マイケル・チャンが奇策でレンドルを翻弄、17歳で優勝した1989年全仏オープン
2016年11月29日 更新

マイケル・チャンが奇策でレンドルを翻弄、17歳で優勝した1989年全仏オープン

マイケル・チャンがアンダーサーブなど奇策でレンドルを翻弄、17歳で最年少優勝した伝説の1989年全仏オープンを振り返る。

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グランドスラム最年少優勝記録を保持するマイケル・チャン

マイケル・ターペイ・チャン

マイケル・ターペイ・チャン

(Michael Te-Pei Chang, 中国語名 張德培)
1972年2月22日生まれ
アメリカ・ニュージャージー州ホーボーケン出身
台湾系の選手で、男子テニス選手としては身長175センチの小柄な身体であるが、世界でも屈指のベースライン・プレーヤーで、どんな球でも粘り強く何度も拾うフットワークを持ち味とした。

伝説の1989年全仏オープン

ジュニアの時代から頭角を現したマイケル・チャン。
全米テニス協会の全国大会において12歳のとき18歳以下の部で優勝。
1987年(当時15歳)に全米オープンで1回戦を突破し、全米オープン本戦で最年少記録を樹立。
さらに1988年には、サンフランシスコのプロツアーにて優勝。

そして迎えた1989年、グランドスラムの一つ全仏オープン。
フランス・パリにある「スタッド・ローラン・ギャロス」にて開催された全仏オープンでも飛ぶ鳥を落とす勢いのチャンは快進撃を続け、4回戦に進んだ。
4回戦の相手は世界No1のイワン・レンドル

4回戦の相手は世界No1のイワン・レンドル

1980年代の男子テニス界に長らく王者として君臨し、男子テニスの歴史を通じて最も輝かしい黄金時代を築いた名選手のひとりである。
サーブ、フォアハンド、バックハンドのいずれもが1980年代トップレベルのもので、同時に「機械」と言われるほどの安定感も兼ね備えていた。
試合が始まると、コートを支配したのはやはり王者レンドル。
圧倒的な強さを見せたレンドルに、チャンは4-6,4-6で2セットを先取される。

後が無くなったチャンはここから驚異的な粘りを見せ、ボールに食らいつき、6-3,6-3と2セットを取り返し、なんと試合をイーブンにまで戻すのだった。
しかし、まだ17歳のチャンには肉体の限界が迫っていた。
勝負の最終セットで、チャンの足は痙攣を起こしてしまう。

満足に動くことができないチャンは一瞬、棄権も考えたという。
だが、踏みとどまって、必死にプレーし続ける。

ここからチャンは数々の奇策を仕掛ける。

まず、遅延行為で反則を取られるギリギリの時間まで水分補給をして、気の短いレンドルをイラつかせ、レンドルの集中力を切らせようとする。
そして、衝撃のアンダーサーブ

そして、衝撃のアンダーサーブ

グランドスラムで王者相手にまさかのアンダーサーブ。
意表を突かれたレンドルは甘いボールを返してしまい、チャンはすかさずパッシングショットでポイントを奪う。
完全にペースを乱され、平常心を失ったレンドルはミスを連発。
マイケルチャンはマッチポイントを握る。
そして、さらなる奇策を講じるチャン。
レンドルのサーブで思いっきり前に出る。

レンドルのサーブで思いっきり前に出る。

レンドルのセカンドサーブに対して、サービスラインぎりぎりに立って、プレッシャーをかける戦法をとる。
そのプレッシャーに負けたレンドルはダブルフォルトを犯してしまい、ゲームセット。

スコアは、4-6,4-6,6-3,6-3,6-3の大逆転。
4時間37分の激戦であった。

全仏オープン 1989 チャン vs レンドル

このレンドル戦での勝利で勢いに乗ったマイケル・チャンは、準々決勝でロナルド・アジェノール、準決勝でアンドレイ・チェスノコフにいずれもセットカウント3-1で勝利。

決勝に駒を進めた。

決勝では世界No1経験者エドバーグと対戦

決勝の相手は元世界ランキング1位で全仏オープン時には世界3位だったエドバーグ。
ステファン・エドバーグ

ステファン・エドバーグ

全豪オープン・ウィンブルドン・全米オープンの男子シングルスに2度ずつ優勝。華麗なサーブ・アンド・ボレーで「グラスの貴公子」と呼ばれていた。
全仏オープンのみ優勝できず、1989年の大会で当時17歳のマイケル・チャンに敗れた準優勝が自己最高成績である。
実力者エドバーグにチャンも大苦戦。

しかし、6-1, 3-6, 4-6, 6-4, 6-2のフルセットでエドバーグを下し、史上最年少のグランドスラム優勝を果たしたのだった。
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