「ピンク映画の黒澤明」と呼ばれた若松孝二。そこには「怒り」や「狂気」が込められています。
2018年12月22日 更新

「ピンク映画の黒澤明」と呼ばれた若松孝二。そこには「怒り」や「狂気」が込められています。

マニアックな映画監督ではある若松孝二。黒澤明とはいえ、ピンク映画のですからね。一般的な認知度は当然本家本元よりも映画に掛けられる予算同様に低い。しかし、しかしです。映画にかける情熱、そのテンションは尋常ではない程に高いのです!

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キスより簡単

80年代に入って4作目、1989年の作品「キスより簡単」。おそらくこれが最も商業的に成功した作品ではないかと思われます。前作の「松居一代の衝撃」が思いっきりコケてしまい、多額の借金を背負い込むことになった若松孝二は、まさに背水の陣。
是が非でも成功させねばならなかったと思われます。だからと言うわけでもないのでしょうが、「キスより簡単」は、ヒットした石坂啓の漫画の映画化です。
キスより簡単

キスより簡単

掲載誌:ビッグコミックス
掲載期間: 1986年9月~1987年10月
原作ものとはいえ、サブタイトルに「New Sex Life-Style Bible」とあるように、内容的に若松孝二好みと言う感じですね。主演は原田芳雄。いい感じです。
キスより簡単

キスより簡単

監督:若松孝二
脚本:小水一男
音楽:ジョー山中
出演:原田芳雄、早瀬優香子、石渡譲
「水のないプール」ではジュリーでおなじみの大野克夫(exザ・スパイダース)が音楽を担当していましたが、本作ではジョー山中(ex.フラワー・トラベリン・バンド)です。若松孝二って本当に音楽にこだわってますね。

キスより簡単(監督:若松孝二/出演:原田芳雄、早瀬優香子)

泉まぁこは父親がそれぞれ違う四人姉妹の三女。まぁこが生まれた時に母親は三人の男(ロクさん、シンちゃん、梶さん)と同時に付き合っていたため、本当の父親が誰かわからない。まぁこは母親の奔放な恋愛に憧れ、それを理想としてあらゆる男と関係を結んでいく。そんな中、お気に入りの男スズナリが三人の父親候補の一人、シンちゃんの息子だと判明する。その一方、ロクさんと急接近したまぁこは彼に父親以上の愛情を抱くようになる。血がつながっているかもしれない男二人の間でまぁこの心はゆらゆら動く・・・
第4回高崎映画祭で原田芳雄が主演男優賞を、早瀬優香子が新人賞を本作で受賞しています。

われに撃つ用意あり

1990年、正確に言えば80年代なわけですが、「キスより簡単」の翌年に90年代の若松孝二を予感させ代表作のひとつとなる「われに撃つ用意あり」が公開させます。
われに撃つ用意あり

われに撃つ用意あり

監督:若松孝二
脚本:丸内敏治
原作:佐々木譲
製作:若松孝二
出演者:原田芳雄、桃井かおり
音楽:梅津和時
撮影:伊東英男、田中一成、佐久間栄一
編集:鈴木歓、遠山千秋
製作会社:松竹、若松プロダクション
配給:松竹
公開:1990年11月17日
上映時間:106分
国際都市・新宿で生きる孤高なアウトローの世界を描いた原田芳雄主演のアクション。かつて全共闘闘士だったスナックのマスター・郷田は、警察とヤクザから追われて逃亡しているひとりの外国人女性を匿うが…。
本作が一般的に最も評価された若松孝二の作品といえるでしょう。
それを証明するように、第33回ブルーリボン賞 主演男優賞:原田芳雄、第3回日刊スポーツ映画大賞 主演男優賞:原田芳雄、第14回日本アカデミー賞 最優秀助演男優賞:石橋蓮司、第64回キネマ旬報ベスト・テン第6位、第12回ヨコハマ映画祭 第2位・特別大賞:若松孝二、原田芳雄・助演男優賞:蟹江敬三など多数の映画祭で受賞しています。

われに撃つ用意あり(予告)

音楽は、RCサクセションのサポート・メンバーとしても有名な梅津和時です。
原田芳雄とは相性が良かったのでしょう。次作の「キスより簡単2 漂流篇」まで3作連続で主役に抜擢しています。
1992年には宮沢りえ、ビートたけし、内田裕也という異色の3人を主人公とした「エロティックな関係」をはじめ「寝盗られ宗介(1992年)」、「Endless Waltz エンドレス・ワルツ(1995年)」などを発表、2000年代に入っても創作意欲は衰えることはなく、「完全なる飼育 赤い殺意(2004年)」、「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(2008年)」、「キャタピラー(2010年)」など話題作を量産し続けます。
そして、寺島しのぶ主演「千年の愉楽」の公開を翌年に控えた2012年10月に76歳で亡くなります。

今年10月13日には、若松プロのメンバーである実在の映画人たちが多数出演し、若松孝二の生きざまを描き出した「止められるか、俺たちを」が公開されました。

「止められるか、俺たちを」予告編 10月13日公開

監督:白石 和彌
キャスト:門脇 麦、井浦 新、山本 浩司、岡部 尚、大西 信満、タモト 清嵐、毎熊 克哉、伊島 空、外山 将平、藤原 季節、上川 周作、中澤 梓佐、満島 真之介、渋川 清彦、音尾 琢真、高岡 蒼佑、高良 健吾、寺島 しのぶ、奥田 瑛二
脚本:井上 淳一
音楽:曽我部 恵一
製作:尾﨑 宗子
プロデューサー:大日方 教史、大友 麻子
製作:若松プロダクション、スコーレ、ハイクロスシネマトグラフィ
製作年:2018年
上映時間:119分
決して恵まれた環境だったわけではないと思いますが、若松孝二の作品、生き方は、今なお多くの人々に影響を与え続けているんですね。
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