『カプリコン・1』 NASA非公認 史上最大のヤラセ大放送!
2017年1月30日 更新

『カプリコン・1』 NASA非公認 史上最大のヤラセ大放送!

有人宇宙船が火星に降り立つ世紀の一瞬は、実はヤラセだった!? 卓抜したアイディアとチェイス・シーンが息もつかせぬスペクタクル・サスペンスの魅力をご紹介。

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1970年代に流行った陰謀劇とSFが絶妙マッチ

人類史上初の大偉業と讃えられた、1969年のアメリカによるアポロ11号の月面着陸。世界中の人々がテレビに釘付けになって、月面着陸の瞬間を注視した。だが当時、この着陸映像は、アレはどこかのスタジオで撮影された捏造、つまりヤラセ映像なのでは? と一部でささやかれたこともあった。才人ピーター・ハイアムズはそのアポロの偉業とゴシップを元にこの原案を考え、自ら脚本を書き、演出も担当。本作は『破壊!』でデビューしたハイアムズ監督の長編4本目である。

Jerry Goldsmith - Capricorn One - YouTube

映画『カプリコン・1』のテーマ曲(メインテーマ)。映画音楽の巨人、ジェリー・ゴールドスミス作曲による「これが娯楽映画の音楽だ!」と言わんばかりの素晴らしいテーマ曲が響き渡る。これから「何かとてつもないことが始まるぞ」という期待と興奮を煽る、怒濤の如きダイナミックなサウンドに陶酔!

ストーリー(ネタバレ注意)&人物紹介

カプリコン1号の3人の乗組員。左からピーター・ウィリス...

カプリコン1号の3人の乗組員。左からピーター・ウィリス(サム・ウォーターストン)、真ん中のチャールズ・ブルベーカー(ジェームズ・ブローリン)、右端はジョン・ウォーカー(O・J・シンプソン)。

船長のブルーべーカーを演じるジェームズ・ブローリンは『ハイジャック』のハイジャック犯人から『面影』のクラーク・ゲイブルまでワル役も善人役もこなした中堅スター。サム・ウォーターストンは手堅い脇役で『インテリア』『ハンナとその姉妹』といったウディ・アレンの都会派作品や『キリング・フィールド』など問題作にも多数出演。O・J・シンプソンは1970~80年代に活躍した、アメフトのプロ選手上がりのスターだが、その詳細は後にたっぷりと。
 世界注視の中、人類初の有人火星探査宇宙船カプリコン1号が打ち上げられようとした、まさにその時、乗組員のブルーベーカー、ウィリス、ウォーカーの3人は宇宙船から降ろされて、名も知らぬ陸軍基地へ連行される。本計画の責任者、ケラウェイ博士は3人に、カプリコン1の生命維持システムに致命的な欠陥があり、有人飛行が不可能になったことを告げる。だが計画は無事成功したように見せかけねばならない。博士は3人に、基地内に作られた火星のセットを見せて、そこにしつらえた宇宙船に乗り込んで、火星着陸の瞬間を演じるように説得する。飛行士達は拒否するが、博士は断れば家族に危害が及ぶことを匂わせたので、3人はしぶしぶ〝演技〟することを承諾することになる。
 一方、取材部記者のコールフィールドは、友人のNASA局員ウィッターから、この計画に不審な点があると告げられる。コールフィールドが後にウィッター宅を訪れると、そこには見知らぬ女がいて、彼は蒸発してしまっていた。疑念を抱くコールフィールド。すると運転していた彼の車のブレーキがなぜか故障していて、暴走した挙げ句、川につッこむことに。得体の知れない敵の標的はウィッターからコールフィールドに移っており、その目に見えぬ巨大な影は常に彼の行動を監視していた。
 宇宙飛行士のブルーベーカー達は、大気圏に突入したカプリコン1号が消滅したという事の展開を知るにつけ、ケラウェイ博士達は自分たちを消す気だと察し、小型ジェット機を強奪して基地を飛び出し、砂漠に逃げる。3人は捕まらぬように3方向に逃げるが、一人捕まり、一人力尽きる。ひとりブルーベーカーだけがガソリン・スタンドで身を潜めていたところ、オンボロ複葉機に乗って彼を探しにきたコールフィードに助けられ、敵の戦闘機から壮絶な追撃を受けながら辛くも難を逃れる。
 アーリントン墓地では、事故死したと思われている宇宙飛行士3人の葬儀がアメリカ大統領ご臨席のもとしめやかに行われていた。大統領が弔辞を読み上げる中、墓地の彼方に死線を乗り越えてきた2人の男、ブルーベーカーとコールフィールドの姿があった。
カプリコン1号の疑惑を追究する記者のロバート・コールフ...

カプリコン1号の疑惑を追究する記者のロバート・コールフィールド(エリオット・グールド)。

エリオット・グールドも1970~1980年代にかけて活躍したハリウッド・スターで、ヌーボーとしたトボケた個性と男臭い魅力で主演作多し。ロバート・アルトマン監督の『M★A★S★H』『ロング・グッッドバイ』を始め、『遠すぎた橋』『サイレント・パートナー』『レディ・バニッシュ/暗号を歌う女』などが代表作。80年代以降も映画に出ており、ブラピ、マット・デイモン、ジョージ・クルーニー共演のオールスター作品『オーシャンズ11』以降のシリーズ3作に出演。
口説くコールフィールドに肘鉄を食らわす女ジャーナリスト...

口説くコールフィールドに肘鉄を食らわす女ジャーナリスト、ジュディ・ドリンクウォーター(カレン・ブラック、左)。

カレン・ブラックは1970年代を彩った女優で、フェイ・ダナウェイ以上にデモーニッシュと言っていいような強面なマスクで、個性的な役柄を演じた。『イージーライダー』『ファイブ・イージー・ピーセス』『エアポート'75』『ファミリー・プロット』あたりが代表作。
ジェームズ・ケラウェイ博士(ハル・ホルブルック)。ブル...

ジェームズ・ケラウェイ博士(ハル・ホルブルック)。ブルーベーカーの良き理解者であり有人であった彼は、いつしか政府機関の薄汚れた官吏に。

『大統領の陰謀』で情報源となるディープスロートを演じたり、『大統領の誘拐』『ワシントン大爆破』(テレフィーチャー)では大統領役を演るというように、反体制側も権力側も演じきれる実力派俳優。『ウォール街』や『ザ・ファーム/法律事務所』といった硬派な作品が似合う人だが、ショーン・ペンの監督作品『イントゥ・ザ・ワイルド』やマット・デイモンのエコロジー社会派劇『プロミスト・ランド』では少ない出番ながら存在感を示している。
ブルーベーカーの妻・ケイ(ブレンダ・バッカロ)。

ブルーベーカーの妻・ケイ(ブレンダ・バッカロ)。

『真夜中のカーボーイ』で注目された女優のブレンダ・バッカロもその最盛期は70年代。『いくたびか美しく燃え』や『ウィークエンド』に出演。特に『ウィークエンド』ではレイプされるヒロインを体当たりで演じて高く評価された。『エアポート'77/バミューダからの脱出』や『スーパーガール』(近作の同名作ではなく、ヘレン・スレーターが主演した1984年作品)等に顔を見せた。なおブルーベーカーの自宅の場面で、母のケイと一緒にいる息子のチャールズを演じているクリス・ハイアムズはハイアムズ監督の長男で、現在も俳優をやっている。

製作途中で協力をキャンセルしたNASA

当初NASAは本作に関わる宇宙科学的な全分野に於いての協力を惜しまず、劇中に登場する宇宙飛行機の船艇、機器(金額にして50万ドル以上)などが貸し出された。ところが製作途中でラッシュ(荒編集された撮影フィルム)をNASA局員に見せたところ、態度が一変。翌日から一切の協力を受けられなくなった、という(公開当時のパンフレットより)。これは当時、1969年のアポロ11号による月面着陸の映像が、アメリカによるでっち上げ、つまりNASAが捏造(撮影)したものではないか、という風評がまだ残っていたから、それに過敏に反応したものか。
ケラウェイの説得

ケラウェイの説得

ブルーベーカー(J・ブローリン)に、〝国と宇宙計画と家族のことを思うなら、芝居しろ〟と迫るケラウェイ博士(左、H・ホルブルック)。
火星到着の〝世紀の一瞬〟、ただいまオンエア中!

火星到着の〝世紀の一瞬〟、ただいまオンエア中!

ジャクソン陸軍航空基地内部で撮影された、カプリコン1号の火星シーン。
体制批判をテーマにした本作の中で、その国家のヤラセ(欺瞞性)をもっともよく象徴した名シーンがこれ。あ、この春公開されたマット・デイモン主演の『オデッセイ』のワンシーンじゃありません。
こちらがウソんこの着陸シーン。

こちらがウソんこの着陸シーン。

カプリコン1号の飛行士達、火星に到着・・・。月の青っぽさ(下の写真)とは対照的な火星の赤っぽい大地。ま、見ようによってはドッチも本物、どっちもニセモノってわけですが。あ、星条旗だけは本物デス。
これがホントの着陸シーン。

これがホントの着陸シーン。

アポロ11号が月面に着陸し、宇宙飛行士が月面に星条旗を掲げた有名なシーン。

『ブリット』の名スタントマンが激走シーンを担当

車載カメラによる車暴走シーン。

車載カメラによる車暴走シーン。

製作者にカットを命じられた、迫力満点のカースタント・シーン。リアルタイムでこの映画を見た時、このまるでジェットコースターに乗ったような臨場感に圧倒されて、思わず吐きそうになったほど。バンパー下に備え付けられたカメラの位置が低いので、予想以上のグルーヴ感にとらわれる。
 NASA局員の中で唯一、カプリコン1号の火星飛行に疑念を抱いていたウィッター(ロバート・ウォーデン)が〝失踪〟し、友人のコールフィールドはこの計画の裏にあるカラクリに気づく。だが気づいた途端に運転していた車のブレーキが効かなくなって、今度は彼が〝疾走〟。この暴走シーンは、カーチェイス映画の2大名作であるスティーブ・マックィーンの『ブリット』、ジーン・ハックマンの『フレンチ・コネクション』両作でカースタントを手がけた名ドライマー、ビル・ヒックマンによるもの。ムスタング・クーペのバンパーの下に特殊カメラを仕込んで、平均時速100キロ(最高時は160キロ)でロングビーチ市街を走り回って撮影された。
 あたかも自分が暴走車を運転しているような錯覚にとらわれる名シーンだが、製作者のポール・N・ラザルス3世はここを「カットしろ!」と命令。しかしハイアムズ監督はそれを無視して本編に使用し、大成功を収めている。
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