【映画の鑑賞後のコメント】
女実業家としての半生を描く一方で、レズだったエンマは若手政治家のルクードレと出会い、愛し合うようになります。政治的な意見の対立から別れ話が出ても、エンマは結果的には彼を許し、最後まで守ろうとします。また、かつての恋人の遺児を引き取り、忙しい合間をぬって子供との時間を作ろうとしたりする。強さだけではなく、エンマの愛情深い一面も描かれているのです。
実在した女性銀行家のマルト・アノーとは?
ヒロインのエンマ・エケール(ロミー・シュナイダー)は、実在の女銀行家マルト・アノー(Marthe Hanau, 1886年 – 1935年)をモデルとしている。
第三共和制下のフランス、「狂乱の時代」と呼ばれた両大戦間期に活躍した歴史上の女銀行家アノーは、いわゆる「二百家族」の下で寡占状態にあったフランス金融界に果敢に挑戦した人物だが、毀誉褒貶あり、その評価はいまだに定まっていないようである。
言わずと知れた階級社会である第二次大戦前のフランスで、貧しい出自の女性がいかにして銀行経営者となったか、大いに興味あるところだ。だが、映画ではレズビアン関係にある富裕な女性から設立資金を得たというやや非現実的な設定になっており、いささか肩すかしを喰らう。現実のマルト・アノーはユダヤ系で、背後にはロスチャイルドなどユダヤの財閥があったという説もある。このように、映画はあくまでエンターテインメントであって現実とは異なると心得た方が良いのだが、劇中で主人公が提示し、彼女の看板ともなる「8%」という預金金利はどうも気になる。
(金利8%の謎について)
映画では、フランスの銀行預金金利が1%から1.5%であったときに、ロミー・シュナイダー演ずる女銀行家の銀行だけが「8%」という預金金利によって庶民の小口資金を大量に集めたために、既成の金融業界の激しい反発を被り、彼女は、さしたる根拠もないまま詐欺の嫌疑をかけられて獄中生活を送ることになる。「フランス経済を支配する二百家族」と言われ、実際には婚姻などにより200家族をさらに下回る寡占状態にあったフランスの金融資本家たちが預金金利を不当に低く抑えて暴利をむさぼっていたのに対し、ヒロインの女銀行家は「8%」によって庶民に夢を与えたというお定まりの図式なのだが、現実の金融・経済がそんなに単純であるはずはない。一体全体、1%が「不当に低い」のだろうか、それとも8%が「不当に高い」のだろうか。そもそも、同一通貨でのこのような著しい金利差は、現実に可能なのだろうか。
映画音楽
映画の音楽を担当したのは、エンニオ・モリコーネです。1950年代末から映画音楽の作曲、編曲、楽曲指揮に携わっているイタリアの作曲家です。
Ennio Morricone - Dedica - La Banchiera (1980)
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映画「華麗なる女銀行家」は、帽子職人の娘が 才能と美貌を武器に成り上がる姿がとても興味深く、人生の醍醐味を感じさせられます。しかし、その一方で波乱万丈な人生を送るという場面があり、人生はそう甘くないということを知らしめられます。是非、ご覧ください。
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