【創業した者、されたモノ】松下電器(パナソニック)をつくりだした男、松下幸之助
2018年2月20日 更新

【創業した者、されたモノ】松下電器(パナソニック)をつくりだした男、松下幸之助

丁稚奉公から始まる経歴。うまくいかない創業直後。事業の拡大と《30年戦争》。パナソニック――松下電器をつくりだした男はいかなる経歴の持ち主だったのか。【創業した者、されたモノ】第4弾。

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 PHP研究所は電気や電子に関係した会社というわけではない。言ってしまえば出版社である。

 出版社は戦後の社会に文化と倫理をもたらすという目標も持っていた。
 これに感謝する人が多く、GHQへの嘆願を行ったために松下電器は制限会社指定を解除されることになる。

 なお、PHPは現在も出版社として健在である。
 2009年には直木賞作品を輩出したことでも知られている。

30年戦争

中内功

中内功

 さてここでひとつのポイントがやってくる。ダイエー、中内功と松下の間に起こった《30年戦争》である。
 別名《ダイエー・松下戦争》。
 松下側の立場に立つと《松下・ダイエー戦争》ということになるのだろうか。

 戦争といっても当然武力衝突をしたわけではなかった。ことのきっかけは《値下げ》である。

 当時、松下電器が出荷していたテレビがあった。
 松下はメーカーである。よって当然、ある程度の額で売っておきたいという気持ちが発生する。
 さらに業界全体の利益を目指すならば、値下げ競争などは一定の範囲内で抑えて、全員がある程度の利益を得るような状態にしておきたい――という思想があったかもしれない。これを裏付ける資料や発言はいくつかある。

 これを中内功は持ち前の安売り精神で無視、小売希望価格の20%引きという大値引きをやらかした。
 さあそこからが大変だった。
 松下はダイエーに対して《出荷停止》の重い措置を取り、これに対してダイエーは《独占禁止法に抵触》の大義名分で告訴。

 以後、2社は30年間に渡って《戦争》と呼ばれる争いを続けていくことになる。

松下幸之助の理念

松下幸之助

松下幸之助

 さて。

 最後に松下幸之助らしい理念を、松下本人の著作である「道をひらく」から紹介しよう。

 松下は「真実を知る」と題した短文のなかで、どんな苦しいこともつらいことでも、見方ひとつで辛抱したり明るくしたりすることができる、と書いている。
 そしてこう続ける。
ただ、この、ものの見方を正しく持つためには、人間は真実を知らねばならないし、また真実を教えなければならない。つまり、ものごとの実相を知らねばならないのである。
via 松下幸之助「道をひらく」
 松下幸之助は、中内の《覇道》に対して《王道》を好む人であった。
 他人にやさしく、自らに厳しくというバランサー的な理念をたどっていくと《誠実な理想主義者》の部分がうかびあがってくる。
 そして誠実な理想主義者とは、時として現実主義者よりもより正しく現実というものを分析し得るのである。


 これまでダイエーの中内功、ホンダの本田宗一郎、ソニーの盛田昭夫を紹介してきたが、彼らと松下には実はひとつの違いが存在している。

 松下幸之助には、「怒ると怖かった」という逸話があまりにも少ないのである。実際はどうだったのだろうか?
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