【ハイドライドシリーズ】T&E SOFTが手掛けた名作RPG「ハイドライド」は、日本でコンピュータRPGの基礎となった作品。
2021年5月29日 更新

【ハイドライドシリーズ】T&E SOFTが手掛けた名作RPG「ハイドライド」は、日本でコンピュータRPGの基礎となった作品。

80年代PCゲームにおけるRPGの傑作「ハイドライド」。かつてT&E SOFT社が手掛けたこの作品は日本におけるRPGの基礎を作ったと評されています。多くのPCゲーマーを虜にし、RPGブームの先駆けともなった「ハイドライドシリーズ」についてご紹介します。

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「ハイドライド」シリーズ

PC-88メインで開発、他PC機種へも移植されていきました。
「ハイドライド」「ハイドライドⅡ」「ハイドライド3」が一般的に知名度が高く、総称して「ハイドライドシリーズ」と呼ばれます。
「ハイドライド」シリーズ(T&E SOFT)

「ハイドライド」シリーズ(T&E SOFT)

『ハイドライド』(HYDLIDE)は、T&E SOFTが開発・発売したコンピュータゲームソフト、および同作品から始まった一連のシリーズ全般の総称である。ゲーム内での正式名称である『THE LEGEND OF HYDLIDE』の略称。

日本でコンピュータRPGの基礎を作った作品である。ゲームジャンルとしてはアクションロールプレイングゲームに当たる。なお、開発元のT&E SOFTでは、1980年代後半のパソコン雑誌で山下章などが中心となって使用したジャンル表記である「アクティブロールプレイングゲーム」という表記を用いていた。

『ハイドライド3』オリジナル版BGM - YouTube

「ハイドライド」(1984年12月13日)

「ハイドライド」(1984年12月13日)

「ハイドライド」(1984年12月13日)

1984年12月13日にPC-8800シリーズ用が発売され、他の機種にも移植される。オリジナルであるPC-8801版のゲームデザインとプログラミングは内藤時浩。発売以来パソコンゲーム雑誌のランキングに2年間載り続け、当時の雑誌はその現象を「ハイドライド・シンドローム」と呼んだ。

『ハイドライド』シリーズの舞台は我々が住んでいる世界とは別の、フェアリーランドと呼ばれるパラレルワールドである。移植機種間や『ハイドライド』、『ハイドライドII』、『ハイドライド3』といったシリーズ間もパラレルワールドとされる。

当時の機種間での性能に違いがありすぎ、完全移植を目指すよりはその機種の特色を生かす方が良いという考えがあったこと等による。

また、ハイドライドは一作完結で作られたため、会社の意向で続編を作ることが決定した際、ハイドライドとの間で矛盾が生じないように、フェアリーランドという世界の名称やバラリスとドラゴンといった一部のモンスター以外はすべて入れ替えられている。

「ハイドライド」ストーリー

人と妖精が共存する異世界の王国フェアリーランド。この国では3つの宝石(賢者の石)の力によって平和が保たれていたが、悪い心を持ってしまった1人の人間により宝石(賢者の石)の1つが奪われ、力の均衡を失ったことで、封印されていた悪魔バラリスが覚醒する。

王国はバラリスの魔力により崩壊し、国中には怪物がはびこり、王国のアン王女も呪いにより妖精の姿にされいずこかへ連れ去られる。そんな中、ジムと名乗る勇敢な若者が立ち上がった。

【実況】ハイドライドⅠ:part 1 - YouTube

「ハイドライド」対応機種

【PC-8801以降】

1984年12月13日発売。本作のオリジナルとなる版。BGMはビープ音1声のみで構成されており、処理の間に発声ルーチンを挟む形で演奏される。

曲は他の機種と異なり、ゲームスタート時にはビゼーの組曲アルルの女に含まれるファランドールから数小節を奏で、ゲーム中は、同じく、ビゼーのオペラカルメンに含まれる闘牛士の歌からの数小節を繰り返し演奏する。開発にはキャリーラボのBASE-80が使用されている。

【X1シリーズ】

1985年1月発売。他の機種では画面端に移動すると切り替わる方式だったフィールドマップが、X1の持つPCG機能の利用により、背景がスクロール式になっている。また、マップパーツを多く保持し(256種類、他機種版の約5倍)、他機種よりも美しいグラフィックス表現を実現している。

PSGによるオリジナルBGMの演奏、画面切り替えによって回避できた敵が回避できなくなる他、ボスが大変弱く、登場する敵キャラクターの増減もあった。PSG搭載機で演奏されるBGMはこの機種と同じ曲である。

【PC-6001mkII以降】

1985年2月発売。画面解像度は低く色も特殊なものの、PSGによる3重和音のBGM再生、ジョイスティック対応、画面高速切り替えなど、PC-8801版よりゲームとしての完成度が高かった。

PC-6001mkII以降用のカセットテープ版とPC-6601以降用のフロッピーディスク版、フロッピーディスクのPC-6601SR専用版が発売された。

【MSX】

カセットテープ版が1985年3月発売、要メインメモリ32KiB。約半年後の11月にROMカセット版が発売されている。64KiBのメモリを前提としたゲームを32KiBに収めるため自己書き換え、データの圧縮等により、ほぼ同内容を実現したほか、空いた部分にメモリセーブ、画面切り替えスクロールなどの処理が実装されている。

ユーザーの強い要望によって実現したROMカセット版はメインRAM8KiBの機種での動作を実現し、パスワードを利用したセーブ方式や、5段階の速度調整機能があるほか、テープ版では1色だった妖精も各々に色が付けられることとなった。

【MSX2】

1985年7月発売。MSX2の登場とほぼ同時期のリリースだった。グラフィック性能に合わせてVRAM64K用(16色)、VRAM128K用(256色)からの選択式。カセットテープ版とフロッピーディスク版が発売された。

後に旧パッケージゲームを付録として添付していた月刊誌MSX-FANが、VRAM128K用(256色)のみを収録している。

【FM-7シリーズ】

1985年4月発売。FM-7のキー入力周りのハードウェアの都合上、操作がしにくかったため難易度を下げてバランスが調整された。また、プログラマーの一存で、他機種にはない人魚、ラドン等の隠れキャラクターが存在する。

【PC-9801U/F以降】

1985年9月発売。PC-8801版を完全に再現することを目指して移植されている。10段階の速度調整機能があった。

【MZ-2000/2200/2500用】

1985年12月発売。キャリーラボによる移植、並びに販売。PC-8801版にI/O周りのパッチを当て処理を実現しているため、再現性は非常に高い。発売の経緯については、前述の手法によって動作するものが完成した後、打診が事後にT&E SOFTにあったというもの。

カセットテープ版で発売され、テープのA面にMZ-2500、2200用のカラー版を、B面にMZ-2000用の「グリーンディスプレイ」版を収録している。グリーンディスプレイ版はグラフィックスRAMの3プレーン目を、カラーディスプレイ版は、テキストVRAMをワークエリアとして利用している。MZ-2500ではMZ-2000モードでの実行が必要。MZ-2520/2861ではMZ-2000モード並びにデータレコーダが削除されたので動作しない。

「ハイドライドⅡ」(1985年12月13日)

「ハイドライドⅡ」(1985年12月13日)

「ハイドライドⅡ」(1985年12月13日)

『ハイドライドII』(HYDLIDE II)は『ハイドライド』の続編である。副題は『SHINE OF DARKNESS』。1985年12月13日発売。

前作のおよそ6倍に拡大された広大なフィールドマップに加え、会話や魔法、商品の売買、善悪の概念といった要素が取り入れられている。ただし、ゲーム後半では敵キャラクターしか存在しなくなるため会話の相手はおらず、アイテム、武器も売買するものではなくマップ上から取得するものになるため、それらの要素は意味を成さないものになってしまっている。

システムの変更などにより、リアルタイム性が下がることで、アクションゲームとしての難易度は低下しているが、不条理ともいえるほどの「謎」がちりばめられており、鍵を使用する順番によっては、クリアが不可能になるほか、特定の場所で特定の攻撃魔法を使わないと先には進めない箇所など、全体としてのクリアへの難易度は著しく高くなっている。また、この難易度をもって、雑誌のライターへの挑戦状を送るなどというイベントもあった。

これら謎のヒントは会話、挙動などに含めている旨が公式の解答本には書かれているが、一部はヒントを入れ忘れたとされ、ギミックによるヒントは、魔法SEARCHが反応する範囲、半キャラクタずらした配置の仕掛けなど、読み取ることは困難を極めた。解答本には解説、裏話、ヒントの意図や、演出の意図が語られているが、認定証の申込書は、ヒントの申込書でもあるため、通常同時に手にするものではなく、雑誌等による解法の公開などにより、方法論のみが明らかになることで、EVIL CRYSTALが砕け散った理由など、演出意図は、必ずしもユーザに伝わったわけではない。

ウィンドウシステムは描画のプライオリティーにより実現しており、その重なる部分の退避を行わない擬似マルチウィンドウである。木屋善夫は対抗意識から、ソーサリアンで、町のウィンドウ表示では下に描画されるウィンドウから消すなどの処理を作成したと発言してる。

「ハイドライドⅡ」ストーリー

かつて怪物に支配された時代が終わりを告げ、フェアリーランドは平和な日々を取り戻していた。しかし今再びフェアリーランドの地下深くで邪悪に満ちた意識が覚醒し、新たな怪物を創りあげ、死者を蘇生して広大な地下世界を創り上げた。

そのことにいち早く気づいた修道僧たちは、人々にこの異変を説いたが、彼らは平和な日々に浸かりきっているため聞き入れてもらえなかった。次第に邪悪な力が地上へ及ぶ中、神は人間の中からまだ心の汚れていない一人の男の子をフェアリーランドへ召喚した。

【実況】ハイドライドⅡ:part 1 - YouTube

「ハイドライドⅡ」対応機種

【PC-8801シリーズ】

1985年12月13日発売。基本的にBGMは無く、効果音のみで進行する。タイトル画面、精霊登場時、ラスボス出現、エンディング等のシーンでのみ、Beep音によりメロディーが流れる。

幾つかの英単語についてスペルミスが存在しており、MZ以外の機種では発売時期がずれたこともあり移植時に修正された。V1モード専用のため、V2モードでは表示色がおかしくなる。開発にはキャリーラボのBASE-80が使用されている。

【X1シリーズ】

1986年2月発売。PSG音源に対応しており、全シーンにBGMが付いている。また、画面切り替え方式の選択が可能となっている(瞬時切替/スクロール切替)。PCG書き換えによる、川、マグマが流れる処理が追加されている。カセットテープ版とフロッピーディスク版が発売された。

【FM-7シリーズ】

1986年2月発売(FM-77版は1986年11月発売)。メインテーマ(タイトル画面)とエンディングテーマの二曲がFM音源に対応。他のBGMはX1版等と同様、PSGで演奏される。FM-7/NEW7用のカセットテープ版とフロッピーディスク版(5"2D)、FM-77以降用のフロッピーディスク版(3.5"2D)が発売された。

カセットテープ版では、主人公の姿が武器と防具の脱着に関係なく、フェアリーランドでは何も装備せず洋服姿に、地下帝国では剣と鎧と盾が装備された姿になっている。敵キャラもいくつか削減・共通化されていて、同じ姿で違う名前になっていたり、主人公の洋服姿と同じものも存在する。

【MZ-2000/2200/2500】

1986年9月MZ-2000/2200用のフロッピーディスク版(5"2D)と、MZ-2500/V2用のフロッピーディスク版(3.5"2DD)が発売された。前作と同じく、移植を行ったのはキャリーラボだが販売元はT&Eソフトになった。スペルミスの放置や挙動などから、PC-8801版をベースにI/O周りを書き換えることにより移植していると思われるが、地下帝国へのパスワードは異なる他、スタッフロールに移植者の名前が追加されている。

MZ-2500版はメディアが3.5インチ2DDである以外は同一であり、MZ-2000モードでの実行が必要。グリーンディスプレイモードも実装されており、起動時に選択出来る。前作同様、MZ-2520/2861では動作しない。

【MSX】

1986年11月発売。PSG音源に対応。低解像度の都合上、マップ細部が若干変更されている他、X1同様PCGの書き換えによる演出がされている。電池式バッテリーバックアップ方式のROMカセット(1メガROM+SRAM)で発売。

ROM容量がぎりぎりだったためか、ゲームの進捗フラグは厳密な物ではなく、それを利用したアイテム、所持金の増量、本来必要なアイテムを入手せずにクリアする事などが可能になっている。

「ハイドライド3」(1987年11月21日)

「ハイドライド3」(1987年11月21日)

「ハイドライド3」(1987年11月21日)

『ハイドライド3』(HYDLIDE 3)は『ハイドライドII』の続編であると同時に『ハイドライドII』のシステムを継承したリメイク作品であり、シリーズ完結編にあたる。副題は『THE SPACE MEMORIES』(異次元の思い出)。1987年11月21日発売。

システム的には過去の『ハイドライド』を完全に切り捨てて、グラフィックやサウンド面を大幅に強化し、当時としては革新的な様々な要素が取り入れられた。『ハイドライドII』で取り入れられた要素に加えて、時間、食事・睡眠、重さ、貨幣などの概念などである。リアルではあったものの、ゲームとしては難解かつ複雑になった。

「3」の表記はローマ数字ではなくアラビア数字である。「III」にならなかった理由は、IIを制作した際「IIIは作らない」と語っていたことによるとされる。

電波新聞社の『チャレンジ!パソコンRPG&AVG IV』にPC-8801mkIISR以降版とMSX1/2版の開発秘話が掲載されている。それによれば、同時期発売の『イース』と「洞窟でのスポットライト処理」が重なったのは偶然であるとされる。

補足すると、それまでの『ウルティマ』や『ドラゴンクエスト』での「たいまつ」や「ランプ」などの「スポットライト処理」を完全な円形にしただけであり、『イース』では、本当に「洞窟でのスポットライト」として使われ、『ハイドライド3』では、「洞窟でのランプの照らす範囲」として使われた。
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