ボクサー赤井英和の半生を映画化「どついたるねん」 テント上映から口コミが広がり、ブルーリボン賞まで獲得しました!
2017年1月30日 更新

ボクサー赤井英和の半生を映画化「どついたるねん」 テント上映から口コミが広がり、ブルーリボン賞まで獲得しました!

1989年公開の阪本順治の初監督作品。ボクシングの魅力に取り憑かれた男の物語。舞台の大阪・新世界もまた良い味を出しています!

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赤井英和の半生を映画化した 「どついたるねん」

1987年に出版された赤井英和の自伝をもとに、阪本順治が監督・脚本を務め、赤井本人の主演で映画化したボクシングを題材にした日本映画である。

劇場初公開は1989年11月11日。1989年度の第32回ブルーリボン賞作品賞受賞作品、第63回キネマ旬報ベストテン日本映画部門第2位。
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原作となった自伝 「浪速のロッキーのどついたるねん」
講談社 1987年9月発売
本作が監督デビュー作の阪本順治と俳優としてはほとんど実績のない赤井英和主演で、公開当初は映画館での上映が出来なかったため、原宿に特設テントを設置して荒戸源次郎事務所作品としての上映であった。
予算も無く宣伝などは無かったが口コミで評判が広がり、テント上映は長期間行われた。
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右は赤井の幼少期を演じた子役

ボクサー時代の赤井英和

まさにどついたるねん!のファイトスタイル

「浪速のロッキー」としてファンに愛された赤井英和だろう。

「華麗なアウトボクシングもできるんでっせ。そやけど、プロである以上、お客を沸かして勝たんとだめでしょう」

元々は名門近畿大学でアマの強豪として鳴らし、幻のモスクワ五輪有力候補になった逸材だった。
その言葉通り、1980年、愛寿ジム(現グリーンツダジム)からデビューすると当時の日本記録となる12連続KO勝ちをマーク。豪快なフックでなぎ倒すファイトや飾り気のない関西弁で子供からお年寄りまで幅広い世代のハートを掴んだ。 

1983年、WBCスーパーライト級タイトルマッチでアメリカのブルース・カリーに挑むが7RKO負け。

「公園のジャングルジムにサンドバッグを吊るして、会長と二人三脚で『関西初の世界チャンピオンになるんや』と頑張ってきた。
勝てなかったのは……。世界のリングに立てただけで満足してしまったんでしょうね。負けはしたが、こっちのパンチもよく当たる。これやったら、世界も遠くはないなと思えました」
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浪速のロッキー!パンチパーマ!!

映画の基となった赤井最後の一戦

2度目の世界タイトルを目指そうとした前哨戦として大和田正春との試合に臨む。
しかし、またも第7ラウンドでのKO負けの後、意識不明に陥る。

急性硬膜下血腫、脳挫傷と診断され、大阪市内の富永病院で開頭手術が行われた。
搬送時生存率20%、手術後生存率50%と極めて重篤な状態であったが、無事に回復(本人曰く、開頭中に意識が回復し、タオルで包まれた自分の脳を触ったという。触ると強烈な吐き気を催したが、その理由が解らず何度も触っては吐き気を催したと証言していた)。

回復後はボクサー復帰も視野に入れていたが、医師からボクサーを引退するように勧告を受け、現役を引退する。

赤井英和VS大和田正春 - YouTube

あらすじ

試合中にKOされ、再起不能に陥ったボクサーの安達英志(赤井英和)は緊急手術の末に奇跡的に回復するが、医師から二度とリングに立てないと宣告される。
ボクシングが人生のすべてであった安達はジムを開くが、リングへの思いは絶ちがたく、自暴自棄の日々を過ごす。

元チャンピオンのコーチ(原田芳雄)との出会いによって復活に賭ける英志は4回戦ボーイとしてリングに向かう。やがてカムバック戦の相手が決まるが、それはかつての後輩、清田(大和武士)だった……。
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主人公・安達英志
赤井英和の現役時代を髣髴とさせるボクサー姿
そして、遂に試合の日となり英志は再びリングに立った。
ゴングが鳴り、清田と命賭けの死闘を繰り広げる英志。
しかし、前の試合での負傷を背負っている英志にはやはり不利であった。
そして、見兼ねた貴子がタオルを投げた瞬間、同時に英志のパンチが清田をダウンさせたのだった。

劇中、ボクシングシーンのリアリティ

開頭手術まで行った赤井英和ですが、本作ではボクサーとして実際にリングに立ち、戦います。

相手には実際にボクサー赤井を引退に追い込んだ大和田正春(イーグル友田として)が登場。
現実同様、赤井演じる安達英志を、緊急手術を受けるまでに追い込みます。
そして、また復帰戦の相手清田役には、当時の日本ミドル級・現役チャンピオン大和武士(清田さとるとして)が選ばれます。
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ボクシングは倒すか倒されるか!
映像には、特殊効果やカットの工夫も特になく、二人の生々しい打ち合いが映し出されます。
壮絶なシーンの進行によって、ボクシングの原点を喚起させる名シーンとなっています。

その理由はボクシングの暴力性と、常に付きまとう死の予感が凝縮された映像だからではないでしょうか。
勝敗すらも超えた人間同士のどつきあいに、命懸けの格闘技・ボクシングの魅力を見る事ができます。

最後、タオルが投げ込まれた後に、フラフラの安達英志が最後の力を振り絞り、パンチを見舞うシーンで画面が固まり、エンディングへと移る点がそれを象徴しているように感じました。
勝敗や技術ではない、相手を倒す事に執着してしまうボクサーの性が明確に表れていました。

そして、それは「浪速のロッキー」のファイトスタイルと共通しています。
赤井英和が演じる事で、より映画にリアリティを与えました。

タイトル「どついたるねん」。まさに言い得て妙です。
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