母という立場は、子供を産み落としている。それが同性であれば、どうしても同一性を見出したいと願い、鏡のような存在として受容したり拒絶したりする。それが例えば異性の親とだったらそのまま断絶してしまうような出来事も、母と娘だけはそうはいかない。なぜなら、母を切り捨てることは、娘にとっては自分を切り捨てることと同義だからなのです。
醜形恐怖症と親子の確執(毒親による問題)を題材とした作品であり、娘を愛することができない母親と母から愛されない娘、両者の苦悩についてファンタジーの要素を織り込んで描いた。
イグアナが人間になったという夢の中の話が現実かどうかは曖昧なままで、視覚的にわかりやすく母娘の関係を読者の解釈に委ねたような作品だと思います。
文庫「イグアナの娘」は短編集で、表題作他に親子や家族にまつわる短編が収録されています。いくつかあらすじをご紹介します。
母は何故、娘を愛せないのだろうか。良くも悪くも自分に似ているからである。似て欲しいところは似てなくて、似て欲しくないところが似るというのは、往々にしてよくあることだ。何も母親が単に未熟な親というわけではない。その生育暦の中で「やり残された課題」であったり、「隠れた願望」が、特に同性の我が子の上に、無意識のうちに投影されるからである。
私も姉のようなリボンやフリルのブラウスが着たかったし髪も伸ばしたかった。でも母は「あんたには似合わない」と一蹴。私は少し伸びると母にバッサリ切られていて子供心に愛されてない、姉との扱いの差を悲しく悔しく感じていました。リカは姉ですが私はリカの気持ちが手に取るように分かりました。
ドラマ版を見てから読んだ人には短編ということもあり、あっさりとした印象をうけるようですが、この短い頁に凝縮された人間模様に共感する人も多いと思います。