5つの物語は全て夢です。夢から覚めると主人公の前に女神がいました。いましたが、女神は主人公を許さず、再び愛の試練を与え、それは永久に繰り返されることになるのでした。
「アポロの歌」は性愛をテーマにした物語ですからねぇ。当時としては当然の対応だったのでしょうが、神奈川県で有害図書に指定されました。
やけっぱちのマリア(1970年)
ただ、週刊少年チャンピオンは、「やけっぱちのマリア」を掲載したことで福岡県の児童福祉審議会から有害図書の指定を受けました。
【あらすじ】
父子家庭に育った暴れん坊の焼野矢八の体から、ある日エクトプラズムが産まれる。それは矢八の父のダッチワイフの身体に宿り、マリアと呼ばれて人間生活を送るようになる。しかしマリアは「産みの親」の矢八から、やんちゃな性格を受け継いでいた。
なんと言っても学園ラブコメ、ヒロインが異形の美少女、ライバルヒロインがツンデレのスケバン、ギャグ満載の性表現、そして最後に現れる美少女との三角関係。2012年にラジオドラマになったのも頷けます。
エロチックでありながらも、それを風刺するようにもなっています。そして、唐突とも思えるラストは、主人公の、ほろ苦く、どこか懐かしい青春っといった切ない余韻を残します。
虫プロダクション
この時期の他の代表作といえば、「人間昆虫記」が挙げられます。
自分自身はからっぽなのに、たぐいまれな美貌と天才的な模倣能力で、他人の才能を次々と吸い取っては破滅させてゆく、おそるべきヒロイン=十村十枝子。芥川賞作家、天才女優、舞台演出家、国際的デザイナー、カメラマンと、虚飾の脚光をあびながら、蝶のように華麗に脱皮・変身してゆく「完全変態」の彼女が、ラストシーン、ギリシャの古代遺跡上でつぶやいた衝撃の「ことば」とは......!?
オランダ人医師カルロスの助手に着くため長崎出島に出立する蘭方医倉敷は、かの地に性器で話す異人の遊女がいるという噂を聞いた。彼は実際にその遊女と出会う。彼女サロメは、何と尊敬するカルロスのお気に入りだった。
ところで、手塚治虫はアニメが作りたくて、その資金稼ぎの為に漫画家になったと語っているほど、アニメ愛が強いヒトなんです。1961年にアニメーション専門プロダクションである株式会社虫プロダクションと、その子会社の虫プロ商事をたちあげ、「鉄腕アトム」や「ジャングル大帝」など手塚作品を主にアニメ化しているのですが、代表的な作品となると。1969年から制作が開始された「アニメラマ三部作」でしょう。
第一作「千夜一夜物語」、第二作「クレオパトラ」、第三作「哀しみのベラドンナ」からなるアニメラマ三部作です。
[アニメラマ]クレオパトラ_予告篇
しかし、「冬の時代」はここまで。同年11月から週刊少年チャンピオンにて大傑作「ブラック・ジャック」の連載が開始され、永いトンネルを抜け出ることになります!
見事に復活した手塚治虫は、その後も「三つ目がとおる」、「七色いんこ」、「ドン・ドラキュラ」などなどヒット作を連発し、最後の栄光に満ちた15年間を突っ走るのでした。