「おしりだって洗ってほしい」TOTOウォシュレットを爆発的なヒットに導いた戸川純のCM
2017年1月17日 更新

「おしりだって洗ってほしい」TOTOウォシュレットを爆発的なヒットに導いた戸川純のCM

1982年、不思議系キャラクターの戸川純が「おしりだって、洗ってほしい。」と語るTOTOのCMは大きな衝撃を視聴者に与えた。 温水洗浄便座の普及に絶大な貢献をもたらした歴史的CMについて当時の動画や誕生秘話を紹介。

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1982年、お茶の間を騒がせたCM「おしりだって、洗ってほしい。」

トイレ、洗面器などの衛生設備メーカーTOTOは、1982年9月。
温水洗浄便座「ウォシュレット」のテレビCMを放送した。

不思議系キャラクターの戸川純が「おしりだって、洗ってほしい。」と語る姿は大きな衝撃を視聴者に与えた。
いまや生活に無くてはならないものになった温水洗浄便座を普及させる要因となった歴史的なCMについて振り返る。

【CM動画】1982年 TOTO ウォシュレット おしりだって洗ってほしい 戸川純

『コピーライターの神様』仲畑貴志が手掛けた珠玉のキャッチコピー

あまりにも有名になったこの「おしりだって、洗ってほしい。」のコピーを考えたのは、『コピーライターの神様』と呼ばれる仲畑貴志。
仲畑貴志(なかはた たかし)

仲畑貴志(なかはた たかし)

1980年代「コピーライターブーム」の時代から第一線を走り続け、50年のクリエイター人生で4000点以上の作品を世に送り出した。
代表作は「ココロも満タンに」(コスモ石油)、「目のつけどころが、シャープでしょ」など。
1981年12月、TOTOのウォシュレット開発チームはソニーのウォークマンや、サントリーのウイスキーなど、数々の名作コピーを手がけていたコピーライター仲畑貴志のもとを訪れる。

しかし、コピーを依頼された仲畑は「ウォシュレットの商品価値がピンときません」とコメント。
そこで立ち上がったのが、トイレで一番長い時間実験をしてきた若手技術者の池永だった。

池永は青い絵の具を自分の手のひらに塗り付け、「紙で拭いてください」と仲畑にに言った。
仲畑は紙で絵の具を拭いたが、きれいには落ちなかった。
「お尻だって同じです。水で洗えばきれいになります。これは常識への挑戦なんです」
この言葉に動かされた仲畑氏は承諾した。
青い絵の具を使ったテレビCMはこのときのエピソードがそのままつながっている。

当時、下品なイメージを持たれる『おしり』というワードは宣伝にはタブーであった。
だが、仲畑はあえてこのタブーを犯して「おしりだって、洗ってほしい。」とのキャッチコピーを作り上げる。
そして、TOTOには「これは、ソニーのウォークマンやニコンのカメラ、そうした商品に負けない技術です。堂々と勝負しましょう」と説得したのだった。

キャッチコピーの魅力を引きだした戸川純のインパクト。

「おしりだって、洗ってほしい。」のキャッチコピーはたしかに素晴らしい。
だが、たった15秒や30秒のテレビCMでその言葉を視聴者に印象付けるのは難しかしく、短いフレーズでも画面に注目させる「何か」が必要であった。

そこで、選ばれたのが不思議ちゃん的なキャラクターの戸川純。
戸川は、その特徴的なハスキーボイスと独特の間で、言葉を発するだけで注目を集める何とも言えない個性を持っていた。
戸川純(とがわ じゅん)

戸川純(とがわ じゅん)

1961年3月31日、東京生まれ。
個性的なキャラクターでテレビ、映画、CMなどで活躍。
1980年に元ハルメンズの上野耕路とレトロ・ユニット、ゲルニカを結成、1984年にアルバム『玉姫様』でソロ・デビュー。
また、のちにバンド、ヤプーズとしても活躍(活動初期は戸川純とヤプーズ名義)。
変幻自在のヴォーカルとエキセントリックなパフォーマンス、独特の世界観で人気を集め、その後に与えた影響は計り知れない。

【CM動画】高速磁化設計マクセルUD 戸川純 わからん編

たった一言で存在感を発揮する個性と、商品の違いを「わからん。」と言っても許されてしまうキャラクター。
こうした戸川純らしさは高く評価され、ヤマハエレクトーン・マクセルカセットテープ・サントリーシュプレなど多くのCMに起用された。

クレームが殺到した食事の時間へのCM放送

こうして生まれたウォシュレットのテレビCM。
放送時間はあえて夜7時過ぎ、まさに一家団欒で晩御飯を食べている時間帯に絞った。

そこで流れる「おしりだって、洗ってほしい。」のCM。
直後からTOTO宣伝課の電話が一斉に鳴り始めた。

「飯を食っている時間にお尻だ便所だとは何だ!」という激しい抗議であった。
宣伝の責任者・岩塚は自ら電話を代わり、「皆さんは今、食事をされています。それと同じくらい、排泄も尊い行為です。暮らしを快適にする商品です。自信と誇りを持って作っています。」と懸命に説明した。
部下たちもそれに倣い、次から次へと掛かってくる抗議の電話に応対し続けた。
すると、一月後にはクレームの電話はゼロになったという。

「お尻は拭くものではなく、洗うもの。」と意識を変換させたウォシュレット。

お尻を洗うと言う画期的なコンセプトは、斬新なCMによって一気に日本中に広がり、ウォシュレットは瞬く間に大ヒット商品になっていった。

その後も、TOTOは積極的な宣伝活動を行い、
「人の、おしりを洗いたい。」
「ナニを隠そう、おしりもきれい。」
「やっぱり、おしりは締まり屋さん。」
「好きな人のもにおうから。」
などのコピーを仲畑貴志が続々生み出しては、戸川純がテレビCMで広げていく。

【CM動画】1983年 TOTO ウォシュレット「人の、おしりを洗いたい。」戸川純

【CM動画】1985年 TOTO ウォシュレット「おしりだって洗ってほしい」戸川純

【CM動画】1986年 TOTO ウォシュレット「やっぱり、おしりは締まり屋さん。」戸川純

【CM動画】1988年 TOTO ウォシュレット「きたない生き方はイカン」戸川純×鈴木清順

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