2018年3月28日 更新
画期的だったハイパワー高級セダン、アリスト
ハイパワー車が続々と登場した80年代末から90年代前半。トヨタでは、根強いユーザーを持つクラウンと、国際水準のクオリティで衝撃を与えたセルシオの間に、スポーツカー顔負けの新たな高級車を投入しました。圧倒的なトルクと独自の高級感で魅了したアリストです。
3ナンバーセダンが続々出た90年前後、クラウンとは違う高級車を模索
1989年の消費税導入の一方で、自動車税が大幅に見直され、2000cc以上の3ナンバー車の税金が細分化され、実質的な値下げとなりました。その結果、3000cc以上の国産車が増加し、クラウンやセドリックといったセダンも、主力を2000ccから3000ccに移行するとともに、フルモデルチェンジとともに、ボディーサイズを大きなものにしていきました。
威圧的な顔ではないが、ボリューム感あるデザインで存在感があった初代アリスト
1991年10月にクラウンは9代目にフルモデルチェンジし、ハードトップ車は3ナンバーボディーに変更。さらに上級グレードのマジェスタを初めて設定しました。マジェスタは、ライバルの日産・セドリック&グロリアの上位にあるシーマを狙ってV8エンジン搭載車を独立させたものですが、それだけでなくクラウンで初めてフルモノコックボディを採用するなど、エンジニアリングの市場調査的な意味合いも含まれていたと推察されます。
このマジェスタには、プラットフォームを共有する兄弟車がありました。これがアリストです。アリストは、クラウンよりもスポーティな高級セダンと位置付けられ、3ナンバー専用ボディーが採用されました。
空気抵抗を小さくするため、ハイデッキのトランクが設けられた。ツインターボ車のタイヤサイズは225/55R16で、7本スポークのアルミホイールを履く。
しかも、トヨタの内部デザインではなく、イタリアのデザイン会社、イタルデザインが手掛けました。同社は、スーパーカーから小型車まで幅広く手掛けたジョルジェット・ジウジアーロが設立したデザイン会社です。そのため、アリストにはこれまでの国産高級セダンにはない雰囲気がありました。
3000ccのNAエンジンを積む3.0Q。タイヤサイズは215/65R15で、間隔の細かいアルミホイールを履く。
国産乗用車最強の44.0kgmの最大トルク
アリストが鮮烈だったのは、デザインだけではありません。搭載されるエンジンも格別でした。当初、3.0Qと3.0Vの2グレードが設定されました。
3.0Qはクラウンと同じ230PSの直列6気筒3000ccのDOHCエンジンでしたが、3.0Vにはなんと、最高出力280PS、最大トルク44.0kgmの直列6気筒3000ccのDOHCツインターボが搭載されました。これを大きなボディーのセダンに搭載し、4速ATでクールに制御するのが“新しい高級”として、バブル時代のヤングエグゼクティブ(これも死語ですね)にヒットしました。
なお、このツインターボエンジンは、1993年5月にフルモデルチェンジした2代目スープラにも搭載されました。
シンプルで高級感がある、アリストのダッシュボード。
このように個性的な成り立ちを持つ高級セダンとなったアリストですが、私自身は子どもながらにトランクがでかくて不格好だと思っていました。レガシィやボルボなどのステーションワゴンがヒットしていた時代でしたので、いっそステーションワゴンにしちゃえばいいのに、などと思っていたものです。
しかし、当時好きになった子の家がアリストに乗っていると知り、急に好きになりました。勝手なものですね(笑)。
オプションで本革シートも選択できた。
マイナーチェンジで北米仕様に似た外観に
当時のCM動画を見ると、普段はセンチュリーの後席に乗っている支社長が自らハンドルを握るクルマ、という設定がされていますが、実際、クラウンよりも自分で運転する高級車、として販売されました。
アリストにはその後、NAエンジンの豪華仕様「3.0Q-L」や、V型8気筒4000ccエンジンを搭載した4WDモデルの「4.0Z i-Four」が追加されました。
マイナーチェンジでリアバンパーの側面に反射材が加わり、テールライト周りのガーニッシュはシルバーのメッキで縁取りされた。
93年には北米のレクサスブランドでもレクサスGS300の販売が始まりました。こちらはNAエンジンのみで、日本ではイメージリーダーだったツインターボは設定されませんでした。
しかし、いわゆる「高級車」的な威圧感がないデザインや、販売店が高級車を扱い慣れていないオート店・ビスタ店(現在のネッツ店)だったこともあり、販売にはやや苦戦したようです。そのせいか、1994年8月のマイナーチェンジでは、フロントグリルの縦桟にメッキが施され、リアバンパーの側面に反射材が追加されるなど、北米仕様に近づけた内容の変更が加えられ、パッと見たときの高級感が増しています。
フロントグリルの縦桟にはメッキが施され、高級感が増した。
さらに1995年8月には助手席エアバッグの追加、1996年7月にはVVT-iエンジンの搭載など、たびたび変更が加えられています。この間、95年8月にはクラウンが10代目にフルモデルチェンジしています。
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