アカデミー賞受賞を逃してしまった優秀傑作映画、あれこれ!!⑤
2017年7月24日 更新

アカデミー賞受賞を逃してしまった優秀傑作映画、あれこれ!!⑤

アカデミー賞受賞を逃してしまった優秀傑作映画、あれこれ!!④では1978年頃までのアカデミー賞を受賞できなかった「名作・傑作」映画をご紹介したが、その続きを書こうと思う。さて、どんな作品があるのでしょうか!?

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"転生もの"の映画・ドラマの元祖,『天国から来たチャンピオン』

『天国から来たチャンピオン』の一場面

『天国から来たチャンピオン』の一場面

『天国から来たチャンピオン』(てんごくからきたチャンピオン、Heaven Can Wait)は、1978年のアメリカ合衆国のファンタジー映画。『幽霊紐育を歩く』(1941年制作、1946年日本公開)のリメイク作品である。原作はハリー・シーガル(英語版)の舞台劇『Heaven Can Wait』。監督はウォーレン・ビーティーとバック・ヘンリー、製作・主演はウォーレン・ビーティー。1979年の第51回アカデミー賞で9部門にノミネートされ、美術監督・装置賞を受賞しているが、おしくも作品賞は逃してしまった。
当初は、ボクシングを舞台にモハメド・アリ主演での制作を予定していたが、アリ側に断られたため舞台をアメリカンフットボールに変更し、ベイティが主演も兼ねて制作した。

生と死をユーモラスに描く!!

天才ウォーレン・ビーティーが制作、監督、脚色、主演の4役を兼ねるコメディタッチのハートフルラブストーリー。ストーリーは天使だか死に神だかの神の使いが、寿命の残っている主人公を誤って殺してしまい、主人公が他人の体に乗り移って生き返るまで話である。

アメフトチーム屈指のクウォーターバック(ボクシングのチャンピオンではない)でスーパーボウルに出ることを夢見る主人公が、一目惚れした女性を助けるため、妻とその愛人に殺されたはずの大富豪に乗り移つるのに始まり、その体で恋愛とアメフトをはじめながら再び殺されてしまい、最後はラフプレイで死ぬチームメイトに乗り移り、それまでの記憶を全て失ってしまうという、切ないラブストーリーだ。

でもラストシーンでは恋人が、全く面識のない主人公の乗り移ったチームメイトの瞳の中に彼の面影を見つけだし、2人で歩いて去っていきます。ハッピーエンドではないけれど、決してバッドエンドではなく、未来への希望に溢れており、命の意味を考えさせられました。

自転車に乗った主人公がトンネル内で事故に巻き込まれることや、夢が叶う寸前の悲劇だったりと、ありふれた設定だが、1978年公開と言うことを考えるとこの映画が元祖に近いんじゃないでしょうか。

人間が考える生死感は宗教を超えて人類共通だったんですね!!

私ら東洋人には、輪廻転生という考えがあるが、キリスト教を信奉する西洋人にも同じような考えがあったのだと認識した映画であった。私はリアルタイムでは見てませんが、ちょうどアメリカの大学に通っていた頃に、友達に教えられて見て感動した記憶があります。
ちなみに、1979年のアカデミー賞作品賞には、『ディアー・ハンター』(主演:ロバート・デ・ニーロ、監督:マイケル・チミノ)が選出されている。

ジャングルを舞台に繰り広げられる戦争の”狂気”、『地獄の黙示録』

『地獄の黙示録』の一場面

『地獄の黙示録』の一場面

『地獄の黙示録』(じごくのもくしろく、原題:Apocalypse Now )は、1979年公開のアメリカ映画。フランシス・フォード・コッポラによる戦争映画。日本では1980年(昭和55年)2月23日に公開された。
ジョゼフ・コンラッドの小説『闇の奥』を原作に、物語の舞台をベトナム戦争に移して翻案した叙事詩的映画(エピックフィルム)。
1979年度のカンヌ国際映画祭で最高賞であるパルム・ドールを獲得。1980年の第52回アカデミー賞では作品賞を含む8部門でノミネートされ、そのうち撮影賞と音響賞を受賞したが、作品賞は逃した。ちなみに、この年の作品賞には『クレイマーvsクレイマー』(出演:ダスティン・ホフマン、メリル・ストリープ、監督:ロバート・ベントン)が受賞した。だがしかし、ゴールデングローブ賞の監督賞と助演男優賞、全米映画批評家協会賞の助演男優賞、英国アカデミー賞の監督賞と助演男優賞などを受賞している。

真の戦争の恐ろしさは参加者全員を狂気にすること!!

狂うような暑さのサイゴンの夏。ブラインドの降りたホテルの一室で、ウィラード大尉(マーティン・シーン)は空ろな視線を天井に向けていた。505大隊、173空挺隊所属、特殊行動班員である彼に、それからまもなく、ナ・トランの情報指令本部への出頭命令が下った。

本部では3人の男が彼を待ちうけており、そのうちの1人がウィラードに、今回の出頭目的を説明した。それは第5特殊部隊の作戦将校であるウォルター・E・カーツ(マーロン・ブランド)を殺せという命令だった。カーツはウェストポイント士官学校を主席で卒業し、空挺隊員として朝鮮戦争に参加、数々の叙勲歴を持つ軍部最高の人物であったが現地人部隊を組織するという目的でナン川上流の奥地に潜入してからは、彼の行動が軍では統制できない異常な方向へと進んでいった。

情報によると彼はジャングルの奥地で原地人を支配し、軍とはまったく連絡を絶ち、自らの王国を築いている、というのだ。そのアメリカ軍の恥である錯乱者カーツを暗殺しなければならない、というのが軍の考えだった。この密命を受けた若い兵士ウィラードは、4人の部下、クリーン(ローレンス・フィッシュバーン)、ランス(サム・ボトムス)、シェフ(フレデリック・ホレスト)、チーフ(アルバート・ホール)を連れ、巡回艇PBRに乗り込んだ。まず、ウィラードは、危険区域通過の護衛を依頼すべく、空軍騎兵隊第一中隊にキルゴア中佐(ロバート・デュヴァル)を訪ねた。

ナパーム弾の匂いの中で目覚めることに歓びさえ感じているキルゴアは、花形サーファーであるランスを見ると彼にサーフィンを強要した。ワーグナーの“ワルキューレの騎行”が鳴り響く中、キルゴアの号令で数千発のナパーム弾がベトコン村を襲った。キルゴアのもとを発った彼らは、カーツの王国へとPBRを進めた。河岸に上陸するたびにウィラードに手渡される現地部隊からの機密書には、カーツの詳細な履歴と全行動が記されており、読めば読む程ウィラードには、軍から聞いたのとは別の人物であるカーツが浮び上ってきていた。王国に近づいたころ、クリーンが死に、チーフも死んだ。

そして、王国についた時、ウィラードはそこで、アメリカ人のカメラマン(デニス・ホッパー)に会い、彼から王国で、“神”と呼ばれているカーツの真の姿を聞かされる。カーツは狂人なのだろうか。それとも偉大な指導者なのだろうか。ウィラードにもわからなかった。そして遂にカーツとの対面の日がきた。テープレコーダーや本に囲まれたカーツの元にやってきたウィラードは、軍の命令に従い、“神”と呼ばれる人間カーツを殺すのだった。

公開直後からこの映画に対する賛否両論の嵐が吹き荒れる!!

1955年から1975年にかけて20年も続いたベトナム戦争の後期。アメリカと南ベトナム解放民族戦線(通称ベトコン)の戦いは泥沼化し、その被害は拡大していく。本作はその頃の戦地で同じアメリカ軍兵士の暗殺を命じられたウィラード大尉が、川を上りながら戦地の悲惨な有様と戦争の矛盾や不毛さを味わっていくという物語だ。
本作の印象を一言で言うと“狂気”そのもの。完璧主義者であるコッポラ監督らしく、徹底的に戦争の狂気が描かれる。

当然と言うべきか?、『地獄の黙示録』は、公開直後から映画に対する賛否両論が噴出した。映画評論家たちの間では、「ストーリーもあるようでないようなものである」、「戦争の狂気を上手く演出できている」、「前半は満点だが後半は0点」など、完全に意見が分かれた映画であった。

作品としての質は別にして、批評家たちは「泥沼のベトナム戦争がアメリカ人に与えた心の闇を、衝撃的な映像として残した怪作である」と結論付けたのであった。

人の醜さを描いた傑作、『エレファント・マン』

『エレファント・マン』の一場面

『エレファント・マン』の一場面

『エレファント・マン』(The Elephant Man)は、1980年制作のイギリス・アメリカ合作映画 。デヴィッド・リンチ監督、脚本。メル・ブルックスがプロデューサーとして参加している。
19世紀のイギリスで「エレファント・マン」と呼ばれた青年ジョゼフ・メリックの半生を描いている。最優秀作品賞、主演男優賞などアカデミー賞8部門にノミネートされたが、無冠に終わった。ちなみに、この年の作品賞には『普通の人々』(出演:ドナルド・サザーランド、メアリー・タイラー・ムーア、監督:ロバート・レッドフォード)が受賞した。

人間らしさとは??

19世紀末のロンドン。ロンドン病院の外科医フレデリック・トリーブス(A・ホプキンス)は、見世物小屋で、“エレファント・マン”〈象人間〉と呼ばれる奇型な人間を見て興味をおぼえた。

ジョン・メリック(ジョン・ハート)という名をもつこの男を、フレデリックは、研究したいという理由で持ち主のバイツ(フレディ・ジョーンズ)からゆずり受ける。学会の研究発表では、トリーブスは大きな反響をえるが、快復の見込みは皆無だった。21歳と推定されるメリックは右腕がきかず、歩行も困難、言葉もはっきり発音できないという状態だった。

院長カー・ゴム(サー・ジョン・ギールグッド)は、他の病院に移させることをトリーブスに告げるが、メリックとの面会で、彼が聖書を読み、詩を暗誦するのを聞いて感動し、病院に留まるようにと考えを変える。トリーブス夫婦に招かれて彼らの家を訪れたメリックは、トリーブス夫人(ハンナ・ゴードン)が美しく、メリックをやさしく扱ってくれることに感激し、涙を流しながら、誰にも見せたことのない美しい母親の写真を見せた。

タイム誌に、メリックのことが報じられ、一躍有名人になった彼は、興昧を抱いた様々な人々の訪問を受ける。舞台の名女優ケンドール夫人(アン・バンクロフト)も、その一人だった。“商売品”を騙し取られたと、反感を持っていたバイツは、秘かにメリックを連れ出しヨーロッパヘ向かった。再び動物のような扱いを受け、容態の悪化したメリックは瀕死のところを見世物小屋の仲間に救われ、やっとロンドンにたどりつく。

しかし、人々の好奇な目につきまとわれ、ついに“私は人間だ、動物じゃない”と叫ぶメリック。やっと、トリーブスのもとに戻れた彼は、ケンドール夫人の好意で観劇のひと時を過ごす。感激の時を過ごし部屋に戻ったメリックは、かねてより作り続けていた、窓から見える寺院の模型を完成させ、そこに自分の名を書き込んだ。

そして、いつもの寝方であるうずくまって寝る姿をやめ、その夜は、人間たちがやるように仰向けになって眠りにつくのだった。それは安らぎに満ちたメリックの最後の姿であった。

異形の人物に対する、好奇、恐怖、憐憫、忌避、軽蔑などの感情がもたらす不幸!!

異形の人物に対する人間の様々な感情を描いているが、全ての人間がその全てを抱いている。すなわち、好奇、恐怖、憐憫、忌避、軽蔑。病院で彼を世話する医師や看護婦ですらこれらの感情からは自由ではない。見世物小屋から救い出されても、結局、ときたま人前に連れ出されて、人々の好奇と憐憫の感情を満足させることになるのだ。

そのことを最もよく理解しているのがそれらの感情の対象であるエレファント・マンなのだ。自分が社会には受け入れられない存在であること。そして、自分の安住の地は神の家である教会しかないことを彼は分かっている。

窓から見える尖塔をモデルに、紙の教会を完成させた彼が、「これですべて終わった。」という一言に涙が溢れた。生まれてから自分の為にやり通したことが紙の教会ひとつを作ることだけだなんて。
真の孤独がどれほどに残酷なものであるのか。たやすく思いやりだの、愛だのということがどれほど軽薄なものなのか。
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