『マカロニほうれん荘』 飛び抜けて早かった炸裂するギャグセンス
2017年10月26日 更新

『マカロニほうれん荘』 飛び抜けて早かった炸裂するギャグセンス

1970年代後半の「少年チャンピオン」最盛期に登場した、時代に先駆けすぎたスラップスティックなギャグマンガ。「消えたマンガ家」でも有名なこの作品をご紹介!

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スラップスティック、つまりは「ドタバタ」
当時のギャグ漫画は
ストーリーがあって、ときどきギャグを言って「ずっこける」系
もしくは主人公の行動のみが不条理(がきデカなんかそういう感じ)
というものだったんですが
全ページにわたってドタバタを前面に出すタイプは、初めてかと。
マカロニほうれん荘第1巻「負けるな!ひざかたさん」より

マカロニほうれん荘第1巻「負けるな!ひざかたさん」より

このスピード感ですね。
via マカロニほうれん荘第1巻89ページ 鴨川つばめ 秋田書店
全面がちゃがちゃしたページもあるかと思えば
スタティックな場面でコントをかます
そういったシーンもかなりあって
そのリズムが予測できないんです。
マカロニほうれん荘第2巻「敵前上陸」より

マカロニほうれん荘第2巻「敵前上陸」より

タテコマと横コマの対比が面白い。
via マカロニほうれん荘第2巻176ページ 鴨川つばめ 秋田書店
私は少年チャンピオンのチェッカーフラッグだと思っていたんだけどな。
少年向けにしては高尚な、カオスなギャグと
とてもわかりやすいドタバタが混在している状態は
今から考えると「ジェットコースタームービー」的なスピード感がありました。
ただトップスピードで流れるのではなく、流れがいきなり止まり、脳内でずっこける感じ。

唐突な場面転換に、突然挿入される理解不能なアクション、
セリフとアクションに脳内がシャッフルされるようなグルーヴ感。

同時期にジャンプで連載されていた江口寿史の「すすめ!!パイレーツ」と並んで
現代のギャグマンガの方向性を決定づけたと論じている人もいます。

ときどき挿入される微エロとパロディ

マカロニほうれん荘第1巻「地上最強の男」より

マカロニほうれん荘第1巻「地上最強の男」より

スカートめくりは頻発してました(笑
via マカロニほうれん荘第1巻140ページ 鴨川つばめ 秋田書店
別にエロマンガじゃないんで、最初からそういうのは期待(^^;)してないけど
ギャグ炸裂の途中で挿入されると
微エロでも「おっ」となったりします。
マカロニほうれん荘第5巻「バミューダ・トライアングル」より

マカロニほうれん荘第5巻「バミューダ・トライアングル」より

これは途中挿入じゃなくて冒頭ですが。
via マカロニほうれん荘第5巻146ページ 鴨川つばめ 秋田書店
今見ると別にきわどい絵でもなんでもないけど
(えっとこれは、自分が汚れちゃったってことかな?)
当時はがきデカと並んで、PTAのやり玉にあがってましたね。
KISSのアルバムジャケットのパロディ

KISSのアルバムジャケットのパロディ

2013年に発売されたTシャツのデザインです。
パロディはかなりバリエーションがあって
円谷特撮ものを筆頭に、大御所のマンガとか
ロックミュージシャンや当時の流行りのことばなど
知ってる人ならくすくす笑えるものも多かったです。
そもそも主人公3人組の名前が新撰組のパロディですし、
「トシちゃんかんげきーー」も
当時西条秀樹が叫んでた「ヒデキ感激―」のパロディですね。
マカロニほうれん荘第7巻「日はまた昇る!!」より

マカロニほうれん荘第7巻「日はまた昇る!!」より

つげ義春の「ねじ式」ですね。
うしろのいるのは「七味とうがらし」先生になっているトシちゃん。
via マカロニほうれん荘第7巻63ページ 鴨川つばめ 秋田書店
リアルタイムで観ていて一番目新しかったのは、そのパロディ要素だ。新撰組はもちろんのこと、ウルトラマン(円谷プロの内状っぽいものまで描いている)等の特撮ヒーローもの、いくつかの格闘技やそれらを扱ったマンガやアニメ、モードの正確な戦争もの、学園闘争などの、必ずしも普遍的ではない元ネタを一般人にもとっつきやすいよう処理をほどこし、普遍的なギャグに昇華させて、しかもそれが超絶的にハマっていて面白かった。たぶん現在のパロディマンガの推進役(嚆矢は以前にあったような気がする)であり、「プロの土壌で大っぴらにパロディを使ってはいけない」というこれまでの暗黙の了解を大々的に打ち破った、最初の商業作品ではないだろうか。

比べる作品がない。オンリーワンかもしれない。

「マカロニほうれん荘」について
どんな絵? 誰の作品に似ている?と聞かれても
どの絵にもどの作品にも似ていない。
このマンガと比べる作品はないんです。
こんな空前絶後の作品が、1970年代後半のあの時代にあったのは
奇跡とも言えるのではないかと。
「マカロニほうれん荘」のページをめくる田中は「この漫画家(鴨川氏)に出会って、僕は今の世界にきたようなもんですからね」と作品の影響を受けて、お笑いの世界に入ったのだと明かした。
そういえば爆笑の田中は井草高校出身ですわん。

BSマンガ夜話 「マカロニほうれん荘」 鴨川つばめ (2002年)

当時の別のマンガについてもいろいろ言及してますね。
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