市川準の監督デビュー作!映画『BU・SU』性格ブスの女を18歳の富田靖子が無表情で熱演!!
2017年2月23日 更新

市川準の監督デビュー作!映画『BU・SU』性格ブスの女を18歳の富田靖子が無表情で熱演!!

映画『BU・SU』は、1987年に公開した市川準が監督デビューした作品です。ひねくれてしまった性格ブスの女の子が成長していく物語です。当時18歳だった富田靖子が主演を務めました。

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麦子は担任の教師によると伊豆で何かあったらしいのですが、劇中では具体的に何があったかは明らかにさせていませんが、映像から断片的に判ることは、麦子の父が亡くなり、その後母は酒びたりになり麦子と母の関係はあまり良くなかったようです。浴衣を着た女性が海岸から入水自殺するシーンがあるのですが、おそらくそれは麦子で、伊豆で何かあったというのは、自殺未遂のことではないか?と思われます。
自殺未遂シーン。

自殺未遂シーン。

何がしたいのかわからない麦子

麦子は、これといった目標もなく、何をやっても中途半端、今いる場所にも何となく違和感を感じていました。また、学校にもなじめないまま、芸者見習いにも身が入らず、結局、町をふらふらする日々を送っていました。そして、おばさんが痛いことを口にしますが、その中に優しさが込められていました。
「いいから学校なんてもうやめちまいな。故郷から逃げて、...

「いいから学校なんてもうやめちまいな。故郷から逃げて、この蔦谷からも逃げて、逃げて逃げて逃げまくればいいよ。そうやって逃げてるうちに何か見つかるかもしれないねェ」

女性として自覚していく麦子

街を彷徨う麦子、その麦子の周りに様々な女性が目に止まります。地下鉄の中ではDVに遭ったと思われる女性、少女、ホームレス、電話ボックスの中で何かのトラブルで遭っている女性、レコード店でのカップルなどそこにはまさに一人の女性の現在・過去・未来が縮図のようになったようで、最後に麦子は渋谷で一人の男性に捕まり、ホテルへ誘われます。麦子はその男性の手を振り払い逃げますが、「蔦屋にいようが街にいようが自分も一人の女性として視られている」ということを自覚し、女性として生まれたことから逃げられないと思ったのではないか?と思います。
女性というものを知り、自覚する麦子。

女性というものを知り、自覚する麦子。

麦子を成長させることになった『お七』について

クラスの女子に人気があるボクシング部の津田(高嶋政宏)が、麦子を「気になる」と言いだしたことで、女子の嫉妬を買い、「芸者さんなんだからできるでしょ?」と文化祭の出し物の全責任を押し付けられた麦子は、文化祭で人形振りの八百屋お七を踊ることに。

それは、丁度彼女の年の頃、母親が浅草の公会堂で踊った踊り。
置屋の跡取り娘で花形芸者だった母は、その後、約束された将来を捨てて麦子の父となる男と駆け落ち。叔母の胡蝶(大楠道代)が置屋を継いだ――――そんな姉妹の物語と、麦子の母の過去が詰まったお七。
クライマックスで、文化祭のフィナーレ用に用意された校庭のキャンプファイヤーに、無断でランプと石油タンクを投げ入れ、2人だけのフィナーレを飾る麦子と津田。
夕闇に包まれた校庭に轟々と噴き上げる炎は、その瞬間麦子の心にともった女の情念の炎のようでもあり、彼女の、母へのわだかまりに満ちた少女時代との訣別の炎のようにも。
炎の中に浮かび上がる振袖姿の麦子が、とても大人びて美しく、印象的なシーンです。
舞台の「八百屋のお七」では、江戸の町に火を点けることは...

舞台の「八百屋のお七」では、江戸の町に火を点けることはできませんでしたが、麦子はファイアーストームに火を点けることで、「八百屋のお七」を見事完結させます。

そして、ずっと思いつめたような顔をしていた麦子が、最後...

そして、ずっと思いつめたような顔をしていた麦子が、最後に母親と海岸で「東京はいろんな人がいる」と笑っているシーンで終わります。

主題歌は名曲、原由子の『あじさいのうた』

エンディングでは原由子の『あじさいのうた』が起用され、...

エンディングでは原由子の『あじさいのうた』が起用され、曲と共に富田靖子の白黒写真が映し出されました。

主演映画「BU・SU」エンディング

映画の製作話

主人公の麦子は当初、歯並びが悪いとか見た目も悪くしようとかルックスにコンプレックスを持っている女の子という話もあったが、監督の市川準が見た目じゃなく精神的に閉じた感じの女の子にしようと言ったという。

市川は「ブス」という言葉の意味を、どうしても「容姿」のこととしてはとらえたくなくて、いまを生きている若者の多くが感じている「心の閉塞感」が「BU・SU」という「記号」になればと思っていたと述べている。

フィルムは普通本番から回すが、市川はテストの段階からフィルムを回すことがあったという。通常、フィルムは100分の映画で約9000フィート、許容尺数がその4~5倍で4~5万フィートだが、本作では10万フィート以上になった。

【映画に関する映像】

市川準、BU・SU監督依頼にびっくり

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