黄昏の文学 人情と無垢の直木賞作家、浅田次郎の名作品
2018年5月16日 更新

黄昏の文学 人情と無垢の直木賞作家、浅田次郎の名作品

昭和半ばから平成にかけて、文化と文学の黄昏とも呼べる時代があった。同じ時代を指して黄金期であったという声もある。あの時代には誰がいたのか。何が書かれていたのか。今回は今なお人気を誇る直木賞作家、浅田次郎の作品を取りあげる。

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 「ぽっぽや」とルビがふってある。
 第16回日本冒険小説協会大賞特別賞、第117回直木三十五賞受賞作品。
鉄道員

鉄道員

娘を亡くした日も、妻を亡くした日も、男は駅に立ち続けた―。心を揺さぶる“やさしい奇蹟"の物語…表題作はじめ、「ラブ・レター」「角筈にて」など8編収録。第117回直木賞受賞作。
直木賞の受賞作である表題作をはじめとする計六篇の短編集。いずれもウェルメイドの名に値する道具立て、語り口ではある。
via 福田和也「作家の値うち」
※「作家の値うち」には〈計六篇〉とあるが、現在の集英社文庫版「鉄道員」には8篇収録されている。
 大人気ロングセラー作品なので何パターンかの文庫本が出ている。よって収録作品数が6本だったり8本だったりブレがある。

 さて福田和也「作家の値打ち」は結構な辛口本である。
 ずばずば言っているので引用は避けたが、まとめると「よくできた作品群だが、同じ仕掛けが多用されている。どうかと思う」というようなことが書かれている。

 むずかしい問題であると思う。

 世間は浅田次郎という作家に何を求めているのか?
 浅田次郎は世間に対してどうアプローチしようとしているのか?
 そしてこれらの関係は成功しているのか、失敗しているのか。
 そういう繊細な問題を孕んでいる。

 それを踏まえた上で福田和也はあえて辛口的な評をしていると思うのだが、浅田次郎がより技巧的に、より過激になっていったらそれはもう浅田次郎ではなくなってしまうのではないか。

 それが良いことなのか悪いことなのかもまたむずかしい問題であると思っている。
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