「ラリーの三菱」を決定づけたセダン、6代目ギャラン
2018年4月7日 更新

「ラリーの三菱」を決定づけたセダン、6代目ギャラン

ディアマンテ、GTO、ランエボ……。「90年代の三菱」といって思い浮かべるクルマたちのきっかけになった1台があります。6代目ギャランです。真面目だけど個性的なデザインと、先進技術を盛り込んだ圧倒的な走行性能を誇ったギャランから、これらのクルマが生まれました。今回は、1987年から92年にかけて販売された6代目ギャランを取り上げます。

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地味な存在だった三菱の乗用車

三菱自動車というと、近年はマイナスのイメージが浸透してしまいましたが、その前の90年代はRVブーム、さらにその前はというと、それなりのシェアをもってはいたものの、三菱グループと関連会社の御用達、というイメージが拭えませんでした。

我々ミドルエッジ世代では、1980年代後半からのRVブームを牽引したパジェロやデリカといったタフなRVを中心に、90年代に一世を風靡したディアマンテやGTOといった乗用車も忘れられません。今の20代後半から40代前半あたりの世代は、ランエボ(ランサーエボリューション)の印象も強いことでしょう。

それ以前となる80年代前半のラインナップは、ミドルセダンのギャランとエテルナ、小型車のランサーとミラージュ、軽自動車のミニカ、そして三菱グループの重役車デボネアといったところでした。販売店はギャラン店とカープラザ店の2系統を展開し、ギャラン・ランサーはギャラン店で、エテルナ・ミラージュはカープラザ店の扱いでした。

ギャランは三菱を代表するセダンで、1969年にコルトギャランの名で発売。エンジンは1300ccと1500cc(後年に1600ccなどを追加)で、トヨタ・コロナや日産ブルーバードなどをライバルとしていました。
アグレッシブなデザインとキャラクターで、それまでの三菱...

アグレッシブなデザインとキャラクターで、それまでの三菱のイメージを変えた初代ギャラン

1973年のフルモデルチェンジで車名がギャランとなり、1600ccのほかに1850ccと2000ccも設定されて車格をアップ。同年には小型車のランサーが誕生し、三菱のラインナップの基礎ができました。

1976年にフルモデルチェンジした3代目は、Σ(シグマ)のサブネームが付けられてギャランΣとなりました。エンジンは引き続き1600cc、1850cc、2000ccの3種類で、上級車種の高級感が高められました。これにより、トヨタ・コロナや日産ブルーバードのほかに、トヨタ・マークⅡや日産ローレルといった、他社の上級セダンもテリトリーになりました。

1978年には兄弟車のエテルナΣも追加され、販売店は2系統体制に。以後、1980年に4代目、1983年には5代目が登場し、FF(前輪駆動)化されました。

かつて、親戚がギャランΣの最上級グレードに乗っていて、子どもながらに高級車っぽいなぁ、と思ったものです。どうもお付き合いがあって三菱に乗っていたようです。
従来よりもラグジュアリー志向を高めた3代目ギャランΣ。...

従来よりもラグジュアリー志向を高めた3代目ギャランΣ。後期型は角形のヘッドライトを採用し、高級感を一層高めた。

斬新なデザインで大ヒットした6代目

1987年に6代目ギャランが発売になりました。ギャランΣになって以降、3代目、4代目は直線的なデザインでしたが、先代の5代目は曲線を用いたソフトな、古くさい表現をすれば女性的なデザインでした。
高い車高と大きな窓が特徴の6代目ギャラン

高い車高と大きな窓が特徴の6代目ギャラン

イメージリーダーになったVR-4は、大型のバンパーを採用した。S字状の車体側面の断面も特徴。
6代目も、当初はその延長線上のデザインだったと言われていますが、社内のプレゼンテーションで「新鮮さに欠ける」と評され、新たなデザインが若手デザイナーにより作り上げられました。それが6代目のデザインで、40代以降は拒否反応が強いものの、それ以下の世代から支持されたため採用されたそうです。

6代目は、それまでのギャランΣを見慣れた目には突拍子もないデザインに見えるでしょうし、当時は低くて狭いがスタイリッシュなトヨタ・カリーナEDが大ヒットしていましたので、キャビンの広い6代目ギャランのデザインに心配を抱いたのも分かります。それでも、流行と正反対のデザインにGOサインを出した上層部の英断は素晴らしいものです。
2000ccエンジンを積む標準仕様の上級グレードのMX

2000ccエンジンを積む標準仕様の上級グレードのMX

タイヤやエアロパーツはもとより、バンパーがVR-4とは異なる。
よく見れば、ヘッドライトの下端が内側に入った逆スラントノーズからは、初代・3代目へのリスペクトが感じられますし、広く大きなキャビンの提案は、正統派セダンのあり方を世に問うた、ともいえます。また、大きくて視認性に優れるメーター、ダイヤル式の空調スイッチ、グリップ式のドアハンドルなどは、当時の自動車評論家が指摘する「いいクルマのあり方」を一つひとつ具現化したもので、それをデザイン的にも美しく機能的にまとめ上げているところが、6代目ギャランの最大の長所といえるでしょう。
低い位置に設定された操作パネルと大きなメーターが特徴の...

低い位置に設定された操作パネルと大きなメーターが特徴のダッシュボード

下級グレードでは、欧州車では一般的なダイヤル式の空調スイッチも採用された。
6代目ギャランは、真面目なデザインと先進技術を積極的に取り入れた高性能が評価され、日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞しました。

私自身は、薄く平べったいセダンがあまり好きではなかったので、ギャランが出たときは非常に驚きましたし、スポーティなデザインがカッコイイと思いました。発売から10年以上が経ち、先輩が乗っていたこのギャランに同乗させてもらったときは、とても嬉しかったのを覚えています。

VR-4を前面に、ハイテクと高性能をPRする前期型のCM

なお、6代目の登場後も5代目が併売され、デボネアと同じV型6気筒3000cc搭載車を設定して上級志向のユーザーをディアマンテの登場までつなぎ止めました。一方で、1800ccのお買い得車も用意していました。

アメリカでの受賞をPRする1989年のCM

ハイテク四駆のVR-4がラリーを席巻

6代目は4ドアセダンのみのラインナップで、Σのサブネームが外されて久しぶりに「三菱ギャラン」として発売されました。Σのなかでも4代目はターボモデルの追加や、硬派なイメージの高倉健をCMに起用したこともあり、比較的男性的なクルマでしたが、5代目は見た目がソフトでしたので、6代目とのギャップは大きかったです。
マイナーチェンジ後の2000ccを積む上級グレードのMX

マイナーチェンジ後の2000ccを積む上級グレードのMX

バンパーがVR-4と同様に大型化され、ウインカー位置がバンパーからヘッドライトの両脇に変更になった。
しかし、6代目はこのデザインで成功だったといえるでしょう。なんと言っても、世界ラリー選手権(WRC)のグループAへの参戦を前提に開発されたVR-4が設定され、直列4気筒2000ccのインタークーラー付きターボエンジンは205PSを発揮(のちに220PSまで向上)し、世間を驚嘆させました。このハイスペックなエンジンには、6代目のマッシブなデザインが似合います。

このVR-4は、高出力エンジンだけでなく、フルタイム4WDや後輪操舵システムの4WSも装備し、4VALVEエンジン、4WD、4WS、4IS(4輪独立懸架サスペンション)、4ABSからなるハイテク装備を「ACTIVE FOUR」と命名していました。当時、フルタイム4WDが各社で採用されてブームになっていましたが、ギャランはその最先端を行ってました。
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