【創業した者、されたモノ】光栄をつくりだした男、シブサワ・コウの野望と名シリーズ作品
2018年2月18日 更新

【創業した者、されたモノ】光栄をつくりだした男、シブサワ・コウの野望と名シリーズ作品

《川中島の合戦》から始まり、《信長の野望》《三國志》などヒットシリーズを生みだすこと数十年。《光栄》をつくりだした男はいかなる野望の持ち主だったのか。【創業した者、されたモノ】第5弾。

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 《歴史三部作》のうち、《信長の野望》と《三國志》はシリーズ10作をゆうに超える人気シリーズとなっており、現在も人気は維持されている。
 一方で《蒼き狼と白き牡鹿》は4作品まではつくられてものの、5作品目がつくられることはなかった。なぜか。

 その理由は意外にも「キャラクターのイメージ」にあると本書では語られている。
 日本や中国など主に国内で覇を唱えていた信長、三國志の登場人物達とは異なり、チンギス・カンは国外にも覇を唱えていった人物である。

 すると何が起こるか。海外の人々がチンギス・カンに対し、《多くの国を征服した侵略者》というイメージをもってしまっているのである。するとゲームの代名詞であるチンギス・カンに好意的になれないという問題が発生してしまう。
 これが原因で《蒼き狼と白き牡鹿》は海外での売上が伸びなかったらしい。

 海外でも順調に売れた《三國志》と《蒼き狼と白き牡鹿》のその後を分けたのがキャラクターイメージであることは少し意外と言えば意外である。
三國志

三國志

荒れに荒れたファミコンソフト『信長の野望 全国版』

信長の野望 全国版

信長の野望 全国版

 開発段階からして逸話が存在している。
『信長の野望 全国版』の容量は非常に大きく、ファミコンのメモリーサイズを超えてしまいました。それで任天堂に協力していただき、通常の2倍の容量のカセットを特注で作っていただきました。任天堂の当時の社長である山内溥さんにはたいへんお世話になりました。
via シブサワ・コウ「0から1を創造する力」
 これである。
 後にゲーム業界は《メモリー拡張パック》《ディスク交換システム》《1のデータを2に引き継げる(コンバータ)》などのシステムを実装していくが、いずれも1990年代、ゲーム機黄金期と呼べる時代のことであろう。

 さらに流通の点でも一悶着あった。
 当時、ゲームソフトを流通させたいと思った場合はソフトメーカーが全国の会社をまわって営業をするのが一般的であったが、資金、時間、営業員にまだ余裕の無かった光栄は逆に各位を1箇所に集めるという方法をとったのである。

 さらに取引内容も手形ではなく半金前払いという現金払いを条件にしたということも当時は型破りな方法であったらしい。


 様々な《型破り》ポイントがあったファミコンソフトとしての『信長の野望 全国版』だが、最終的な売上としては50万本を記録した。
 1981年の『川中島の合戦』が1万本の売上だったのに対し、1988年にはその50倍である数値を叩き出したのであった。

「人類の半分は女性だ!」 これも光栄ならではの発想『アンジェリーク』

80年、81年といったころは、パソコンやプログラミングに興味のある人は圧倒的に男性でした。今では、大学の工学部や理工学部にも女性が進学するようになりましたが、その当時はまだ男子学生が圧倒的に多かった。女性のエンジニアなどはまだまだ少ない時代でした。
via シブサワ・コウ「0から1を創造する力」
 そんなご時世でありながら、シブサワ氏の奥さんは強く主張していた。
「人類の半分は女性だ」と。「女性の好みを踏まえたゲームを作れば、女性もゲームを楽しんでくれるはずだ」と。
via シブサワ・コウ「0から1を創造する力」
 そこで生まれたのが『アンジェリーク』。
 開発には女性を主力としたゲーム開発チームを組み臨んでいる。

 たしかに、漫画というジャンルにおいては昔から少年漫画がある一方で少女漫画がその世界を形成していた。
 インベーダーゲームやアクションゲームが流行しているなか、「大人でもじっくりと遊べるゲームをつくりたい」というのが『川中島の合戦』が生まれた理由だった。
 そう考えると「男性向けゲームがこれだけ存在しているなら女性向けゲームが存在していても良い」と考えるのは、当然と言えば当然のことのように思える。

 だが、時代は少なくともそうは言っていなかった。
 この発想をすることができた人物と、その発想を採用することができた人物、そしてそれらを実際にモノにできる開発チームがなければ『アンジェリーク』は生まれなかったのだろう。
アンジェリーク

アンジェリーク

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