ファー・イースト・アジット・ハウス・クワルテット
現在のように野外レイヴが一般化する以前の、1980年代後半から、シャーマニズム、神秘主義などをベースに、原始宗教の儀式のような呪術的なイメージを持つ、野外レイヴ・パーティをおこなっていた。
工事中のビルや倉庫、廃校や野外スペースなどで行われる彼らのレイヴ・パーティ「イリーガル・レイヴ」シリーズは、基本的にすべて、シークレット・パーティとして、場所や日時は公表されず、特定の人たちだけが特定の方法で参加することができた。
内外に「レイヴ・コミューン」を形成、国家内国家を宣言したり、マスコミ拒否を続けるなど、ヒッピー・リバイバル的思想を感じさせる活動を行っていた。
バンド活動期には、TV・雑誌・新聞等のマスコミには一切登場しないというポリシーを貫いたため、一般には知られることは少なかったが、解散後の2005年に公認サイトが立ち上げられ、ウェブを通じて初めて一般に情報が公開された。
メンバー
バンド活動内容
1988年、サイケデリック・ロック・グループ・淫心のメンバー、田嶋エリサ、スペースDJリョウ、芙苑晶、市川カヲルの四人がロンドンに滞在中、セカンド・サマー・オブ・ラブの名で呼ばれるアシッド・ハウス・ムーブメントに遭遇、グループ名を改め、結成された。結成当時のグループ名は「LSD Liberation Front(LSD解放同盟)」だった。
1989年、LSDやメスカリンなどのサイケデリック・ドラッグに影響を受けたファースト・アルバム『十億の神経の針(A Billion Nerve Needles)』を、ニューヨークのレーベル、 Nerve Nets Records より発表。
via rymimg.com
1988年、日本に帰国後、国内初と推定される野外のレイヴ・パーティをおこなう。以後、ヨーロッパや日本の各地で「レイヴ・ビー・イン(Rave Be-in)」と題する、野外レイヴ・シリーズを先駆的に行った。
※サイケトランスイベントイメージ画像
1993年以後はクラブ出演等の公のライブ活動を停止、勢いを失った。
「ファー・イースト」の活動においてはトラブルも多く、1994年以降は、メンバーの逮捕、堕落や死によって活動自体が困難になっていった。1995年には市川カヲルが死去、さらに1997年には田嶋エリサがドラッグのオーバードースにより死亡するという悲劇的な顛末を迎え、これがバンド解散へとつながった。バンドは合計6枚のアルバムを残した。「ファー・イースト」の四人のメンバーのうち、他の三人は死亡したり引退しているため、芙苑晶のみが唯一の現役アーティストである。
(オリジナルアルバム)
「十億の神経の針(A Billion Nerve Needles)」(1988年)
「心臓二金属ノ花咲ク(Metal Flowers Bloom On My Heart)」(1991年)
「無法的熱狂祭(Illegal Rave)」(1993年)
「肺魚の夢(Lung Fish Dreams)」(1995年)
「太陽黒点(Sunspot)」 (1997年)
「電気羽虫(Electric Locust)」(1998年)
サイケデリックトランスなどのメロディーは、聴いてる人の感情が高ぶり、解放され踊り出す人が多いです。
野外レイヴで宗教パフォーマンスを演出していた?!
当時、野外レイヴでダンサーの田嶋エリサがやっていたブードゥー教の儀式を思わせるパフォーマンス(鳥や動物の仮面をつけて登場、手首を切って自分の血を赤ワインと混ぜて飲む、鶏を殺して生き血を裸体に浴びる、等々)や、他のメンバーたちの楽器を破壊するなどの行為をはじめとする過激なイメージ、さらに、彼らのLSD愛好や、レイヴの時に客たちが興奮して踊りながら裸になってしまうといったこともあり、当時、バンドメンバーは、レイヴ上演中に風紀紊乱や騒音などの理由で何度となく逮捕されている。
※これはヴードゥーの旗
「倉庫や廃墟のビル、野外スペースなどで行われる彼らのレイヴは、基本的にすべて、シークレット・パーティとして、おもに場所や日時はメディアに公表されず、特定の人たちだけが特定の方法で参加することができた。こうしたいわゆる「イリーガル・レイヴ」において、おそらく日本で最初のバンド(世界初の説もあり)ともいわれる彼らは、その独特なレイヴ・スタイルから「レイヴのドアーズ」「テクノ・ドアーズ」などの異名でも知られ、一部に熱狂的ファンを持った。アシッド・ハウスの東洋における第一人者であるのみならず、こうしたイリーガル・レイヴに特化したバンドとしては、今でさえおよそ世界にも稀な、いまだにフォロワーの現れない、ワン・アンド・オンリーなグループであると言えるだろう。しかも、彼らのレイヴ自体も、ふつうのパーティとは違っていて、一種の古代宗教の儀式にも似た「秘儀としてのレイヴ」というテーマを持った、特異な「暗黒のバンド」だった。そこではダンサーである田嶋エリサが つねに一種の生贄のような存在=巫女として立ち現れ、司祭である他の三人のミュージシャンたちの奏でる呪術的なダンス・ミュージック=トランス/アシッド・ハウスによって、生と死の儀式を執り行うというコンセプトが秘められていた。いまではほとんど伝説的な、田嶋エリサが踊りながら最後は裸になり、鶏を殺してその生き血を浴びるなどのパフォーマンスがそれを象徴している。彼らは当時その隠された意味をみずからとくに釈明しなかったものの、その異様なステージの空気に反応したファンたちも、半裸になって踊り始めるなど、伝説は数多い」
日本のレイヴ音楽グループ
おもに日本やヨーロッパので活動し、サイケデリックトランスや野外レイヴの草分けとも見なされた。
LSD解放同盟とも呼ばれている。