【霧島】和製ヘラクレスと呼ばれる筋肉を誇った怪力無双の大関
2016年11月25日 更新

【霧島】和製ヘラクレスと呼ばれる筋肉を誇った怪力無双の大関

甘い顔立ちで「相撲界のアラン・ドロン」と呼ばれ、ウエイトトレーニングで鍛え上げた筋肉美で「和製ヘラクレス」とも呼ばれた大関・霧島。遅咲きながら熱心な訓練で大関まで上り詰めた男の土俵人生を徹底解説。

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1993年1月場所はケガによる公傷が適用されたため全休。
西張出関脇で再起をかけた3月場所では、10勝以上で規定により大関特例復帰だったが、結局5勝10敗の負け越しに終わり、大関への復活はならなかった。

その後は平幕の地位に定着するも、人気の高さは変わらなかった。
大関陥落後は、幕内中位から下位の番付では出し投げを中心とした技能相撲で勝ち越すことも出来たが、幕内上位に上がると大負けするという状態が続いた。
勝ち越した場所も8勝7敗で終わることが多かったため、番付の上がりは遅く、常に十両落ちの危機と隣合わせだった。

霧島vs武双山

かつての怪力無双、元大関・霧島と、新進気鋭の若手・武双山(のち大関)との初対戦。
霧島は土俵際ですくい投げを放ち、元大関の貫禄を見せつけた。

ともに大関陥落後も土俵に上がり続けた小錦との友情

小錦も、霧島同様に1993年11月場所限りで大関から関脇に転落し、その後1994年3月場所以降は平幕に低迷していた。

霧島は「自分が落ち込んでいるときには元気づけてくれた。真面目な話はあまりしなかったが頑張れるとこまで頑張ろうと共に励ましあう存在で自分にとって支えになっていた。」と小錦への感謝を述べている。

1994年5月場所3日目、東前頭5枚目・小錦対西前頭11枚目・霧島戦と、元大関同士の平幕での取組が大きな話題を呼んだが、大関陥落者の二人が前頭の地位で対決するのは、1959年3月場所の大内山対三根山戦以来、35年ぶりの珍事だった。
競い合い、励ましあった霧島と小錦

競い合い、励ましあった霧島と小錦

土俵上では常にライバル関係にあった二人だが互いの実力を認め合っており仲が良い。
小錦は霧島を友人・戦友だと話しており、引退した後も大の仲良しと語っている。
小錦との幕内取組成績は、38回対戦して19勝19敗と全くの互角。
(十両時代の1敗、優勝決定巴戦での1勝を含めると20勝20敗。)
まさにライバルと言える存在であった。

著書『踏まれた麦は強くなる』を発売

1996年、現役中に日本相撲協会の了承を得て『踏まれた麦は強くなる』を執筆、発売した。
現役力士による著書の発売はきわめて珍しく、そのため霧島本人も著書内で日本相撲協会に対する感謝の意を示している。

踏まれた麦は強くなる―辛抱・値千金 : 霧島 一博

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霧島が子供時代から引退直前までの半生を語った本。
フランスの大学で日本語教材として1997年に採用された。
いち日本人力士の本が海外の学校教材として採用されたのは異例である。
初土俵以来91場所目にして大関昇進という、史上最も遅い出世を果たした霧島。大関を陥落してからも、黙々と努力を続けて相撲を取り続けた男が、これまでの歩みを振り返りつつ、その勝負魂を語る。
フランスでは初の本格的な相撲紹介書として大きな反響を呼んで順調に版を重ね、現在では増補新版が縮刷本にて出版されている。

大の相撲好きで知られるフランスのシラク前大統領はこの本に感動して何度も繰り返して読み、「もし政治家になっていなかったら、私は力士になりたかった」と記者会見で述べ、当時の内閣総理大臣であった橋本龍太郎の訪仏時には大統領自ら献呈している。

帰国後にこれを読んだ橋本首相は感動に涙し、霧島に親書を送って感激を伝えたのみならず、自らも霧島を訪問した。
この親書と訪問時の記念写真は、両国の『ちゃんこ霧島』に保存されている。

1996年、ついに引退。

怪我により自慢の怪力も鳴りを潜め、大関時代130kg以上あった体重も、陥落後半年が経つ頃には120kg台前半まで落ちるなど体力の衰えも目立った。

幕尻近い西前頭14枚目で迎えた1996年3月場所は3勝12敗で終わり翌場所は十両陥落となることから、この場所限りで引退。
『和製ヘラクレス』と呼ばれた怪力の名大関は、21年の土俵人生に別れを告げた。
霧島、現役最後の相撲

霧島、現役最後の相撲

1996年3月24日、千秋楽の琴龍戦
霧島が最も得意とした吊りで敗れる姿は当時の大相撲放送で感慨深く語られた。
引退会見では「気力がなくなり、引退を決意しました。悔いはまだないとは言えないですが、今日負けた時点でもうはっきりこれで終わりだと自分で納得しました。」と落ち着いていた。

後年、悔いがいっぱい残っていると明かし「怪我をしなければ、もっと長くできたかなぁ」、「相撲しか知らない自分は辞めたらどうなるんだろうという不安があった。できれば死ぬまで相撲を取り続けたかった」などと語っている。

主な力士との幕内対戦成績

対戦相手 通算成績
千代の富士(横綱) 2勝12敗
北勝海(横綱) 6勝11敗
旭富士(横綱) 6勝15敗
双羽黒(横綱) 0勝2敗
大乃国(横綱) 8勝6敗
朝潮(大関) 0勝6敗
若嶋津(大関) 1勝3敗
北天佑(大関) 8勝4敗
小錦(大関) 19勝19敗
貴乃花(横綱) 5勝9敗
若乃花(横綱) 6(1)勝9敗
曙(横綱) 3勝10敗
武蔵丸(横綱) 2勝6敗
貴ノ浪(大関) 5勝4敗
※若乃花の(1)は不戦勝。
※他に優勝決定巴戦(1990年3月場所)で小錦に1勝、北勝海1敗がある。

●千代の富士には初対戦から11連敗と歯が立たなかったが最後の3戦に限ると2勝1敗である。(その1敗も霧島の勇み足)
●大乃国は平幕時代から得意とし、大乃国の横綱昇進以降も6勝3敗と勝ち越している。
●曙・貴乃花・武蔵丸らには大関時代から分が悪く苦手にしていた。相手が大関以降に昇進すると殆ど勝てなくなってしまった。
●若乃花には当初6勝1敗と圧倒したが大関晩年の1992年11月場所以降から8連敗を喫してしまった。

霧島のエピソード

新入幕から引退に至るまで天覧相撲で星を落としたことがなく、現役期間中に行われた取組14回全てで勝ち星を飾っている。そのため、記者に対し「毎日来てくれれば全勝なのに」と語ったことがある。

ゴルフが趣味であり腕前はシングルプレーヤー。現役時代は「ドラコンの横綱」と呼ばれ、力士会のゴルフコンペには欠かせない存在であった。

愛煙家であり、陸奥部屋付き時代には稽古場で喫煙しながら指導していたが先代陸奥から注意されたことをきっかけに携帯灰皿を購入して外から稽古を眺める形で指導するようになったという。

長江健次と親交があり、2014年8月2日に本人の生誕50周年を記念したライブにもサプライズ参加している。

無給だった幕下時代に知り合った夫人との間に一人娘がいるが、上記の父親の影響を受けてか、東北福祉大学在学中、ゴルフ部に所属していたという。

1988年夏場所、水戸泉と対戦で三度の物言いがつき、三度の取り直しの末、霧島が敗れた。
霧島は悔しさのあまり、取組みの直後にジムに行きトレーニングをしたという。

霧島 対 水戸泉 〜うっちゃり4連戦〜 - YouTube

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