「祟り」は予測不可能な天災や疫病を現世に恨みを残して死んだ霊の仕業と捉える、日本的な霊魂への信仰。
2019年10月2日 更新

「祟り」は予測不可能な天災や疫病を現世に恨みを残して死んだ霊の仕業と捉える、日本的な霊魂への信仰。

江戸を代表する神社の1つである富岡八幡宮(とみおかはちまんぐう)、通称「深川八幡宮」で、とても悲しい事件がおこりました。そのニュースの中で、「祟る」というキーワードが出ていたので、これについて少し書かせていただきます。事件とは別のものとして読んでくださいませ。

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江戸を代表する神社の1つである富岡八幡宮(とみおかはちまんぐう)、通称「深川八幡宮」で、とても悲しい事件がおこりました。そのニュースの中で、「祟る」というキーワードが出ていたので、これについて少し書かせていただきます。事件とは別のものとして読んでくださいませ。

祟り神「御霊(ゴリョウ)信仰」

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日本は古来より、不慮の死を遂げた人間はこの世(にいる人たち)に恨みを持った怨霊と化し、この世に災害や疫病をもたらす…と信じていました。これを「御霊(ゴリョウ)信仰」と言います。この御霊の通称というか一般的な読み名が「祟り神」。

自分たちではどうにも予測不可能な天災や疫病は、この世にうらみを残して死んだ霊のしわざと捉える、日本的な霊魂への信仰です。そして、それら怨霊のせいであると考えた結果、怨霊の怒りを鎮めるための儀式を行うようになりました。

863年、初めて朝廷で行われた御霊会

この信仰が国家レベルで行われるようになったのが平安時代。朝廷の公式記録『三代実録』によりますと貞観5年(863年)5月20日、京・神泉苑において「御霊会(ゴリョウエ)」が行われております。これが朝廷で行われた御霊会の初見と言われています。この時に御霊として鎮められた者の中で最も有名なのは早良親王(サワラシンノウ)。平安京への遷都の一因とも言われる怨霊です。余りに祟り(災害)が強すぎたため、崇道天皇と追称されております(こんな例は他にはありません)。

『三代実録』には崇道天皇(早良親王)、伊予親王、藤原夫人(伊予親王の母)、觀察使(藤原仲成?)、橘逸勢、文室宮田麻呂の御霊者がいる・・・と書かれております。疫病が流行し死者が多いのは御霊者のせいである、と。京畿から外国まで、夏から秋まで御霊会を修め、絶えさせないようにしましたよ。仏を礼拝して経を読み、あるいは歌って舞い、弓矢を射て、相撲を取りましたよ…というような内容が残されております。芸能で「おもてなし」をした様子がうかがえます。

「祇園御霊会」

貞観11年(869年)には全国で疫病が流行した際は素戔嗚尊(牛頭天王)の祟りとして、6月7日に全国の国の数に殉じて66本の鉾をたて、同14日に神泉苑にて御霊会を行ったそうです。これを別名「祇園御霊会」と言います。

祇園八坂神社 神幸祭 寺町御旅所 平成23年7月17日.mpg

本来、日本古来の神様である素戔嗚(スサノオ)さまですが、当時は神仏習合により素戔嗚と牛頭天王が合体しておりまして、この素戔嗚×牛頭天王を荒魂な疫病神とする信仰がありました。その本拠地が現在の京都・八坂神社。牛頭天王は祇園精舎の守護神とされておりますため、この信仰関連の神社は「祇園社」「天王社」など呼ばれております。祇園信仰に基づくお祭は各地に広がりまして、地域によって「祇園祭」、「天王祭」などと呼ばれるようになりました。
祟り、とだけ聞くとおどろおどろしく感じますが、日本人は元来ポジティブ。祭礼に昇華させ、地域のお祭りに変えております。

深川の事件は、今は悲しい感情がこみ上げますが、お宮は地域の皆様にとって大事な空間。また元気な声でにぎわう祭礼などに足を運ぼうと思う自分です。
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