スピルバーグが子役を絶賛!原作を超えた最高傑作「泥の河」
2017年1月25日 更新

スピルバーグが子役を絶賛!原作を超えた最高傑作「泥の河」

1981年公開の「泥の河」は宮本輝原作・同名小説の映画化です。モノクロの映像から漂う戦後の匂いは強烈。そして9歳の信雄が生まれて初めて体験する「生と死、どんな境遇でも生きていくということ」が観ている者の胸にこれでもか!と突き刺さる「泥の河」は80年代邦画の名作です。信雄ときっちゃんの出会いと、短すぎる2人の別れまでの時間を振り返ります。

37,354 view

宿船(廓船)に住むきっちゃんの家族

松本笙子 加賀まりこ

松本笙子 加賀まりこ

via けん
きっちゃん・松本喜一 桜井稔

きっちゃん・松本喜一 桜井稔

via けん
松本銀子 柴田真生子

松本銀子 柴田真生子

via けん
荷車の男 芦屋雁之助

荷車の男 芦屋雁之助

via けん
巡査 蟹江敬三

巡査 蟹江敬三

via けん

ストーリー

泥の河 (1777904)

まだ戦後の焼け跡の匂いを残す河っぷちで、食堂を営む家族がある。
その一人息子である9歳の信雄(朝原)は、ある雨の早朝、橋の上で鉄くずを盗もうとする少年、喜一(桜井)に出会った。
雨に煙る対岸に、その日つながれた、みすぼらしい宿船の少年である。
舟の家には銀子(柴田)という11歳の優しい姉と、板壁の向こうで声だけがする姿の見えない母がいた。
友達になったことを父、晋平(田村)に話すと、夜はあの舟に行ってはいけないという。
窓から見える船の家が信雄を魅惑し不安にする。
子供達の交流が深まり始めたある日、終戦直後に別れた晋平のかつての女房の病変の知らせが届く。
不可解な人生の断面が信雄に成長を促していく。
楽しみにしていた天神祭りの日、お金を落としたことでしょげ返る信雄を慰めようと喜一は、夜、舟の家に誘った。
泥の河に突き刺した竹箒に蟹の巣があり、喜一はその宝物である蟹にランプの油をたらし、火をつけて遊ぶのである。
船べりを逃げる蟹を追った時、信雄は喜一の母の姿を見た。
舟は廓舟と呼ばれていたのである。
翌日、舟の家は岸を離れた。
信雄は曳かれていく喜一の舟を追い続けて、初めて生きることの悲しみを自らの人生に結びつける。

きっちゃんとの出会い

戦争で焼かれた片耳。

戦争で焼かれた片耳。

荷車で配送業をしているうどん屋の常連のオッサンは「今度中古だけどトラックを買うことになったから、あの馬をノブちゃんにあげるよ」と店の外に繋いだ馬を見ながら軽口を叩いていた。荷車にパンパンに鉄くずを乗せたオッサンを見送る信雄。そこへ不幸な事故が起こりオッサンは信雄の目の前で死んでしまう。
via けん
鉄を盗もうとしていたきっちゃんと出会う。

鉄を盗もうとしていたきっちゃんと出会う。

死んだおっさんの荷車の前で出会った少年は、信雄と同じ9歳で河に浮かぶ船に住んでいるという。
via けん
「戦争で死んだほうが良かったのかも」

「戦争で死んだほうが良かったのかも」

「戦争で嫌というほど死を目の当たりにし、自分は生き残って日本に帰ってきた。荷車のオッサンも、みんなも。あんな死にかたするなら戦争で死んでたほうが良かったのか」、と貞子に話す晋平。晋平は戦後の混乱から前妻を捨てて、貞子と一緒になった。貞子は「生きてなけりゃ出会えなかった、お父さんには感謝している」と死を見つめる晋平を元気づけた。

きっちゃん姉弟との交流

ボロボロの身なりのきっちゃん(靴は破れ、指が見えている)

ボロボロの身なりのきっちゃん(靴は破れ、指が見えている)

船に遊びに行くと、きっちゃんのいろいろなことがわかってきた。宿船といわれる船を住居にして暮らしていること、学校に行っていないこと、父親は死んでいないこと。そして優しい銀子という姉がいた。
via けん
宿船の中に初めて入る信雄

宿船の中に初めて入る信雄

顔は出さないが奥から母親の声がした。「黒砂糖をあげて。そして此処へはあまり来ないほうがいいと言いなさい」信雄は黒砂糖を受け取るが、母親に拒否されたように感じ哀しくなるのだった。
via けん
「遊んでもいいけど、夜はあの船に行っちゃあかんで!」

「遊んでもいいけど、夜はあの船に行っちゃあかんで!」

今度きっちゃん姉弟を家に呼んで良いかと聞く信雄。あの宿船が廓船(売春船)と知っている両親は、遊ぶのはいいけど、夜は絶対あの船に近づかないようにと念をおした。ハッキリした意味はわからないが、こうした大人達の言動や目くばせから、信雄はきっちゃん達と自分の「違い」のようなものを感じとっていた。
via けん
ご馳走を食べ、楽しく過ごすきっちゃん達

ご馳走を食べ、楽しく過ごすきっちゃん達

きっちゃん姉弟が遊びにやってきた。貞子は銀子にワンピースをあげたり、晋平は手品を披露するなど子供達は楽しい時間を過ごした。きちんと畳んだワンピースを返す銀子。そして、きっちゃんをせっつくように帰っていった。まるで、「楽しいこと、幸せなことに慣れちゃいけない」と思っているかのように足早に。
via けん
「私、陸風呂(おかぶろ)に入るのこれで2回目♪」

「私、陸風呂(おかぶろ)に入るのこれで2回目♪」

度々、遊びに来るようになった、きっちゃんと銀子。2人の夢は「陸で普通の暮らしがしたい」ただそれだけだった。
via けん

きっちゃんのお母さん

73 件

思い出を語ろう

     
  • 記事コメント
  • Facebookでコメント
  • 苺大福 2021/10/16 21:27

    この映画を初めて見たのは高校生位でしたが、また見たくなりました。
    初めて見た頃は何の苦労も知らなかった女子高生、そしてこの記事を読む今までの間に子供を持ち、様々な苦労を思い出すと、この映画の意味がしみじみ解り、泣けてきます。
    後世に残したい名作ですね。

    すべてのコメントを見る (1)

    コメントを書く
    ※投稿の受け付けから公開までお時間を頂く場合があります。

あなたにおすすめ

関連する記事こんな記事も人気です♪

地方博覧会ブームの火付け役となった「ポートピア‘81」

地方博覧会ブームの火付け役となった「ポートピア‘81」

神戸港の人口島ポートアイランドが会場となった神戸ポートアイランド博覧会。愛称は「ポートピア‘81」。
【間柴茂有】戦後初の勝率10割!日本ハム19年ぶりの優勝に貢献した投手!

【間柴茂有】戦後初の勝率10割!日本ハム19年ぶりの優勝に貢献した投手!

投手のシーズン勝率10割といえば、記憶に新しいところでは、2013年の楽天・田中将大投手の24連勝を思い浮かべる人が多いかもしれません。実は、戦後に限ると、過去にもう一人いました。それが、1981年の日本ハム・間柴茂有投手。今回は、間柴投手の勝率10割と日本シリーズの成績を振り返ります。
izaiza347 | 257 view
【1981年】「祐子と弥生」って覚えてる!? 日本レコード大賞新人賞の受賞曲は!?受賞者は今!?

【1981年】「祐子と弥生」って覚えてる!? 日本レコード大賞新人賞の受賞曲は!?受賞者は今!?

昔は大晦日の夜といえば、テレビの前で一家団欒。『日本レコード大賞』と『紅白歌合戦』をはしごして視聴した方が多かったことでしょう。中でもドキドキするのが、日本レコード大賞の「大賞」と「最優秀新人賞」の発表の瞬間。今回は、日本レコード大賞の「新人賞」にフォーカスし、受賞曲と受賞者の今についてご紹介します。
izaiza347 | 366 view
夏休みの思い出!花王 愛の劇場【わが子よ】を振り返ってみよう!

夏休みの思い出!花王 愛の劇場【わが子よ】を振り返ってみよう!

1981年~1986年にかけて「花王 愛の劇場」(13:00~13:30 TBS系)で放送されていた「わが子よ」シリーズ。毎年7月~8月の夏休み期間中に放送されていたこともあり、夏休みの風物詩的ドラマとして見ていた方も多かったのではないでしょうか。なつかしくなり「わが子よ」全6シリーズについて振り返ってみました。
ハナハナ | 4,192 view
芦屋雁之助主演!画家の山下清をモデルに描いた人情ドラマ 「裸の大将放浪記」が放送開始!!

芦屋雁之助主演!画家の山下清をモデルに描いた人情ドラマ 「裸の大将放浪記」が放送開始!!

全国無料放送のBS12 トゥエルビにて、芦屋雁之助主演作「裸の大将放浪記」の放送が6月2日(金)よりスタートします。
隣人速報 | 738 view

この記事のキーワード

カテゴリ一覧・年代別に探す

あの頃ナウ あなたの「あの頃」を簡単検索!!「生まれた年」「検索したい年齢」を選択するだけ!
リクエスト