てっきり動物パニック物と思わせて、まるで西部劇の様な男同士の対決と復讐の空しさを描いた本作。人間側がオルカに殺されて終わるという、予想に反してかなりハードで地味な内容の本作だが、このコミカライズ版では作者の石川球太先生によるコメディ描写が挿入されるなど、子供向けにかなり表現をマイルドにしている点が特徴だと言える。
当時劇場に見に行けなかったミドルエッジ世代の子供たちにとって、動物漫画の巨匠である石川球太先生の見事な画力とアレンジによる『オルカ』を読むことが出来た体験は、当時映画館で本編を見た大人たちよりも、遙かに幸せだったと言えるのかも知れない。
最後に
しかも、どう考えても人間側の方が勝手な理由でオルカに危害を加えており、その復讐のために単身憎むべき仇の男を追い続けるという、正に動物版『マッドマックス』といった内容には、当時の観客もかなり困惑して劇場を後にしたのだった。実際、当時小学6年生だった自分も映画館に連れて行ってもらえなかったので、仕方なくノベライズ版の小説本を買って読んだ記憶がある。ちなみにノベライズ版の表紙も、映画のポスターと同様のデザインだった。それほどこのオルカがジャンプしているポスターデザインは、当時の小学生にとって魅力的だったのだ。それだけに、後年やっと本編を鑑賞した時のやり切れない気持ちといったら・・・。
もちろん、当時の様な「動物パニック物」という固定観念を外して鑑賞すれば、逆にオルカの夫婦愛が心に響く名作映画となるのだが、残念ながら当時の観客には、そうした心の余裕は持てなかったのではないだろうか。
今やCGでどんな動物でもスクリーンに再現出来るようになった時代だからこそ、オルカが持つ深い夫婦愛が泣かせる本作を是非リメイクして欲しいものだ。