2020年2月23日 更新
冬の時代といわれるスランプ期の“手塚治虫”作品は、なんか奇妙なものばかりで面白いですよ。
誰もが認めるマンガの神様、手塚治虫。傑作、名作、ヒット作は星の数。しかし、そんな手塚治虫にもスランプがあったのです。その時期の作品は「鉄腕アトム」や「リボンの騎士」などからは考えられない奇妙なものばかり!で、これがまた面白いのです。
手塚治虫
手塚治虫。偉大な人物です。偉大すぎると言ってもいいほどの人物です。日本の漫画を確立した、そう、正真正銘のマンガの神様です。
「ジャングル大帝」「鉄腕アトム」「リボンの騎士」「火の鳥」「どろろ」「ブラック・ジャック」「三つ目がとおる」などなど代表作を挙げればきりがありません。
もう、向かうところ敵なし、晩年の「アドルフに告ぐ」「陽だまりの樹」や絶筆となった「ネオ・ファウスト」も高い評価を受け、ヒットしました。デビューから亡くなるまで傑作といわれる作品を造り続けた手塚治虫。まさしく向かうところ敵なし。
しかし、そんな手塚治虫にもスランプといわれる時代があったのです。
きりひと讃歌(1970年 - 1971年)
手塚治虫のスランプ。それは手塚治自ら「冬の時代」と語った1968年から1973年のことです。この時期、白土三平をはじめとする劇画作品の台頭、永井豪の「ハレンチ学園」のヒットによるハレンチ・ブームの到来などが襲いかかってきて手塚治虫の作風が古いものと見なされてきたのです。
劇画にお色気。つまり、成人漫画が誕生したのです。
今まで手塚治虫が求め、作り続けてきたモノとは全く違う世界。手塚治虫は悩みノイローゼに陥り、精神鑑定も受けたそうです。しかし、手塚治虫はこの新しい流れに立ち向かいます。成人漫画に挑戦します。そのひとつ「きりひと讃歌」ですが、もう、この時期の作品は問題作ばかり。当時はいろいろと言われていたようですが、腐っても鯛。スランプでも手塚治虫。面白くない筈がありません。
【あらすじ】
徐々に体が犬のように変形し、死にいたるという奇病・「モンモウ病」。この病気の治療に情熱を注ぐ医師・小山内は調査中に罹患してしまう!犬のような外見に変わってしまった小山内の受難の物語。
犬のような顔になる気病に侵された医師の物語。う~ん、重い。外見による差別、人間の尊厳といったテーマが重すぎる。スランプ期の手塚作品は重いテーマを持った物が多いのですが、レイプとかも出てきますしね。落ち込み、悩んでいたからこそ出来上がった作品ともいえるのではないでしょうか?
舞台のモデルは大阪大学医学部だそうです。ここは、手塚治虫の母校であると同時に山崎豊子の小説「白い巨塔」のモデルでもあります。そうなんです。「きりひと讃歌」では、「白い巨塔」のように、医学界における権力闘争も描かれているんです。
後の作品で大ヒットする「ブラック・ジャック」とはえらい違いですね。タブーに挑戦した意欲作と言えるわけですが、当時は狼男をテーマにして大ヒットした「バンパイヤ」の二番煎じと酷評されたといいますから、世間は厳しかです。
アポロの歌(1970年)
さて、劇画に関しては「きりひと讃歌」で対抗した。その前には「空気の底」シリーズというのもありました。では、エロチック関係はどうなんだ?!と言われれば、勿論そちらもしっかりモノにしています。
1970年に連載された「アポロの歌」は、その代表でしょう。
【あらすじ】
再生を繰り返し真実の愛を追究する男の物語愛し合うことを拒絶する近岩昭吾。神は、おろかなる彼に、一人の女性を愛するも、永遠に結ばれない、という罰を与えるのだった。死と再生を繰り返す異色作品。
母親が「パパ」の一人と肉体関係を結んでいるのを見てしまったことで、「愛」を憎むようになった主人公。もう既に重いですよね。1970年ですからね。しかも少年誌です。漫画に下着姿の女の子が出てきただけで大騒ぎしていた少年にとっては、このテーマは重い。重すぎて、何のことやら分からんほどです。
人間や動物が愛し合い、あるいは交尾するのを見ると憎み、殺すようになる主人公。
精神病院で治療を受けていると、夢の中で女神像に「愛を呪った罰を受けなければならない」と告げられ、「女性を愛するが、結ばれる前に自分か相手が死んでしまう」ことを繰り返すという過酷な運命を背負わされてしますのです。
物語はここから1章が始まり、5章まで5つの物語で綴られます。
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生誕:1928年11月3日
死没:1989年2月9日(60歳没)
活動期間:1946年 - 1988年