劇団ひとりの恋愛妄想狂時代
2023年3月6日 更新

劇団ひとりの恋愛妄想狂時代

日本生まれアラスカ育ち、黒人やクマとの死闘。愛と涙の恋愛妄想。剣道、ボクシング、柔道など格闘技 経験し、修学旅行では他校のヤンキーにカラまれ、サングラスの下で目を光らせた。

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悶々とHを想いながら過ごしていたある日、とんでもないことが起こった。
なんとHから手紙が届いたのである。
「好きです。
つき合ってください。
返事を聞きたいので放課後に教室で待っています」
好きになって3年以上、手紙を持つ手がプルプルと震え、目頭が熱くなった。
しかし放課後、教室には行けなかった。
「ずっとずっと好きで、あまりに好きになってしまったため、Hが自分を好きということが受け入れられなかった。
まして付き合うなんて想像を絶していた」
そして家に帰ると
「何をしているんだ、俺は」
と枕を濡らした。
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その後も相変わらずHが好きで、自分を責め、後悔し続けた。
そして中2のバレンタインデーに再びHに呼び出された。
「よかったら放課後、体育館の裏に来てもらえる?」
それはずっと求め続けていたシーンだった。
(もう2度と過ちは繰り返さない)
と思いながら、Hを真っ直ぐに見つめ
「わかった。
放課後だね」
と力強く答えた。
放課後までの間、Hのところにいって抱きしめてしまいそうな衝動と抑え、
「あのときはごめん。
もう1度チャンスくれてサンキューね。
俺もずっと君が好きだった」
とシミュレーションを繰り返してニヤけそうになるの堪えた。
そして放課後、体育館へ。
すると優しい笑顔のHがいた。
しかし横にもう1人、女子がいた。
話したことはないが身長が170㎝くらいあるので知っていた。
その女の子が照れくさそうに下を向き、チョコレートらしきものを持っている。
(ウソだろ)
と思ったとき
「この子が君のこと好きなんだって」
とHにいわれ、その隣からチョコを差し出された。
「ありがとう」
それを受け取ると逃げるようにその場を去った。
こうして4年間の恋は終わった。
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マンガ「六三四の剣」を読んで剣道部に入部。
入部初日、初めて握った竹刀を「六三四の剣」の主人公、夏木 六三四のように上段に構え、その必殺技「マシンガン突き」をマネて怒涛の連続突きを放った。
すると中学で突きは反則であると注意された上、構えを基本の中段に矯正され、ガッカリ。
何より気にくわなかったのが、防具は貸してもらえたが、下に着る剣道着は自前のため、体操服の上に防具をつけて、その格好の悪さがイヤで次の日、練習を休んだ。
そして剣道着を買ってもらうと剣道場の鏡の中の自分のウットリ。
しばらくすると先輩たちのMy道具が気になりだした。
面、籠手、胴、垂のメーカーや刺繍、色などが1人1人異なり、こだわりを感じた。
自分もどうしても欲しくなり、
「貸し出しのものは不衛生だから体中に蕁麻疹が出る」
といって買ってもらった。
すべての装備がそろい、見た目は立派な剣士となったが、2ヵ月後に退部した。
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しばらくすると「はじめの一歩」の影響でボクシングジムへ。
印刷工場の2階にある小さなジムは、教室くらいの広さで、半分を小さめのリングが占めていた。
白髪交じりの角刈りに色眼鏡、ダミ声の会長が1人だけいて、初日は、ひたすら縄跳び。
ボクシングの試合は1ラウンド3分とインターバル1分が繰り返される。
ジムでも、3分、1分、3分、1分・・・と試合と同じリズムで延々とゴングが鳴っていて、、それに合わせて3分跳んで、1分休むの繰り返した。
それは会長が
「ヨシッ」
というまで続けなければならない。
途中、
「会長、俺が跳んでるのを忘れてんじゃないか?」
と思い、
「アー」
と声を出したが会長は反応ナシ。
10ラウンドを跳んだ後、やっと
「ヨシッ」
が出た。
最初の1週間はひたすら縄跳び。
2週目から、構えとジャブを教わった。
脇をしめて構え、前にステップして、左拳を目の高さから一直線に打って、倍の速さで元の位置に引き戻して、後ろへステップ。
鏡に向かって、この動きを「ヨシッ」といわれるまで繰り返さなければならないが、すぐに肩が痛くなってきて、会長がこちらを見ているときだけパンチを打つという作戦で乗り切った。
少しずつ他のパンチも教えてもらった後、シャドーボクシング。
シャドーの次はスパーリングになるはずだが、半年経っても、その指示が出ない。
痺れを切らして、そのことを会長に聞くと
「中学生のうちは危ないからスパーリングはやらせない」
「じゃ、まだ1年以上もずっとシャドーだけですか?」
「そうだよ」
この日を最後にジムへ行かなくなった。
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ボクシングをやめた後、柔道部の顧問に
「試合に出てみないか?」
と誘われた。
顧問からしてみれば部員が少なかったため補充のつもりだったが、柔道マンガ「YAWARA!」も好きだったので受けた。
しかし放課後、参加した練習があまりにハードだったので、以後、拒否。
1日だけの練習で試合日を迎え、早朝から時間をかけてリーゼントをつくり上げた。
大きな試合会場は坊主頭ばかりで、1人だけ立派なヘアスタイルをしていたため、自分の出番になると試合場に来人が集まってきた。
それをみて
「ちゃんと練習しておけばよかった」
と後悔。
試合場に入るとき極度の緊張で体が震えた。
強そうな相手で強そうで、
「正々堂々やって負けるのが恥ずかしかった」
のでアゴを突き出して
「来い、コノヤロー」
アントニオ猪木のモノマネ。
失笑さえ起きない空気の中、アントニオ猪木をやり続けてチョップを繰り出し、反則負けした。
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学校が終わると急いで帰り、15時から始まるサスペンスドラマの再放送を観ていた。
そして見応えのある濡れ場をビデオに録るのが日課。
タイマー予約はできるが、録画した後に編集することはできないんでリアルタイムで録画ボタンを押す。
そうやってお宝を録りためていった。
濡れ場はいつくるかわからないので画面から目を離せない。
濡れ場が来てから録画ボタンを押したのでは大事な部分が録れない可能性があるので、常に予測しながらみないといけならない。
濡れ場と思いきや、ベッドの横から犯人が出てきてお目当ての女優さんが殺されるシーンを録ってしまったり、濡れ場は必ずあるとは限らず、ずっとスタンバイしながら空振りに終わることもあった。
1年間、録りためた映像は10分程度。
友人から借りて初めてAVを観たとき、自分のやってきたことがどれだけ無意味だったか痛感し、サスペンスドラマは卒業となった。
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スポーツだけでなく、「ビーバップハイスクール」や「ろくでなしブルース」などの不良マンガにも影響され、短ラン、ボンタンなど変形学生服に憧れた。
しかし制服がブレザーだったので、変形したものは販売されておらず、そこで針と糸を使って自分の制服を縫い始めた。
裾を部分を細くしようとしたがやり方がわからず、家庭科の教科書で必死に調べ、何度も針で指を刺しながら、失敗とやり直しを繰り返し、徐々の上達。
不良っぽくなればなるほど裁縫上手になっていった。
ある朝、学校に行くと顔に絆創膏を張った友人を発見。
話を聞くと昨夜、同じ塾に通う他校の同級生とケンカしたという。
1対1なら問題なかったが、友人1人に対し相手は大勢だったと聞いて怒りがこみ上げ
「敵を討とう」
仲間も合意したが、不良風の5人では太刀打ちできないと判断し、急遽、徴兵することにした。
「部活やってる生徒は全員」
と号令をかけると100人以上集まって、本物の部隊になってしまい、陸上や水泳など戦闘に不向きな部を外し、30名に絞った。
メンバーが決まり、不良マンガなら、イザッ!出陣となるが、部活動をやっているメンバーに支障がないように数日後、部活が休みの土曜日の午後に出陣することにした。
もちろんそれまで計画は口外禁止だったが、モテたくて仕方ない男どもが黙っていられるはずがなく
「こわくないっていったらウソだけど、やっぱりオレにとって大事な友人だからな」
複数のメンバーがあちこちでそんな会話をした結果、両校の教師にバレて敵討ちは中止。
「誰がいったんだよ!」
メンバーの1人が悔しそうにいう中、劇団ひとりを含む大勢が
(俺だ)
と思った。
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根本的に大事なのは
「カッコいいかカッコ悪いか」
ある日の授業中、校庭から大きな音がして、先生を含めて全員が窓際へ。
鉄の校門をなぎ倒し、1台に車が校庭に侵入していた。
誰もが事故だと思ったが、車のドアが開いて、数名の男が飛び出し、学校へ向かってきた。
生徒が騒ぐ中、教師は職員室へ。
しばらくすると騒がしい声が聞こえてきて、いってみると車から降りてきた男たちが1人の生徒を袋叩きにしていた。
男たちは大人や高校生で、標的となった中学生はなす術もなくやられていた。
恐怖心で体が硬直したが、女子の叫び声を聞いた途端
(ここで出ていったらカッコいい)
体は自然に突進。
すぐに腹を蹴られ、床にうずくまり、立とうと思えば立てたが、気絶したフリをした。
助けたりやっつけるのではなく、カッコつけることが目的で
「1人で立ち向かったことでそれは十分に果たされた」
しばらくすると教師がかけつけ、男たちが逃げていくとゆっくりを瞼を開け、不思議そうに周りを見渡し
「そうか、俺、やられちまったんだな」
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中3になると周囲はみんな最後の試合、夏の総合体育大会に向けて汗を輝かせて練習に取り組んでいた。
柔道部以降、運動から遠ざかり、寂しさと嫉妬を感じていたとき、バスケットボール部が人数が足りずに体育大会に出られないという情報をキャッチ。
バスケ経験はまったくなかったが、マンガ「スラムダンク」も好きだったので職員室のバスケットボール部の顧問を訪ねた。
「先生、人数が足りなくて困ってるんでしょ?」
「そうなんだよね」
「俺、入ろうかな」
「えっ本当に?」
「ただ1つお願いがあるんだ」
「なに?」
「キャプテンやりたい」
うれしそうだった顧問の顔が曇る。
「えッ?」
「いやだからキャプテンをやりたいんだ」
「いや、いくらなんでもそれは」
「ではこの話はなかったことに」
4人しかいなかったバスケットボール部は、新キャプテンを迎え、始動。
数ヵ月の準備期間を経て試合に出場。
しかしドリブルさえまともにできない素人キャプテンが率いるチームが勝てるはずもなく、あっさり1回戦負け。
ロッカールームで着替えているとき、みんな泣き始めたので、本当はそこまで悲しくなかったが、
「泣かなきゃ青春に置いてけぼりにされそうな気がして」
無理やり涙を流した。
そして顧問の総括があった。
「鈴木は誰よりも努力していた。
田中は背が小さいのに頑張った。
竹田は、チームのムードメーカーだった。
・・・・」
そして最後に
「えっと川島は・・・・声が出てたかな」
 (2514130)

修学旅行の出発日、父親のT字カミソリで眉毛を細くしようとした。
最初の一剃りで右の眉毛の1/3を失ってしまい、バランスをとるために左眉毛をあわてて剃ったが、少し多く剃りすぎて、再び右眉毛へ。
繰り返した結果、眉毛は半分に。
泣きそうになりながら、だけど休むわけにはいかず、下を向きながら登校。
案の定、平安時代の貴族かとバカにされ、不良マンガの主人公のようになるはずがナメられすぎのお笑いキャラに。
休憩のためにバスがパーキングエリアに入ったとき、下を向きながらトイレへ向かう途中、サングラスが売ってあるのを発見。
眉毛を隠し、不良アピールもできるというスーパーアイテムを即購入。
帰り道、他校の修学旅行バスを通りがかったとき、リーゼント、茶髪を決め、眉毛もキレイに剃ったホンモノの不良たちがいて
「おい、見ろよ。
なんだアイツ。
バカがいるぞ」
「キミ、カッコいいね。
ダハハツ」
「どこで売ってんだよ、それ」
バスから身を乗り出して挑発された。
悔しさと恥ずかしさで顔が真っ赤になったが、立ち向かうことなどせず、かなり無理のある距離だったが聞こえてないフリ。
幸いサングラスは、剃りすぎた眉毛だけでなく潤んだ瞳も隠してくれた。
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