…
わずかな食糧も貴重だった戦時中。野坂は自分の食べ物を優先し、恵子に満足な食事を与えない時もあったといいます。
たとえば、おかゆを2人で分けて食べる際、自分はスプーンで底からすくいあげ、しっかりとお米を食べるのに、妹に食べさせるときは表面のお湯の部分を飲ますだけだったとのこと。この時、罪の意識はまるでなかったそうです。
また、原作の『火垂るの墓』には、清太があまりの空腹から節子の粉ミルクを飲んでしまう描写があるのですが、こちらに関しては実話だそうです。こうして、痩せ細っていき骨と皮だけになった恵子は、誰に看取られるわけでもなく、餓死してしまったのでした。

『火垂るの墓』の2人が生き延びたパラレルワールドの小説も存在する

このように、ひどい兄貴だった野坂は、死なせてしまった妹・恵子への贖罪と鎮魂の気持ちを込めて『火垂るの墓』を執筆したのだとか。ちなみに、同作では清太・節子共に死んでしまいますが、野坂は、これと同時期に「2人がもしも戦争を生き抜いたら」というパラレルワールドを描いた小説『アメリカひじき』も上梓しています。気になる方はぜひ読んでみるといいでしょう。
アメリカひじき

アメリカひじき

(こじへい)
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