猿岩石のヒッチハイク旅     インドからパキスタン、そしてイランへ。
2023年11月7日 更新

猿岩石のヒッチハイク旅 インドからパキスタン、そしてイランへ。

アジアは、香港、中国、ベトナム、ラオス、タイ、ミャンマー、インド、ネパール、パキスタン、イラン、トルコ。ヨーロッパは、ブルガリア、ルーマニア、ハンガリー、オーストリア、ドイツ、フランス、そしてゴールの大英帝国、イギリスまで。野宿、絶食が当たり前の「香港-ロンドン ユーラシア大陸横断ヒッチハイク」旅。

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そんなこと何も知らない有吉は、歩いて国境を越えながら
「ハロー・パキスタン。
アイ・ラブ・パキスタン。
と新しい国にあいさつ。
森脇は、
「で、どこ目指すんだよ」
と地図を取り出した。
そして2人は、次の目的地を国境から30㎞のラホールに設定。
「ええっと、ノット、ペイ、OK?」
乗せてくれる車がないか、国境にいる車を1台1台当たっていった。
断られ続けて1時間後、
「ラホールシティ。
ノット・ペイ、OK?」
と聞くと
『OK、My Friend』
と肩を叩いていってくれる、文字通り超フレンドリーな運転手と出会い、ヒッチハイクに成功。
しかもそれはトラックの荷台を座席に改造したキレイな小さなバスのような車。
こんな車に本当にタダで乗車OKなのか?
あまりの気前の良さに
「なんか怪しいな」
(森脇)
「本当にタダなのか?)
(有吉)
と怪しみながらも乗車。
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約1時間後、車はラホールの街に到着。
ラホール(Lahore)の語源は、「鉄(Loha)」
古代には鉄壁の防御を誇り、中世にはアフガニスタンのカズニ朝の都、16世紀にはムガル朝の都として繁栄。
そのときに建てられた壮大な建築物が現在も残る、カラチに次ぐパキスタン第2の都市である。
11世紀頃に建造されたラホール城塞は、東西425m、南北340m、周囲を城壁に取り囲まれた壮大なスケールを誇る世界遺産。
インドでタジマハールを建てたムガール帝国最後の皇帝シャー・ジャハーンが17世紀半ばに王族の保養地として造ったシャリマール庭園も、水を効果的に配置して暑い夏も涼しい工夫をしたムガール様式の庭園として世界遺産に指定されている。
その他、たくさんのモスクや皇帝の墓がある街で車は停まり、
『着きましたよ』
後ろに回ってきた運転手にいわれ、荷物を持って降車。
そのまま促されて案内されたのは、なんとホテルのフロント。
車はホテルの無料送迎車だった。
しかし無一文の2人は泊ることができない。
「ノーマネーね。
だからノーホテルね」
有吉は無一文だから泊まれないと説明。
『ノーマネー?』
それを聞いた運転手は、
『ノー・プロブレム』
といってもう1度、2人に車に乗るよう指示。
有吉は
「わかんない、意味が」
といいながら乗り込んだ。
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そして1時間後、どこかに到着。
運転手は
『私の家です。
どうぞ入ってください』
といった。
そして2人が家に入ると
『私の母です』
『私の妻です』
と家族を紹介していった。
運転手の名前は、ハッサン。
弟家族も同居する大きな家だった。
猿岩石は、シャワーを借りて、久しぶりにサッパリ。
夜は一家と一緒に夕食をごちそうになった。
「うまいね」
『ハッサンカレー、ナンバーワン』
そして来客用の部屋のベッドで中で快適な寝心地を味わいながら寝た。
「ずっと不信感を持っていたのが恥ずかしく思った」
(有吉)
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翌朝、朝食をごちそうになった後、
「サンキュー」
とお礼をいって立ち去ろうとしたが、またもハッサンに呼び止められ、手を引っ張られて車のところまで連れていかれ
『乗れ』
といわれた。
この日は金曜日で、イスラム教では休日。
ハッサンの家族も続々と乗り込んできて、どうやらどこかへお出かけするらしい。
一家と一緒に30分移動し、やって来たのはモスク。
毎週お参りに来ているという一家に習い、壁から出ている水道で口や手足を清めた。
そして参拝を済ませると、近くの公園に移動し、木陰でピクニック。
昼食をとり、幼い子供たちたちと遊んでのどかな時間を過ごした。
その後、結局、ハッサン家に戻って、もう1泊させてもらい、翌朝、ハッサンにトラックがたくさん通る道路まで送ってもらった。
『OK、バイバイ』
「サンキュー、ハッサン」
「どうもありがとうございました」
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ハッサンと別れた後、猿岩石はヒッチハイク開始。
1時間後、大きくてド派手なトラックが停車。
事情を告げると運転手は
『お金の心配はしなくていいよ。
パキスタン人と日本人は友達さ』
といってくれてヒッチハイク成功。
トラックは200㎞先のハラッパという街まで行くという。
しかし荷台にいる2人は、40度を超える暑さに1時間もするとヘタってしまった。
それを同じく荷台に乗っていた男性に告げると
『行水をしよう』
といった。
やがてトラックが停まって、歩いていく男性についていくと、そこは泥色の水が流れる川。
「汚っねえー。
コレは入れねーよ」」
「泥だ、泥。
なんかに噛まれそうだよ」
ためらっていると男性は平気で入っていき
『GOOD!』
「GOODォ~?」
2人も恐る恐る入ってみると意外と冷たくて気持ちがよかった。
「イエーイ」
「ワァー気持ちイイ」
泥川ではしゃいですっかりリフレッシュした2人を乗せ、トラックは再びハラッパへ向かった。
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そしてラホールを出発して8時間後、19時、トラックは200km離れたハラッパに到着。
2人は
「名前通り、何もない街だな」
と思ったが、運転手に「ハラッパ遺跡」に案内された。
メソポタミア、エジプト、黄河文明に並び、世界4大文明の1つとして知られるインダス文明は、紀元前2600~1600年頃に栄えた。
そのインダス文明最大の都市が、「モヘンジョダロ(Moenjodaro)」
1921年に発掘が開始されて以来、長い間、仏教遺跡と信じられていたが、調査が進むにつれて単なる僧院ではなく巨大な古代都市であることが明らかとなった。
大量のレンガを積み上げてできた城塞や市街地は広さ4km四方に及び、沐浴場や穀物倉、上下水道が整えられ、高度な都市計画のもとに造られた都市であったことがうかがえるものの、そのほとんどが未だ謎に包まれたまま。
ハラッパ (Harappa) も、モヘンジョダロと並び称される遺跡で、東の「城塞区」と西の「市街地」からなり、城塞の北側には2列にならんだ「穀物倉」と「円形作業台」18基などが造られ、最盛期には2万人の人々が暮らしていたといわれている。
両者とも「未知の文明の都市遺跡」として 現在も遺跡の発掘作業は続いている。
そんな歴史的価値のある遺跡も2人にとってはただの空き地で
「これは何?」
「なんなのコレ?」
とその価値が理解できず
「ゴーゴー、バック」
「これだけのためにこんだけ歩いたのか」
とブーブーいいながらサッサと引き上げた後、トラックに別れを告げ、近くの原っぱで野宿した。
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翌91日目、ハラッパでヒッチハイクを始めるも、ただでさえ何もない上、どうやら町外れらしく、車がまったく通らない。
2時間後、ようやくGETしたのは馬車ならぬロバ車。
「歩くよりは速いよ」
と喜んでいると、途中、道を歩いていた外国人ヒッチハイカーが乗り込んできて
「ついにライバル登場だ」
と笑った。
30分後、ロ馬車から降ろされると、外国人ヒッチハイカーの案内で街の中心部へ。
早速、ヒッチハイクを始めようとする2人を外国人ヒッチハイカーは
『一緒に駅に行きましょう。
僕は列車でムルターンに行きます』
と誘った。
「あのね、ノー・マネーだからノー・トレイン。
オンリー・ヒッチハイク」
と説明しても
『トレイン、ノー・プロブレム。
トレイン、ノー・マネー』
と鉄道でヒッチハイクができるというのである。
「トレイン・ノーマネー?」
『ノー・マネー、ノー・プロブレム』
「ノー・マネー、ノー・プロブレムなの?」
2人が半信半疑で駅までついていってみると、確かに改札口がない。
1時間後、列車が到着。
無賃乗車し、初の列車のヒッチハイクに成功。
「スゲー」
と喜んだが、車内は大混雑。
森脇は途中から何とかしゃがむことができたが、有吉は、身動きできないまま、立ちっぱなし。
3時間後、列車がハラッパから150㎞離れたムルターンという駅に到着すると
『ここで降りる』
という外国人ヒッチハイカーと一緒に降車。
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外国人ヒッチハイカーと別れた後、猿岩石は駅の待合室を今夜の野宿ポイントに決定し、ベンチに荷物を降ろした。
「もう電車やんないぞ。
もうイヤだ。
電車イヤだ」
3時間立ちっぱなしだった有吉は、そういって寝ころんだが、翌日、緊急事態発生。
ひどい頭痛と腰の痛みを訴え、救急車が呼ばれ、病院に搬送されたのである。
診断は、「栄養失調」と「過労」
「栄養失調と、むちゃくちゃ汚い菌がたくさん出てきたっていうことで・・・
言葉がわかんないんで、それも確かかどうかわかんないんですけど、とりあえず何でも『あ、イエス』『あ、イエス』って・・・
それで注射を6本ぐらい、いっぺんに打たれて」
という有吉は、ベッドで点滴を受けながら、入院し、翌日には無事、退院となった。
「お前、大丈夫か?」
(森脇)
「もう大丈夫だね」
(有吉)
治療費は、日本でかけた海外旅行傷害保険で支払われることになり、セーフ。
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2人は、次の目的地、100km西のテラガジカンに向けてヒッチハイク開始。
1時間後、
「ノット・ペイ、OK?」
『OK』
とトラックをGET。
運転手は、デラガジカンより300㎞も先のローラライまで乗せていってくれるといい、その上、4人乗りだったので荷台ではなく車内の後部座席に座らせてくれた。
快適なドライブが2時間続いた後、トラックは険しい山道の突入。
道幅は狭く、少し間違えば谷底に転落してしまうような危険な道を身を硬くしながら延々、2時間。
ようやく峠を抜け、ホッとしたのも束の間、雨が降り出し、それは激しさを増して暴風雨となり、トラックは、土砂降りの雨と横転するかと思うような強い横風で中々、前に進めない。
2時間後、天候は回復したものの、川が氾濫し、あふれた水が川となって道を塞いでいたため、トラックは立ち往生。
激流がおさまるのを待って2時間後、トラックは少し水量が減った川に突っ込み、慎重にゆっくりと前進。
なんとか無事横断したとき、思わず車内、みんなで拍手し合った。
その後は快調に走り続け、ムルターンからローラライまで400㎞を16時間かかって到着。
「サンキュー」
トラックと別れたとき、時間は23時。
「いい人たちだったなあ」
といいながら野宿ポイント探し。
「ここ、OK?
スリープ」
『OK』
「サンキュー」
店員の許可を得て、ドライブインの店先で野宿した。
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翌93日目、7月14日、次の目的地を150km西のクエッタに定め、
「QUETTA」
と書いた紙を掲げてヒッチハイク開始。
2時間後、ようやく4人乗りのトラックが停車。
「ようし、聞いてみよう」
素早く2人の男性が乗る運転席にかけよった。
「クエッタ」
「ノー・マネー」
『OK』
「サンキュー」
喜んで後部座席に乗り込んだ。
走り出して1時間後、運転手は自分の家に寄った。
建物をみるとかなりお金持ちそうで、森脇は日本語で
「これは期待できる」
お茶を煎れてもらい、高級そうなお菓子を出してもらい、大当たり。
運転席と助手席に座っていた2人の男性は兄弟で、休日に街に買い物に出たところ、猿岩石に出会ったという。
親切な兄弟は、引き続きクエッタまで送ってくれるという。
再び4人で車に乗り込み、3時間のドライブの末、到着。
猿岩石は、お礼をいって降車。
すると兄弟は
『戻ってくるから待ってて』
と言い残し、車でいってしまった。
いわれた通り道端に座って待っていると、車は10分ほどで戻ってきた。
笑顔で車から降りてきた兄弟は、空手着を着ている2人になにやらプレゼントを渡した。
箱を開けてみると中身は服。
「サンキュー」
「なんていい人なんだ」
2人は去っていく車に日本式に深々とお辞儀。
そしてさっそくもらった服を身に着けてみると、それはパキスタンの代表的ファッション、イスラム教徒用のモスリム服だった。
猿岩石は、真っさらで真っ白のモスリム服でバリっと決め、気持ちを新たにファイトをみなぎらせた。
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