お笑い芸人は「祝福芸」の伝承者?「漫才(万歳)」のルーツ。
2017年2月9日 更新

お笑い芸人は「祝福芸」の伝承者?「漫才(万歳)」のルーツ。

テレビ画面を見ていると、毎日必ず何かしら「お笑い芸人」と呼ばれる方々を目にします。 世間にかなり疎い自分は、芸人さんのお名前は存じ上げないのですが、「お笑い芸人」そして「漫才」の存在だけはわかります。 漫才。この元を今回はたどってみます。「万歳(漫才)」についてです。

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テレビ画面を見ていると、毎日必ず何かしら「お笑い芸人」と呼ばれる方々を目にします。
世間にかなり疎い自分は、芸人さんのお名前は存じ上げないのですが、「お笑い芸人」そして「漫才」の存在だけはわかります。
いまやテレビでお笑い芸人さんを観ない日はありません

いまやテレビでお笑い芸人さんを観ない日はありません

いつしか「お笑い」の枠を飛び越えて様々なジャンルの番組で活躍していますね。
漫才。この元を今回はたどってみます。「万歳(漫才)」についてです。

民俗芸能の1つ「祝福芸」

民俗芸能のジャンルの1つに「祝福芸」があります。昭和初期頃までは「万歳」を行う方々が正月を過ぎるあたりに各地に現れ、その1年の祝いをする…そんな風景がありました。
2人一組で家々を訪れ、新年を祝う口上を述べた後に、1人片方が打つ鼓に合わせてもう1人が舞う…そんな風景が。

そもそも「祝う」とは何か

古代にさかのぼってみますと、『万葉集』巻16に「乞食者詠(ほかいびとのうた)」が2首記録されています。
「コジキ」とは読みません。「ホカイ」と読みます。

ホカウとは、「祝ぐ・寿ぐ(ほぐ)」ことです。言葉で祝うことをコトホギと言いまして、「寿ぎ」「寿詞」「言祝ぎ」などとも。祝いをすること食を乞い得ていたので、漢字の当て字が「乞食」となったようですが、もともと祝いを職とする方々を指しました。

祝福することを職とする存在は日本独自の存在ではないけど、それはともかく、ここでは「乞食」の本来の読み方をご紹介させていただきます。

祝福を芸とする歴史は11世紀ごろが起源

さて、その祝福を芸とする歴史…時代が下り、11世紀ころに成立した『新猿楽記』に「千秋万歳(せんずまんざい)」という言葉が出てきます。これを万歳の祖とすることが多い気がします。

言葉で祝う「万歳」が全国各地に

そして言葉で祝う「万歳」が各地に広がっていきます。沖縄にも伝播し、これは今も「京太郎(ちょんだらー)」としてエイサーの一団などに存在しています。滑稽な恰好とし、周囲を笑わせながら場を盛り上げている存在です。

日本では、秋田万歳、三河万歳、尾張万歳、越前万歳、伊予万歳などなど各地に万歳が伝わり、民俗芸能として残っています。その中で、今の漫才につながる万歳がありました。

今の「漫才」につながる「万歳」は三河万歳

三河万歳です。というより、三河万歳の芝居版というような存在「三曲万歳(さんきょくまんざい)」というのがありましてネ。これが愛知県津島市に伝わって「伊六万歳(いろくまんざい)」となります。こちらが見事なまでに徹底した余興万歳。これから「漫才」に変化していったと言われております。

三河万歳 無形民俗文化財

『大衆芸能資料集成』第7巻に「その萬歳、末世に至り、とんだ方向違いの愛知郡笈瀬村に勃興したのは、同村に伊六という口軽な洒落ものがあって、萬歳がすこぶる上手なので、初春ごとには在々を回って大笑わせをするのが、若衆連の道楽を誘い、われもわれもと弟子入りし、それが追年盛んに群をなし、「萬歳」の大会などを面白半分寄席でやらかした」とあります。

そう、こうやって、弟子が増え、結果このスタイルが全国レベルになっていったのです。

今の漫才の直接的な祖は「エンタツアチャコ」

ただし、今の漫才の直接的な祖は「エンタツアチャコ」です。大正末期、吉本興業(現・吉本興業株式会社)の横山エンタツ・花菱アチャコのコンビが「しゃべくり漫才」を確立します。彼らはそれまでので和服、太鼓、唄スタイルを止めて、スーツ姿で会話のみのスタイルを取りました。これが現在も引き継がれているのです。

芸能界で大活躍されるお笑い芸人さんたちは、歴史的に見てみますと、実は古代から存在する「祝福芸」の伝承者。今なりの形で表現する存在なのです。

今回は、お笑いの中に息づく民俗コネタでした♪
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