猿岩石 ユーラシア大陸横断ヒッチハイク旅。29日目、タイ入国、ちょっとズルしたミャンマー、情熱の国インド、そしてネパールへ
2023年2月25日 更新

猿岩石 ユーラシア大陸横断ヒッチハイク旅。29日目、タイ入国、ちょっとズルしたミャンマー、情熱の国インド、そしてネパールへ

アジアは、香港、中国、ベトナム、ラオス、タイ、ミャンマー、インド、ネパール、パキスタン、イラン、トルコ。ヨーロッパは、ブルガリア、ルーマニア、ハンガリー、オーストリア、ドイツ、フランス、イギリス。野宿、絶食当たり前、あるときは山を登り、あるときは川を渡り、あるときは砂漠をこえる「香港-ロンドン ユーラシア大陸横断ヒッチハイク」旅。

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猿岩石は、1995年2月、事務所(太田プロ)に入って、1年後には
「半年間スケジュールが白紙であること」
という募集条件で内容は明かされないまま、「進め!電波少年」のオーディションを受けた。
そして広島からバスで上京した後、東京ドームで野宿をした経験があったことが決め手になって合格。
まだ外国に行ったことがない2人は、アイマスクと大音量のヘッドホンをつけられ
「だまされて」
香港島に連れていかれた。
まだTVに2回しか出たことがない2人は、すぐに特設スタジオに放り込まれ、
「ユーラシア大陸横断ヒッチハイク」
という企画名と
「これから香港からロンドンまでヒッチハイクで行ってもらいます」
「現在いる場所から西へ西へと直線距離にして、だいたい 2、3万km(実際は3万5000km)」
「期限は無期限なんですが、3ヵ月くらいかなぁということで・・(実際は6ヵ月かかった)」
と超アバウトな説明を聞かされた。
ルールは

・予算は10万円(番組から支給、それ以外のお金は持っていけない)
・移動は徒歩かヒッチハイクのみ(お金を払って乗り物を利用するのは禁止)
・旅の道中、猿岩石の2人に1人のスタッフが同行し撮影するので3名で移動するが、スタッフは一切、手助けはしない。

さっそくヒッチハイクの旅はスタートし、スタジオを出てショッピングモールであるタイムズスクエア前の道の端に立って
「To LONDON」
と書いた紙を掲げ、そのまんま東に
「こんなモンで(車が)捕まるか」
と強めにツッコまれた。
そして白いワンボックスカーをGET。
運転手のポールは工事現場から自宅に帰る途中だというが、車に押し込まれるように乗る2人はヒッチハイカーというより拉致される日本人観光客だった。
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香港をスタートしてから29日目、5月11日、ラオスから親切な船頭さんにタダで船に乗せてもらってメコン川を渡って、5ヵ国目、タイに入国。
正式名称は「タイ王国」で、国王を元首とする立憲君主制の国。
面積は日本の1.4倍(51万4000km²)
東南アジアの中間に位置し、いつも暑い、
1年中、日本の夏のような気候で、年間平均気温は29度、夏は35度、冬でも17度。
国民のおよそ95%が仏教徒で、男性は人生で1度は短期出家する習慣があり、有名寺院も多い。
子供の頃から相手に対して怒らないように教えられ、笑顔を絶やさない優しい人、細かいことを気にせず、穏やかでのんびりで大らかで楽観思考な人が多い。
だからタイは「微笑みの国」と呼ばれている。
 (2509459)

タイ人がよく使う言葉に
「マイペンライ」
がある。
これは「何でもない」」「大丈夫」、「気にしないで」「なんとかなるよ」「どういたしまして」といった意味で、さまざまな状況で笑顔とセットで使われる。
失敗した人に「マイペンライ」
落ち込んでいる人に「マイペンライ」
相手に感謝されたとき、「マイペンライ」
自分の気持ちを落ち着かせるために「マイペンライ」
足を踏んでしまったとき、「マイペンライ」
車をぶつけて「マイペンライ」
超マジメで物事を深刻に考える傾向がある日本人にとって「マイペンライ」は、非常によいイメージを与えてくれる。
 (2509463)


「ありがとうございます。
サンキュー」
日本人らしくお礼をいって船頭と別れた猿岩石は、すぐにヒッチハイク開始。
すると30分後、男性が近づいてきた。
『2人、3人?』
「3人」
『OK』
ついていくと2人の男が乗るワゴン車が停まっていた。
ドライバーに
「ノー・マネー、OK」
と確認すると
『OK』
「なんで!なんで!」
といいながら、2人は大喜びで紹介してくれた男性に握手し、車に乗り込んだ。
車の中はエアコンがきいていて、その上、助手席の男から冷たい飲み物までもらった。
「いい人もいるもんだ」
(森脇)
「やっぱり人は信じなくちゃいけない」
(有吉)
船のタダ乗りから超快適な車と幸せ続き2人だったが、1時間後、ナコンプーチャシーマーの街に入ると停車すると優しかった助手席の男が振り返って
『マネー、マネー』
「えっ、マネー?」
『ノー・ビデオ』
男はカメラに手を伸ばし撮影を妨害し
『持ってる金を全部出してみろ』
といい、2人は、所持金すべてをとられて車を降ろされた。
「怖ぇー」
「アー、どうすんだよ」
「バカみたいだな、また」
また無一文になって傷心の2人は、駅の待合室のベンチで寝た。
 (2475491)

「ヒッチハイクをやってて乗せてくれる人ってのは、女の人が乗せてくれたってことほとんどないじゃん。
大体乗せてくれたのは男の人。
ヒッチハイクで乗せてくれる人ってのはね、たぶん、自分にすっごい自信があんのよ。
『こいつら2人がかりでかかってきても俺ならやっつけれるよ』っていうような人ばっかりだったじゃない。
だからね、けっこう常に怖かったよね」
(有吉)
「そう」
(森脇)
「あと英語しゃべれないってのはキツかったね。
英語をしゃべれない地域ってのは苦労しました、いろいろな面で。
だってどこで降ろされるか分かんないじゃない気分次第で」
(有吉)
「そう。
だからちょっと車のスピードが落ちたりすると」
(森脇)
「ドキッ!」
(有吉)
「っとするよね」
(森脇)
「それがたいてい山の中だったりするでしょ。
そうすっともうすっごい怖かった」
(有吉)
「だからね、運転手さんの様子ってのがホント気になんのよ。
だからけっこう気まずいムードが漂ったりしなかった?、車内は?
なんかこう」
(森脇)
「だってさ、俺ら会話ってさ、最初の『サンキュー』と『どこどこへ行くんだ』『日本から』『ジャパン』」
(有吉)
「ウィーアージャパニーズ」
(森脇)
「サンキュー」
(有吉)
「それをいい切ったら俺達何も話すことないから」
(森脇)
「シーン」
(有吉)
「と沈黙は続くんだよね。
向こうの人ってね、怖い人とね、悪くない人と悪くない人の差がね、わかるのよ」
(森脇)
「簡単!見た目!」
(有吉)
「怖そうな人は」
(森脇)
「怖い」
(有吉)
「良さそうな人は」
(森脇)
「いい」
(有吉)
「なんかそういうところを見抜く力が自然と。
でもあのタイで出会った白タク。
あれはわかんなかったでしょ」
(森脇)
「わかんなかったな~
初めてだったし。
今まで、だってけっこう順調にいってて」
(有吉)
「だって冷房が効いててさ、コーラとかも出してくれてさ。
すごい優しいなーと思ってたらいきなりだもん
ね、着いて」
(森脇)
「マニーマニー」
(有吉)
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翌日、34日目、5月16日、2人は気を取り直して、駅の前の芝生に地図を広げて、次なる目的地を検討。
「バンコク狙うか」
ミャンマー入国にはビザが必要なので、それを申請するために首都、バンコクを目指すことにした。
猛暑の中、無一文で飲み物も買えない状態で
「BANGKOK」
と書いた紙を掲げてヒッチハイクしていると、1時間後、車が停車。
しかしかけよっていくと発車。
思わせぶりなStop&Goに有吉は
「なんだよ、もう」
次の瞬間、サイレンが鳴って、パトカーが至近距離で停車。
降車してきた数人の警官に取り囲まれた。
警官は、カメラも手で抑え
『動くな』
『後ろを向け』
『手をつけ』
『お前ら、日本人だろう』
といって猿岩石を拘束。
「なんで?」
と驚いたが、市民の通報で電化製品を押し売りする日本人グループに間違えられていた。
そんなことは知らず「何いってるか全然わかんない」まま、「だからイエスイエスっていってた」2人は連行され、檻のついた留置所に入れられた。
「犯罪者になった」
(森脇)
「なんでブタ箱は入ってんだよ。
腹減った。
もうダメだ」
(有吉)
と嘆いていると隣の留置所の人が鉄格子の隙間からペットボトルを渡してくれた。
「OK?
サンキュー」
20時間ぶりのノドの渇きを癒すと、さらにサンドウィッチまで差し入れしてもらい
「悪い人じゃねえよ」
「いい人だよな」
と囚われの身でありながら善人と判断。
不安の中、留置所で一泊したが、翌日、パスポートで身元が確認されると晴れて釈放された。
「ただメシ食わせてもらっただけじゃん、俺たち」
(森脇)
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2人は、気持ちを新たにしてヒッチハイク開始。
2時間後、車が停まってくれた。
『バンコクに行きたいの?』
「バンコク!」
『OK、OK』
車はトラックの形をしているが4人乗りで後部座席に乗せてもらった。
助手席の男性は、日本に興味があって日本語学校に通っているといい
『バンコク行きます』
と日本語を披露。
3時間後、タイの首都、バンコクに到着。
日本びいきの男性は、2人を高層ビルが立ち並び、高架鉄道、地下鉄などの公共交通機関も発達した大都市の中にある日本そば屋に連れていった。
そしてタイ人の店長に2人を
『この子たち日本人なんだけどお金がないんだって。
働かせてあげてよ』
と紹介。
店長は
『かわいそうだね。
雇ってあげるよ。
でも汚いから、まずお風呂に入ってもらおう』
といった。
アルバイトの世話をしてもらった2人は、14日ぶりに風呂に入り
「生き返った!」
その後、早速、アルバイト開始。
仕事は皿洗い。
ホールから運ばれてくる食器をひたすら洗う。
22時に閉店し、掃除をした後は、うれしい食事つき。
さらに住込み用の部屋まで用意してもらった。
 (2475501)

アルバイト2日目は、9時半から開店準備から働き、店が開いた後はひたすら皿洗い。
3日目になると皿洗い以外にも簡単な調理補助の仕事も任され始めた。
そして7日経つといろいろな仕事をできるようになっていた。
厨房の男性従業員やホールの女子従業員とスッカリ打ち解け、太田プロの先輩、ダチョウ倶楽部ではないが和気あいあい!
「みんないい人だ」
「ずっとここにいてもいいと思う。
本当、ここで一生終えてもいい」
と思うほど幸せだった。
しかしはるか彼方のロンドンに行くためには、このままずっとタイにいるわけにはいかない。
「明日の夜、いうか」
「本当にいい人たちばっかりだからなあ」
7日目の夜、2人はアルバイトをやめることを決めた。
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8日目もいつものように仕事をこなしたが、みんなに別れを告げなければいけないと思うと2人の気持ちは重かった。
そして22時、閉店後、店長に話を切り出した。
「ソーリー。
トゥディ、ラストワーク」
『辞めて、どこ行くの?』
「トゥー・ミャンマー」
それを聞いて従業員たちも口を開いた。
『店長、どうしたの?
2人はどこに行くの?』
『ミャンマーに行くんだって』
『さみしいね、心配ね』
「ありがとう」
『心配、あなたね』
日本語でそういいながら涙を流す女性従業員もいた。
涙を流す女性従業員もいた。
最後に店長はいった。
『みんな、明日の朝、見送ってあげて』
9日目、リュックを背負って開店前の店を訪問。
「ありがとうございました」
店長は
『サラリー』
といって給料袋を渡した。
さらに厨房の男性従業員たち、ホールの女性従業員たちから、それぞれ餞別もあった。
猿岩石で店先まで出てきてくれたみんなと
「バイバイ」
といってお別れ。
それはつらく悲しい経験だった。
「チャイさん、ダムさん、モアさん、ジャーさん、トゥーさん、テンさん、店長さん、一生忘れそうにない」
(有吉)
「この旅が始まって初めて感じた。
時よ、止まれ」
(森脇)
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店を離れるともらった給料を確認。
袋の中には2人合わせて3800バーツ(15000円)が入っていた。
「従業員の女の子達が泣いてくれて、僕たちも涙止まらなかったですよ」
(有吉) 
「涙流してなかっただろお前。
すぐお金みてた」
(森脇)
2人は給料を持ってビザ取得へ向かった。
ミャンマーのビザは、2人で1000バーツ(4000円)で、即日発行してもらった。
ヒッチハイク開始。
2時間後、赤い乗用車が停まってくれた。
「オッ」
森脇はかけよって
「ノー・マネー、OKですか?」
運転手は親指を立ててくれた。
こうして国境近くの実家に里帰りする途中という夫婦と一緒にバンコクを離れた。
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